魔法少女は闇堕ちしました。④
……っは!? おはようございます。
ごめんなさい凄く寝心地良かったです最高でした楽園でした。
「にゃ……むにゃ……すぅすぅ……」
星崎の寝息が聞こえてくる。しっかりと抱きしめられていて俺の視界は星崎の胸しか見えない。
…………。
…………!?
~~~~っ!
「星崎。起きてくれ。ほーしーざーきー」」
あ、腕が解放されてる。それなら星崎を物理的に起こせるぞ……!
痛くならないように優しく星崎の顔をぺちぺちする。
うっわほっぺ柔らか。一生むにむにしていたくなる。
むにむに。ぺちぺち。むにむに。ぺちぺち。
「ん、んんん……?」
むにむに。つんつん。むにむに。ぺちぺち。
「ん……ふにゃ……しぇんぱい……?」
……っは、俺は何を!?
推しの寝込みを襲うなんて。俺は、俺は……!
「ふわ……おはよーございます」
星崎が起きて身体を起こす。つまり自然と身体を離すことになる。
ずっと密着していたからか、喪失感が凄い。さ、寂しくなんかないんだからな!?
星崎はんー、と身体を伸ばす。さすがに俺を抱きしめたまま寝ていたから、身体が固まってしまったのだろう。
もちろん胸が反らされる。大きくはない。むしろ小さめの胸が反らされたことで主張して……げふんげふんげふんげふん。
「んー。んー~~~~~にゃっ」
伸びを終えた星崎が鳴いた。え、可愛い。
「あ、バインドが解けてるじゃないですか」
「え?」
「ダメです。逃げられちゃいますっ。バインド、せーのっ」
「ああくそ、また拘束された!」
「えへへ。これで先輩は逃げられませんっ」
星崎の魔法によって再び両手が縛られる。
そもそも両足は縛られたままだから逃げることも出来ないのだが……。
今の星崎は、いつもより大分視野が狭くなっている……ようだ。
「すぐにご飯作りますから、待っててくださいね」
「あ、ああ」
どっちにしろ抵抗することは出来ないのだから、しばらくは身を委ねてしまおう。
星崎はエプロンと食材を取りに、一旦自分の部屋に戻っていった。
……放置プレイ?
+
そうして朝食を終えると、星崎は手早く汚れた食器を片付けた。
授業が始まるまでまだ時間はある。今のうちに星崎に正気に戻って貰って、拘束を解いて貰わないと……!
「先輩、ぎゅー!」
「やめろ星崎、俺が正気でいられなくなる……!」
待ってましたと言わんばかりに星崎が抱きついてきた。足の拘束は外されたが、代わりに胡座で座ることを強制され、俺の上に星崎が座っている形だ。
「……正気じゃなくなって、いいんですよ……?」
「耳元で囁かないでくれーーーーーーーーーーーーーー!」
こそばゆい! 堕ちちゃう! 星崎は堕ちてるけど!
「んー……ぺろ」
「んひゃあ!?」
耳を舐めたぁ!?
「先輩……」
「星崎、学園! 授業があるから!」
「えー。休んじゃいましょーよー……」
なんだその誘惑はけしからん!
あの星崎から……天使な星崎からサボリの提案だなんて……!
でも、でも、ダメなんだ。
俺は星崎を助けたい。星崎を助けるためには、このままサボるなんて、ダメなんだ!
「ねーせんぱーい。一緒にぎゅーってしてくださいよー」
星崎がぎゅっと身体を押しつけてくる。寝る前も感じたけど、小さな星崎の身体はしっかり丸みを帯びていて、女の子の身体をしている。
特に、その……胸の部分が、なんだかんだ主張してくる。
どうする。どうすれば星崎は学園に行くことを了承し、拘束を解除してくれるか。
星崎は今、俺のお世話をしたいと言っている。それが星崎の欲望だとしたら――!
「……あー。星崎?」
「はい、なんですか?」
「星崎と一緒に登下校して学園のみんなに見せつけてやりたい」
「学園に行きましょう!」
会心の笑顔じゃねえか!?
