焚き火と見張り
とりあえず橘との協力関係は結べた。
これからどう動くか、俺にはあまりわからない。
だから橘に聞いてみたが、全員が逃げ出した時から俺の後をついて来たから全くわからないらしい。
そうしてお互いが思考の海に潜っていると、外が暗くなって少し寒くなってきた。
夜は寒く、このまま寝たら凍死する可能性がある。
そう思った俺はナイフをズボンのポケットにしまって立ち上がる。
説明してなかったが俺のナイフは折りたたみ式のナイフだ。
俺が立ち上がると橘は少し涙目になりながら
「どこに行くの?」
と聞いてきた。友人の初めて見る顔に驚きながらも俺は
「そろそろ夜になるだろうし寒くなってきた。火がないと俺達は揃って凍死するかもしれないからな」
そう言って一息ついた後に続けて
「焚き火を起こせそうな物を集める。お前も武器を持ってついてきてくれ」
と言った。
これには理由がある。
1つ目は、もしも敵が出てきた時にナイフだけの俺だと死ぬかもしれないからだ。
2つ目は、橘が死ぬかもしれないからだ。
コイツは俺が声をかけるまで動く様子は無かった。おそらくだが、いきなりこんな所に拉致されて殺し合えと言われたんだ。無理はない。
しかし、この状態で殺意がある敵に見つかれば橘は殺されるかその前にR-18展開になってヤリ捨てられる可能性もあるのだ。
知り合いがそうなるのは心苦しいからな。それでついて来させた。
そうして、拠点としていた小屋を出て森の中に入って地面に落ちた枯れ葉や小枝、後はナイフでうまいこと切れた硬い木を持って小屋に戻った。
俺は若干落ち着いているが無意識には驚いているのかお互いに話は無かった。
だが、今はこの沈黙が心地よかった。
そうして俺達は小屋に戻ってきて小屋の中にとってきた物をまとめて置いといて、外で焚き火の準備をする。
準備と言っても簡単なことで火を起こす場所の周りに石で枠組みを作って小屋に燃え移らないようにしておくのと直ぐに火を消せるように近くには若干湿った土がある所に作っておく。
そうする事で情報不明の敵が現れても火を消して逃げられる。
そうして軽く準備を終わらせて小屋の中に入ると橘は部屋の隅で体育座りをして泣きそうになっていた。
そして今にも心が壊れそうな橘は泣きながら俺に
「どうして私達が誘拐されて殺し合いなんかしなきゃいけないの!?どうして?ねえなんで日暮君は平気そうな顔してるの?」
と聞いてきた。
その言葉を聞いて俺は考えた。
確かになんで俺達が殺し合いをしなければならない。
それはどんなに考えても答えは出なかった。
当然だ。答えを知っているのは俺達を拉致した奴だけだから。
俺は何故平気そうに見えるのか。それは簡単だった。
だから言う。
「俺達が2人で生き残るためだ」
そう言うと橘は少し驚いた顔をしながらも続きを言えと顔で訴えてきたので続きを言う。
「犯人の目的は分からないが、何かしら1人になった事がわかる方法があるんだろう。だからその裏をかいて2人で生き残れるのかを考えていた。お前には死んで欲しくないからな」
そう言うと橘は泣き止みいつものクールな顔に戻り
「それでは、お願いしますよ。私達が2人で生き残るための方法を考えてください」
そう言ってきた。
その後は俺が偶然持っていたライター(近所のおっさんに使えるけど新しいの買ったからと押し付けられた)を使って火を起こした。
因みにあの後は夜の見張りは俺がやるか交代かで揉めたのは言うまでもない。
結果として交代になったが橘の精神面がやばかったので交代はせずに俺が一晩中見張りをしてて翌朝に怒られたのはお察しの通りだ。