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プロローグ

『臣民と共にあらんことを』


 ラミ王国初代女帝が座っていたとされている無骨な石で出来た玉座には、その文言が今も刻まれていると伝えられている。





 今や大陸随一とはいえないながらも他国に及ぼすその影響力が目覚ましいラミ王国も、千年ほど遡れば小さな貧しい領藩の一つでしか無かった。


 当時は小国がせめぎ合う群雄割拠の時代。とある地方でその地を収める領主による圧政に反発し、民衆の蜂起が起きたのだったが、その中心人物にラミという男がいた。彼は周りに担ぎ上げられ旗頭となり、結果としてその地は平定されて国の礎が成る。しかしこれからという時に妻と子供たちを残して亡くなってしまった。

 そして残された妻であるアンナが周りに助けられながら国の発展に奮励し、その国をラミ王国と名づけ現在まで続いている。




「……これはまた、随分と凄いのですね……」


 長い黒髪を後ろで結わき眼鏡をかけた小柄な少女が、そびえ立つ建物を前にし、口を大きく開けて見入っていた。その門扉には「王立ラミ王国貴族学園」と書かれている。


 この国では、学力は国力に繋がるを基本理念に据え、平民にも私塾、公的なものの違いはあっても読み書き計算を学べる場が用意されていた。

 そして貴族達向けにはここ、通称「学園」と呼ばれる王立ラミ王国貴族学園が用意されており、国内の数えで十三になる貴族子女は皆一同に集められ三年に渡って学ぶ事となる。そしてこれを履修しなければ貴族とは認められず、これは王族であっても下級貴族も例外ではなかった。彼女もまたその一人になる。


「はぁ……凄いとこねぇ……ウチみたいな貧乏男爵家には助かるけど、ホントにタダで良いのかしら?」


(そうじゃぞ。思う存分に学べ。この制度を作った女王に感謝しながらな! カッカッカー!)


 頭の中に笑い声が響く。


 学院は国策となるため、学費、寮費など諸々にかかる費用は基本全て国持ちとなる。


(まぁ! 別に貴族にならなくっても、幸せになる道は他にもあるわよ)


 目の前の荘厳な入り口を見ていると、自身の場違いさを思い知らされ、その甘い言葉に少しばかり心が折れそうになる。

 

 ……でも、それだと結婚出来ないのよね……。


 しかし、彼女はかぶりを振ってそれを否定する。


「いいえ! わたしは結婚して沢山の子供たちに囲まれた幸せな家庭を築きたいの! そのためには何としてもこの学院を立派な成績で卒業して、王立の研究職に就かなければ!」


 ……それに邪魔な方にはサッサとどっかに行ってもらいたいです。


 固く拳を握り締めると、彼女は決意を込めた表情で顔を上げる。空は春らしく雲一つなく青々としており、彼女の前途を讃えるかの如く澄み上がっていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 最高に面白かったです! [一言] これからも追ってまいりますので、執筆頑張って下さい!!!
2023/07/09 15:48 退会済み
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