ばばばって身体を離した星崎はもう一度キッチンに立って調理を始める。冷蔵庫から食材を取り出し、あれやこれやと並行して進めていく。
あれは……弁当か?
お昼に星崎の弁当が食える……? おいおい待て待て。推しの弁当が食える? え、もしかして俺死ぬの?
「先輩、すぐにお弁当用意するので待っててくださいね!」
「あ、ああ」
「せーんぱいと登校っ。せーんぱいと登っ校っ。せーんぱいっと……あはっ」
「なにこの後輩可愛い」
鼻歌交じりに星崎は手早く調理を進めていく。元から料理が出来るのは知っていたが、ここまで手早いとは。
とにかく、だ。
学園に通うことが許可されたからか、両手の拘束も解除された。
外に出られるのなら、星崎をちゃんと助ける方法も見つけられる。
ひとまずは授業に出て、対策を練らないと。
魔法に詳しい友人は、幸いなことにそこそこいる。
これも《ゲート》の発生によって異世界交流が盛んになってくれたおかげである。
侵略者だけじゃなく、侵略者を倒してくれる協力者――《来訪者》たちは、今ではすっかり街の風物詩だ。
そういえば、星崎は《来訪者》じゃないんだよな。ユー……星獣が、《来訪者》って扱いだっけか。
ユーにも相談しないとな。どこかで合流出来るか……? でもあいつ処女厨ってどうでもいいことカミングアウトされたし。
ショタで処女厨。うん、アウト。
「先輩、お弁当出来ました~っ」
「早い!?」
「ささ、先輩も着替えましょう! 大丈夫です私がちゃーんと着替えさせてあげますから!」
「いや、大丈夫――――アッーーーーーー!?」
それはダメですよ星崎さーん!?
パンツは死守した(涙目)。
「ぎゅーーーーーー」
「くっそ幸せだけどなんかこう……違う……」
一緒に連れ立って学園に向かうと、星崎は当たり前のように俺の腕に抱きついてきた。
すっごく嬉しいんだけど、事情が事情なだけに複雑だ。
くそ、ユーどこに行ったんだよ。
このままじゃ俺が幸せ絶好調で死ぬだけだぞ!
「すりすりすりすり」
「あのな星崎? もうちょっとで学園に着くし、人目があるしそろそろ――」
「見せつけてやりたいって先輩が言いましたっ」
「しまったそうだった」
星崎が可愛すぎてちょっと前のこともうっかり忘れてしまっていた。
危ない危ない。星崎の可愛さの前に全部を放り出してしまうところだった……。
「えへへ。せーんぱいっ」
「はぁぁぁぁ幸せすぎる」
出来ることならこんな時間が一生続けば良いのに――――。
「大空、星崎。お前ら本当に仲がいいな。あれか、ついに付き合ったのか?」
「……朝凪先生。これが仲良く見えますか?」
「ああ。大好物を取られないように警戒してる子猫みたいな感じでな」
「ふしゃー。ふしゃー!」
ついには離れることなく校門に着いてしまった。校門で待っていた朝凪先生にからかわれていると、星崎がもっと力を込めて俺を抱き寄せてくる。
「にゃぁ……!」
「おおう。星崎どうしたんだ? いつもはもっと親しみがあるんだが。え、もしかして先生なにか嫌われることしたか?」
「いえ……先生はなにも悪くありません……」
「んんん?」
朝凪先生は別に《来訪者》じゃない。だから今の星崎について説明しても、あんまり助けて貰えそうにない。というか同性の若い人に星崎を見せたくない(独占欲)。
「ほら星崎、行こう。それじゃあ朝凪先生、また授業で!」
「にゃっ!?」
「お、おう。廊下は走るなよ?」
星崎の肩を出して小走りに駆け出す。もちろん周囲の視線が集まってくるのは百も承知だ。
このままじゃ星崎と俺が付き合ってると思われてしまう。
それは不味い。魔法少女コズミック・ルナは清廉潔白な女の子じゃなきゃだめなんだー!
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