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隠れ家おじさん  作者: 公尊賛
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プロローグ

冴えない中年会社員の俺「時田(ときた 英雄(ひでお」は、日常生活への欲求不満に苛まされている。「趣味」満喫できないことである。趣味とは「人生の潤い」「生きる上での潤滑剤」である。そんな俺の毎日は少し悶絶している。ああミリオタ生活は何処に。

 俺の名前は「時田 英雄ときたひでお」平凡なサラリーマンである。さらに極度のミリヲタである。36歳で独身の実家暮らしと冴えない人生である。そんな俺が、とあるきっかけで、家族には黙ってアパートを借りることとなる。そう「隠れ家」である。

 実家には平凡ながらも厳格な両親と34歳の引きこもりゲームヲタクの弟である「正雄まさお」がいて、とどめに今年は三十路でアニメオタクの妹の「愛美まなみ」がいる。そんな環境なので趣味の物を置くスペースはおろか両親からも趣味については認められない現状である。ああ一人趣味を満喫したい。長男である立場がら真面目を装い日々暮らしているが、たまに限界を感じることもある。アホな弟と妹の上に俺もミリヲタとばれたら両親がゲシュタルト崩壊起こしそうで怖い。一人暮らしも考えたが、やはり金銭的に現状維持がベストである。生活費を支援していれば風呂と食事と寝床の確保ができるので現状一人暮らしはバットアイデアである。まあ帰宅後は軽く筋トレと体幹運動をして近所をウォーキングするのが日課となっている。ああ俺のミリオタライフは儚い夢なのか?

 俺は子供の頃にみた戦争映画に興奮した、そう壮絶な激戦における人間の行動心理や爆音や硝煙漂う世界観に魅了されたのだ。それ以来こっそりとDVDで親に隠れてレンタルビデオ店で借りた戦争映画を堪能するのが楽しみであった。親はスポーツを推奨するタイプで中学及び高校ともに水泳部にて放課後を過ごしていた。部活動に情熱を見い出せない俺は常に補欠要員であった。俺の心は常に妄想の戦場にあったからだ、そのせいであるのか親しい友達はできず学校でも孤立した存在である。両親は成績は良いが部活での伸びしろ無しの俺に常に不満であったようだ。俺は思った将来はオリンピック選手にでもしたいのか?

 高校生の時にモデルガンを入手する機会があった、通常では高額な大人の趣味であるモデルガンは、高校生の俺には高嶺の花である。しかし幼馴染で少し裕福な友人が、好きな女の子にプレゼントがしたいとのことで「ベレッタM92F」を買い取ってほしいと願い出たのである。俺はかなり迷ったが、わずかな貯金を崩して購入した。彼の恋心の助力ではない、どうしても実際にモデルガンが欲しかったのだ。俺は早速近所の模型屋さんでモデルガン用の発火キャップを買い、自宅でカードリッジ一発一発に装薬していった。金属のカードリッジに装薬することは、それこそ儀式であり興奮するものである。その後は近所の河川敷の鉄道高架下へ自転車で行く。カバンに入ったベレッタM92Fは実銃では口径9ミリで半自動で連射可能な当時は米軍正式採用拳銃である。こんな物騒な物をカバンにいれて自転車で走る俺は少し罪悪感がある。しかし好奇心と期待が俺を突き動かす。河川敷へ全速力でいき自転車からカバンを取り出す。夕暮れの河川敷へ歩き高架下へ向かう。誰もいないことを確認してカバンから銃を取り出す。この誰かに見られるかも知れない緊張感はまるで映画のヒットマンになった気分だ、マガジン「弾倉」に一発、一発込めていくリアリティーが俺を興奮させる。ひんやりした銃はヘビーウエイトモデルでありプラスチックなのに金属ぽい触感がたまらない。マガジンを銃に装填してスライドを引く、カシャンという装填音がたまらない。俺は待った高架上の電車の通過を、それは発砲音を誤魔化すためである。何かの映画で見たことがあるが、ターゲットを倒すときに河川敷で電車通過音で銃声をかき消すシーンである。俺はまるで映画の主人公の様に電車の通過を待った。数分たつと電車の響きが聞こえてきた。俺は静かに銃口を正面の立看板に向けた、「不法投棄は犯罪です」と書いてある。電車が高架上に来た瞬間に右親指でセフティーを解除して発砲した、乾いた発射音と硝煙の香りと夕日に舞う少し煙を帯びたカードリッジが俺を興奮させる、あっと言う間に、弾倉にあった10発のカードリッジが無くなり、銃はスライドがストップして薬室をむき出すホールドオープンをしていて銃口とチャンバー(薬室)から薄っすらと煙が出ている。俺の人生の中でこれほど高揚した気分になったことはあろうか?まさに俺は高架下のヒットマンの気分である。この経験が今後の俺の人生の転換期となるのは言うまでもない。

