表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

遭遇

ーーイラクリオ大陸西部の国家群を指して「教会圏」と呼称するのは、これらの国々と「教会」との密接な関係性が由来する。

有史以前、「聖人プリンシパル」は天上の神々の助力を得て「魔族」の脅威から人類を救ったとされる。これが「加護」の起源であり、教会は神を祀りその福音をあまねく人類に広く行き渡らせる使命を負っているとされる。

人々の暮らしは神の加護のもとに成り立ち、神と人とを繋ぐ役割を負った教会の存在はフレイム帝国のような大国でさえ無視出来ないほど大きなものだ。例えば神の加護を得るための儀式「洗礼」は基本的に教会でのみ行われる「奇蹟」とされている。

極端な話、教会の存在しない地域では人々は神の加護を得ることが出来ない。魔族を始め人々にとっての脅威が多く存在するこのイラクリオ大陸西部において教会の助力を得られないことは文字通り死活問題になるのだ。







◆◆



「なるほど、やはりヒソカは『迷い人』だったのだな。しかし凄まじいものだな、迷い人の魔力は」



「『加護』を得たばかりだからまだ上手く扱えないみたいね。今はちょっと大変だろうけど慣れてもらうしかないわね」




ーー白に近い長い銀髪の長身の女騎士。聖騎士(パラディン)シャルロットはフレイム東教会の司祭、ザンゲフと教会の一室で向かいあう。

この日シャルロットは迷い人上野密(うえの ひそか)の洗礼の儀式において不測の事態が生じた場合の備えとして教会に詰めていた。

前日、突然の出来事に混乱する上野密と出会った際の彼の言動から迷い人である可能性を見出したシャルロットは直ぐに彼を保護しザンゲフ司祭と引き合わせた。これはなにも上野密を思ってのことばかりではない。

迷い人は例外なく強力な加護を得る。突如として強大な力を手に入れたとき、その力を十分に制御することが出来るか。そしてその力は()()()()()()()()






「ヒソカくんの加護なんだけどね。ちょっとどんなものか分からないのよ。あんまり悪いものではないと思うんだけどね」


はち切れんばかりの筋肉を青い修道衣で包んだ野獣のような大男。フレイム東教会の司祭ザンゲフである。





「どんな加護なのかわからない、というのは珍しいことなのか?」


「うーん、例えば赤神や黄神なら「色」とかイメージで分かるし、水神や土神なんかも分かりやすいんだけど…珍しいタイプの神さまなのかしらね」



「いずれにせよあれだけの魔力だ、遠からずヒソカの周囲は騒がしくなるだろう。ここに居ればひとまずは安心だがこの先のこともある。しかるべきところに話を持ち込んでもいいかもしれないな」


「それもヒソカくん次第ね。まあそんなに心配しなくてもいいと思うわ。カレ、悪い子には見えないしね」




確かに、とシャルロットは頷く。突然見知らぬ世界に迷い込んだにも関わらず彼は驚くほど冷静だった。他者に配慮し誠実な振る舞いは一貫して変わらない。これまでのところ彼の為人は好ましいものに見えていたし、それは目の前の司祭も同意見のようだった。

それでも彼が得た力は破格のものだ。加護の全容は明らかではないがその秘めた魔力だけでもシャルロットの知る限り比肩するものはいない。更にこの先成長していく可能性まである。その強大な力は今後彼にどんな影響を及ぼしていくのかーー




「ふふっ、そうは言っても心配は尽きないわね。一応大聖堂の方にも使いは出してあるわ。『迷い人現る。強い魔力を保持も、加護の詳細不明』とね。大司教様なら必要な措置をとって下さるわよ」



「そうだな、此方の様子も都度お伝えせねばならないだろう。人手も必要になるだろうしーー」











その時、シャルロットとザンゲフは何かしらの予感を得て視線を合わせる。ここに殺到する気配を、二人はほぼ正確に掴んでいた。何故なら彼等はそれを隠そうともしていない。国家すら超える権威を誇る教会を、躊躇いなく襲撃出来るほどの実力を持つなにかに対峙するため二人は動き出す。

それは、きっと絶望的な戦いとなるはずだったーー



















◆◆




ーーちょ、マジかよ!?



洗礼の儀式の後たっぷり休んだ俺は水を貰いに部屋から出た。なんだか騒がしいなあ、と思いながら人を探しているとさっきの修道士さんが来て慌てながら事情を説明してくれた。


たった今正体不明の二人組が教会に襲撃をかけてきたということだ。そいつらにはザンゲフ司祭やシャルロットが対応しているが、どうも向こうはかなりの喧嘩腰で現場はものすごい緊張感らしい。


なんだよ異世界ファンタジー!凄え怖えよっ!

しかもそいつらの狙いはどうも俺らしく、俺の身柄を引き渡せ、と詰め寄っているそうだ。

ちょっと呼び出しとか、生まれてはじめてなんですけど!?ケーサツ呼んでくれよ、マジで。

修道士さんは俺を逃がすように言われてきたらしい。なんでも相手はメチャクチャ強そうでザンゲフやシャルロット









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