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獄異譚  作者: 譚海 沈
2/3

白い

泣き声がする。荒廃する世界に響き渡る声。小さく微かに満遍なく響き渡っている。


嫌いな泣き声と好きな泣き声がある。子供の泣き声には胸を締め付けられるほど苦しくなるのに、俳優の演技の泣きまねは笑いがこみ上げてくるものがある。その場の流れで自然と泣いたその声や音に感情を揺さぶられるのはとてつもない痛みを心に受ける時がある。


『はぁ、久方ぶりだわ。なぁ、天城(あまぎ)?』


『矮小な地獄。』


 地獄世界の天城は心底つまらなそうな顔で短く感想を述べる。

 

『嗚呼、本当に貴方に飼われてしまったのね。』


腰まで伸びた毛先の整った黒い髪を、やれやれと頭を振るしぐさとともに気怠げにジトっと半目を向けてくる。


『飼うなんて言い方やめろって、地獄を喰らっちゃったら、結果お前が俺から離れられなくなっただけだろ。』


『離れられなくなったとか、やめてもらえる?貴方に依存しているみたいで気持ち悪い。』


はは。気持ち悪いって言い切りやがった。


『まぁ、相互依存ではあるわけだろ?』


『私はあのまま本体の中で消えてよかったんだから。』


『そんな事、言わんでくださいよぉ。』


『…そろそろ無駄話は終わりにしましょう。本物の天城 咲耶(さくや)が心配するわよ。』


『そうかなぁ?記憶はほとんど君もちでしょ?』


『良いから、鎌になるから私の腰に手を回して。』


『はいはい。仰せのままに。』


左手で腰に手を回すと、無言で右手を余った俺の右手に伸ばしてくる。真意はわからなかったが、恋人つなぎの指を絡める感じの握り方で速攻で捕まえる。


『馬鹿。』


 闇天城は顔を下に向けたまま一言呟くと俺の身長と同じくらいの黒い大鎌に姿を変える。その瞬間、天城の地獄が脳裏の中に昔から俺の記憶としてあるようにフラッシュバックを引き起こす。

 

 『ふぅ。賢者モード。』


フラッシュバックは一瞬だが体感が恐ろしく長くそして、精神的負荷がとんでも無く大きい。


 『その喪失感に入るときに賢者モードて言うのやめてくれない?』


精神体となった天城が空気を振動させて話しかけてくる。


『え?何で、いやこれね、まじでテクノブレイクした時と一緒なんだよ?』


『最低…キモっ。』


最低からの溜まらずキモっとつけてしまった闇天城の罵りに若干の気持ちの高揚を感じつつ、そろそろ本当にこの地獄を出ないと学校間に合わないなぁと思い始める。


『そろそろ探索始めたら?』


『はーい。』


俺は無駄に鎌の()を両手で(こす)りながら泣き声の大きくなる方に歩き出す。


 『やめてくれない?痴漢野郎。』


その言葉を受けてもっと手を激しくしようかなやみながら、少し下半身が熱くなるのを感じて大人しく手を止め立ち止まり、腰を折る。やっぱり少し落ち着かせてから歩こうと。


『きもっ。』


その仕草を察して早速罵倒してくるが、俺は勃っちゃうからやめてとその場で自律神経の制御に集中した。

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