 俺は18歳になると自衛隊を志願する。何ということもない自衛隊はミリタリーだ、ミリヲタのロマンだからだ。当初は親と担任教師からも反対されたが、大学進学なんざクソくらえだ。大学にはロマンは無い、いや、それ以上に単なるステータス作りのため親の大金を叩くなど愚の骨頂である。夢に見たミリタリーライフで給料が貰えて三食寝床付きなど素晴らしい限りだ。躊躇なく入隊願書を募集事務所に提出して、入隊試験を受ける、そして希望は「航空自衛隊」であった。ミリヲタ道と言う道があれば当然に「陸上自衛隊」と言う選択肢もあるだろうが、あえて「航空自衛隊」しかも地上勤務の「警備」と言う職種を選択したのである。何故かって?ミリオタは皆陸自をかじってネットや芸能界に出てくるのに対して少しの畏怖の念があるからだ。俺は航空自衛隊に入隊することで違う視点が見てみたい。ちなみに海上自衛隊もあったが俺は船酔いが苦手である海が苦手である。そして埼玉県の熊谷にある空自教育課程に入隊して人生初の寮生活(営内)を経験する。ラッパで起きてラッパで眠る。そんな毎日である。朝から夕方まで訓練をして楽しみの食事と課業外でのPX(委託売店など)での買い物や飲食などは一般社会と隔絶されたものであるが、しかし知らない都道府県から来た隊員たちとの会話はとても楽しいものである。まあ都会のパリピな若者には制限ありすぎで発狂するかもしれない生活かも知れないが。俺は毎日ブーツを磨き、作業服(戦闘服?)にアイロンがけをして、共同生活に不満はなかった。卒業前に配属業務の進路相談があったが迷わず「警備職」の一択でと担当班長に申告した。班長は困惑していたが俺のミリヲタライフは警備職以外にはないのである。

 初夏を迎える7月に卒業となり、晴れて日本の最前線「航空自衛隊那覇基地」へと赴任が決まる。俺は意気揚々と教育隊を後にして羽田空港から那覇空港へ向かった。空港や飛行機に乗るも人生で初であった。同じく那覇基地に赴任すると思しき隊員達と那覇の地を踏む。第一印象は非常に暑いのである。高温多湿の気候は、まるでベトナムに派兵された米軍の気分であった。それから部隊へ配属され様々な訓練と業務に就くこととなるが長くなるので割愛する。

 那覇基地勤務も5年の任期を迎えることとなるころ俺は少し疑問を感じた。俺の理想のミリヲタ生活はここにはない。確かに実弾射撃や戦闘訓練及び格闘訓練など充実した自衛隊ライフである。民間では知りえなかった米軍基地での勤務や研修などの経験をできた。しかも自衛隊の飯が美味いのと大きな隊員浴場は疲れた時に身に染みる。しかしだ・・営内生活は窮屈なものであった、相部屋は当たり前でプライベートあまり無いこと及び外出もあまりできないのがネックである。それと非番だろうが作業に訓練などもあり結構ストレスである。基地以外で居住するためには、2等空曹以上か空士長以上で結婚しないと外では暮らせない。そろそろ自衛隊生活も限界にきていたのである。2等空曹になるのに何年かかる?結婚したら家族のために退職はできない?定年退官まで務めるという個人的飼い殺し生活は無理と判断して、任期満了の進路については上司に任期満了退職を申告する。上司は引き止めるが俺には無理な相談である。

 

 俺は子供のころから多少の霊感がある、教育課程のころ夜警訓練で同期と巡回中の時に暗がりから上官が来たので、

「お疲れ様です!」

元気に敬礼したら

『お疲れ様・・』

と低いトーンで返ってきた。まるで闇に消える様に去っていった。一緒にいた同期隊員からは

「お前、誰に敬礼してるの?」

俺は同期隊員の問いを怪訝に思い同期隊員に

「今、上級空曹とすれ違ったから・・」

同期隊員は不思議な顔で言った。

「夜中の3時に歩いてる隊員なんているわけないだろうし、俺には見えなかったぞ」

確かにそうである、俺は子供のころから見えない者が見えている様である。あまりに鮮明に見えるので生きている人間との区別がつかないこともあり両親も心配はしていたっけ。

 

 そんなかんなで俺は自衛隊を後にして自衛隊の就職援護での紹介で故郷の警備会社へと行くこととなる。さらば那覇基地、さらば沖縄の日々よ。新しい職場は実家に近い「曙警備保障」と言い、全国展開する警備会社である。しかも元自衛官や警察官を積極的に雇用している会社であった。俺は何故か本社の企画戦略営業部と言う部署で「便利屋」と言われる部署に配属となる。「戦略」って何?何と戦うの?今後どうなることやら・・・故郷に戻ってそうそう不安がつのる・・・


自衛隊を退職後の就職をする英雄ひでおは今後どうなっていくのやら・・ミリヲタライフの隠れ家は何処に、次回「警備会社はつらいよ」です。警備会社に勤める英雄に警報システムに関する異常究明の仕事が来る。そこで英雄がたどり着く結果とは?

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