魔法少女共同戦線。
「むー……」
「なあ瑠那、機嫌直してくれよ」
「悪くないですよ。私はいつも正常です」
「えー……」
「むーーー……」
ナナクスロイさんの家から帰っている間、瑠那はずっと不機嫌だった。相変わらず腕に抱きついてはくれるんだけど、「むー」と唸ってばかりだ。
それでいていくら問いかけてもジト目のまま「機嫌は悪くない」の一点張りだ。ジト目の瑠那が可愛いからあんまり深く聞かなかったけど、さすがにどうにかしたい。
瑠那はジト目もいいけどやっぱり笑顔が似合う女の子なんだ。
もしそんな瑠那から笑顔を奪ってしまったのなら、どんな対価を払ってでも改善したい。
瑠那はもう俺にとって一番大切な存在なんだ。
瑠那のためなら火の中水の中ゲートの中にだって突撃出来る。
「えと……瑠那、今日はどっちにする?」
「むー……………………先輩の部屋で」
俺たちは今、恋人同士になったってのもあって半同棲のような生活をしている。
着替えや物はお互いの部屋だが、寝食はどちらかの部屋だ。もう一緒の部屋に住んでいると言っても過言ではないほど、二人で生活をしている。
瑠那の機嫌が悪くて別々に寝るとか言われそうだったけど……よかった。よかった~~~~。
もう瑠那と別れて寝るなんてことが起きたら不安で眠れなくなる自信がある。それくらいもう瑠那との生活はかけがえのないものとなっている。
「ただいま」
「ただいま……です」
別に誰かがお帰りを言ってくれるわけじゃないけど、二人して「ただいま」って言えるのは凄く幸せなことだと思う。
「……なあ、瑠那」
「えいっ!」
「おわっ!?」
ぐい、と瑠那が抱きついていた腕を引っ張ってきた。突然の不意打ちに俺は姿勢を崩してしまったが、慌てて壁に手をついて堪える。
「瑠那、いきなりどうしたんだ?」
俺が倒れたら、瑠那を巻き込んでしまう。瑠那は小柄だから、俺の身体を支えきれるかも怪しい。瑠那を潰してしまったらそれこそ本当に危ないんだ。
「……先輩。ごめんなさい。私、嘘を吐いてました」
「……嘘?」
俺の見つめる二つの目に吸い込まれそうになる。綺麗な瑠那の瞳はいくら覗き込んでも見飽きない宝物だ。
そんな状態で、瑠那は嘘を吐いたと告白してきた。まるで、罪を自白するような形で。
……しかもこの体勢、壁ドンじゃないか。俺が瑠那を問い詰めてるようじゃないか……!
すぐに身体を離そうと思ったが、瑠那に見つめられると身体が動かせなくなる。
魅入られる。瑠那の瞳に吸い込まれる。不安そうな表情を見て、守りたい気持ちと……少し意地悪したくなる感情がわき上がってくる。
「機嫌悪くない、っての、嘘です。私、すっごく不機嫌でした」
「あ、ああ」
知ってる。だってあんなにずっとジト目の瑠那は見たことがない。
「せ、先輩が悪いんですっ」
「え……」
俺、やっぱり瑠那に何かしちゃったのか。それなら早く謝らないと。
こういうのは早く謝って、改善していかないと!
「私がいるのに、他の女の子に手を出さないでくださいっ!」
「……え?」
なんだそれ。まったく身に覚えがないんだが!?
俺が瑠那を裏切るだなんてあり得ない! 何か誤解があるはずなんだ。まずはそこを話し合わないと――。
「え、エルルちゃんを抱きしめて!」
「……え?」
確かに抱きしめたけど……でもあれはナナクスロイさんを受け止めないといけない場面なわけで。
「せ、先輩が抱きしめていいのは私だけなんですっ」
「独占欲可愛すぎない?」
「か、可愛い……はぅぅ」
俺の落ち度というか瑠那の独占欲マックスだった。可愛い。なにこの彼女まじで可愛い……愛でたい……。
「うぅー……っ。えいっ!」
瑠那がずっと抱きかかえていた俺の左腕を捕まえてきた。腕というか左手を。
「この左手も、先輩の身体もぜんぶ、私のなんです……っ!」
瑠那が俺の手を自分の頬に押しつけてすりすりしてくる。柔らかい瑠那の頬の感触が手のひらに広がっていく。
あぁもう、もちもちのすべすべで最高だ……!
「にゃふ……にゃ……」
「はぁ……瑠那、可愛いぞ……」
「ふにゃ……っ。もっと、もっと言ってください……!」
ナナクスロイさんが触れた場所を上書きするように瑠那は自分の身体を押しつけてくる。頬から首、肩、腕。そして腰へと。
制服の上から瑠那の小さな身体を触る。相変わらず強く抱きしめたら壊れてしまいそうな華奢な身体は、それでも俺を受け止めてようとしてくれている。
「瑠那。可愛い、大好きだ。愛してるぞ……」
「にゃ……ふにゃ……」
耳元で囁くと瑠那がどんどん表情を蕩けさせていく。
左手は瑠那の腰を押さえていて、右手は壁を押さえていて瑠那が逃げられないようになっている。
逃げられない――いや、瑠那が自分から逃げられないようにしてきた。
だからこれは、瑠那が望んでいること。
「……なあ瑠那。キス、してもいいか?」
「…………」
顔を近づけると瑠那はゆっくりと瞳を閉じて顔を上げてくれた。瑠那の頬に手を添えて、自分の唇を重ねる。
瑠那の唇は肌とはまた違った柔らかさで病み付きになる。
「瑠那……ん……」
「ん、ちゅ……はぁ、しぇんぱい……ん……っ」
ついばむようにキスを繰り返していくと、瑠那の身体から力が抜けていく。崩れた身体を抱きしめて強引に立たせ、それでもキスを重ねていく。
頭の奥がぴりぴりしていく。瑠那のこと以外何も考えられなくなっていく。
愛おしい。瑠那のぜんぶが愛おしい。こんな愛しい子が、俺を想ってくれている。好きって気持ちを言葉にしてくれる。好きって気持ちを身体で表現してくれる。
ぎゅって抱きしめ、トドメと言わんばかりに唇を押しつける。瑠那の上唇を甘く噛むと、瑠那はびくびくと身体を震わせる。
「はぁ、はぁ、はぁ……瑠那……」
「は、は、は……しぇんぱい……もっとぉ……」
瑠那の甘えた声が脳髄を痺れさせていく。瞳を潤ませ頬を赤くしている愛しい恋人を前にして、俺の理性はもう保たない。
「……瑠那」
「はい……」
瑠那は小さくはにかんで、両手を広げて俺を迎えてくれる。
俺は誘われるように瑠那に抱きつき、視界に飛び込んできた首筋に吸い付いた。
もう我慢が効かない。瑠那をとにかく愛したい。
「俺は瑠那のものだよ。……でも、瑠那も俺のもの……だからな?」
「はいっ。私を、私を先輩のものにしてください……っ!」
俺は瑠那を抱きかかえ、部屋の奥に彼女を連れ込んで――――。
愛おしい彼女を、一生大事にすると誓い、刻み込むのであった。
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