戦闘と安心
俺達は廃墟にたどり着いた。
ここからは俺が前に出て、橘が後ろから少しおどおどしながらついてくる。
その姿にクッソ可愛いんですけどとか思いながらも顔に出さずに先に進む。
そうして一番奥の部屋に着き、橘に見つからないように隠れてるように言ってから中に入る。
そしてそこには俺の予想通り、あの男がいた。
「よおガキィあの時は舐めた真似してくれたなぁ」
と言ってきた。
その言い草に思わず
「俺を撃とうとした時ヘタレたくせに」
と言ってしまった。
それにキレたのか男は大きく
「あーあ、お前はせっかく楽に殺してやるつもりだったけどもう良いわ。お前は苦しませてから殺すわ」
そう言って男は銃を取り出して俺へと銃口を向けた瞬間に横に走り出す。
俺に向けられていた銃口から銃弾が発射される。
その銃弾を俺はギリギリで回避する。
1発目
そうして俺は部屋の中を走り回る。
そして時々スピードを落とし銃を撃たせる。
そうしているうちに男はまた撃ってきた。
2発目
これもまた回避。
焦りを感じさせるために俺は男に
「おいおい、俺を殺すんだろ。1発も当たってないぞ」
と走りながら煽る。
すると男はキレて
「うるさいうるさいうるさいうるさい」
と叫んで俺に向けて今度は2発撃つ。
3、4発目
そうして残りが2発になったが男は気付いていないようだ。
キレて頭がまともに動いていないのか、それとも前回から何も学ばないのか。
どちらにせよこちらからすれば都合がいい。
そう考えながら俺は走り続ける。
そして意識が思考の海に潜りかけた時に銃声が聞こえる。
思わずた体を晒すと頭の横を銃弾が通って行った。
考えすぎて思わず殺されるところだった。
何にせよこれで
5発目
次でラスト。
そしてまた走り出す。今度は男に向かってだ。
すると男は少し後ろに下がって俺の頭に目掛けて銃弾を放つ。
その瞬間俺はスライディングをして回避する。
6発目
そして俺が男の前に来て懐からナイフを取り出す。
そして部屋の出入り口からは橘が銃を持って構える。
そして男は俺に銃口を向けて引き金を引く。
しかし銃弾が出る事はない。
そして男は言う。
「何で弾が出ねえんだよ」
と、学習能力の無さに呆れながらも俺は男に
「リボルバーの装填数は6発だ。お前は使い方を間違えた」
そう言って橘は男に銃を撃ち、俺は男の腹にナイフを差し込む。
橘の銃は男の肩に当たり、俺のナイフは男の腹部にしっかりと刺さる。
手には大量の血が付着しベッタリとした感触がある。
俺はその感触に気分が悪くなり吐きそうになるが何とか抑える。
そして男は
「ガァァァァァァァァァァァァァ」
と叫んでいた。
そしてその叫びも30秒もすれば聞こえなくなり男は死んだ。
それを理解して俺は人を殺した罪悪感とこれから同じことを後5回もしなければならないという絶望感を感じた。
そして俺達は目標を達成したため、一度小屋に帰ることにした。
小屋に着いてからは橘に焚き火を付けるように頼んでから、前に見つけた小屋の裏から行ける川で男の血の付いた腕や服を洗っていた。
そして洗い流される血を見て、これが俺の犯した罪だと認識させられる。
そして、一通り洗い終わり、小屋に戻れば前に俺が焚き火をした場所で同じように橘が座っていた。
俺は近くに落ち葉を敷き、その上に洗った服を乗せて乾かす。
そして橘から離れて座る。
そうして、お互いしばらく無言でいたが橘がいきなり
「ごめんなさい」
と謝ってきた。
俺はそれが何故なのか分からなくて、
「どうした、いきなり?」
と聞く。すると橘は
「私が協力しようって言わなかったら日暮君が人を殺す事は無かっただろうし」
と言ってきた。
俺はその言葉に驚きながらも
「そんな事はない。お前が言わなければ俺は自分だけが生き残るために人を殺していた。結局のところ俺が人殺しな事は変わりない。それよりもお前の方が嫌だろ。こんな人殺しと一緒なんて」
そう言うと橘は涙目になりながら
「ううん、そんな事ないよ。日暮君と一緒が良い。そして私にも君の罪を背負わせて」
と言ってきた。
俺は驚きながらも
「それは出来ない。これは俺が一生背負わなければいけない罪だ」
と言えば橘は
「それなら私だって人を殺そうとした。今回は日暮君だっただけ。だから私にも背負わせて」
と、その言葉に感謝なんてしてはいけないはずなのに俺は、そう言ってくれた橘に嬉しく感じてしまい遂には涙を流してしまった。
そんな俺を橘は抱きしめて慰めてくれた。
人殺しの俺を拒絶しないで、罪を一緒に背負ってくれると言った橘に安心して、今までの疲れなども一気にきてしまい俺は寝てしまった。