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セラフィンゲイン  作者: 鋏屋
EP-1 セラフィンゲイン
15/60

第14話 鬼丸

 クエストNo.66『聖櫃』への挑戦は苛烈を極めた。山道での戦闘は大した物ではなかったが、『聖櫃』へと続く通路でのセラフの攻撃は凄まじかった。まさに過剰殺傷【オーバーキル】と言った設定だ。

 チーム全体のレベルが上がり、端末でのランキングも上位の常連となり『俺達は最強だ』などという自惚れのような物も芽生え始めていた俺達の自負心は一切合切吹き飛ばされた。絶え間ないボスクラスの攻撃。狭い通路というフィールドでのポジション取り。限定されてしまう退路への不安。それら全てがマイナスの思考へと導く材料になり、俺達は疲弊していった。ただ一人を覗いて……

「サムがやられて前衛戦力が落ちた。マトゥの魔法力も残り少ない。レイスの魔法はまだ余裕有るが、此処じゃ大きな魔法は使えない……」

 このクエスト3匹目の大型のボス級セラフである『グルダ・シャンク』という古龍種を狩り終えたところで前衛戦士のリオンがそう漏らした。ハアハアと肩で息をしているのは、戦闘直後だからと言うだけではないだろう。

「なあ鬼丸、もう限界だ、リセットしよう。これ以上は無理だ……」

 そのリオンの言葉につかの間の沈黙が辺りを支配する。彼の後ろにいるビショップ【僧侶】のマトゥ、ウイザード【魔導士】のレイス、それにガンナー【砲撃手】のライデンも口には出さないがリオンと同意見なのは顔を見れば明らかだった。

 かく言う俺も客観的に見て、現状ではリセットも致し方ないと考えていた。現実ランサー【槍使い】のサムがデッドし直接的攻撃力が低下している。加えて度重なる大型セラフの挟撃で回復に裂ける魔法力も残り少ない。もう一度今のような大型セラフの攻撃を受けたら全滅しかねない状況だった。

「レイスが得意な『爆炎系』の魔法も、こう狭い通路じゃこっちまでダメージ食らうから使えない。アンタの『メテオ・バースト』も同様だ」

 リオンの意見はもっともだった。派手で強力なダメージをもたらす『爆炎系』と呼ばれる魔法は此処のような狭い通路で使用すると、味方にまでダメージを与えかねない。逆にこういった場所では『雷撃系』か若しくは『冷却系』の魔法が適しているのだが、レイスは主に『爆炎系』を好んで使っており、『冷却系』は使用頻度が少なく熟練度は最低レベルだった。

 セラフィンゲインでのスキルは基本的に使えば上昇する『熟練』システムだ。コレは武器だけではなく魔法にも当てはまる。使えば使うほど威力が上がっていくが、反対に使わないと、いくらキャラクターレベルが上がってもその武器、魔法は最低レベルにとどまる事になる。

 まんべんなく使用して全体的にスキルを上昇させるのが理想的なのだが、全ての武器、魔法を『達人級』とは行かないまでも『上級』レベルまで引き上げるのには膨大な時間がかかる。そのためどうしても『偏った』上昇、若しくはそれに『特化』したキャラにならざる終えない。現実世界でも『一流の野球選手』が同時に『一流のサッカー選手』になる事は出来ないのと同じで、極めて現実的な上昇システムなわけだ。

 いつもの鬼丸なら、こんな状況には至らないだろう。サムが危険になる前に退却しているはずだ。しかし、今日の鬼丸はいつもとは違っていた。攻撃も力押しが多く無理をしていると言う場面が多く感じられる。そう、どこか『焦り』の様な物があった。

「あと少し……もう1ブロック先に『聖櫃』がある……」

 鬼丸はそう呟きながら一同を見回した。その顔には明らかな失望が浮かんでいる。

「シャドウ……お前も同じ意見なのか?」

 振り返り俺のそう声を掛ける。何かにすがるような、この屈強な戦士にはおよそ似つかわしくない目をしていた。俺は彼のこんなまなざしを見るのは初めてだった。いや、見たくはなかったと言う方が正しかった。

「俺は……アンタの決定に従う」

 俺はそう言って目をそらした。状況を客観的に見て、此処で前進するのは無茶だと言う事は俺も感じている。恐らく鬼丸もそんな事は判っていただろう。あの鬼丸の事だ、判らないはずがない。

 だが、どんなに冷静な人間であろうと、ミスはするだろうし迷いもする。時には計算を度外視しても己の感情に従い行動したいときもあるだろう。俺達はAIじゃない。確固たる感情を持ってこの世界に挑むプレイヤーなのだ。それはこの最強と呼ばれた戦士も俺達と同じなのだと、俺はこのとき初めてそう思った。

 鬼丸は俺を『仲間』と呼んだ。俺はアンタをそう呼んだ事はない。そう呼べるだけの実力が俺にはまだ無いからだ。いつの日かアンタと肩を並べて戦える様になったら、俺も躊躇無く『仲間』いや『友』と呼ぶだろう。だからそれまで、アンタの期待には応えたいと思う。たとえそれが勝算のない戦いだとしても、俺はアンタと共に最後まで戦う。それが実力のない俺を『仲間』と呼んでくれたアンタへの俺なりの答えだった。

 たかがゲーム。現実に死ぬ訳じゃない。

 だがこの仮初めの世界で、たとえ復活の約束された『死』であっても、仲間を見捨てず、また裏切らない。鬼丸がいつも言っていたそれらの事は、この世界で特別な感情移入をして生きる俺のような者にとっては大事な事だったのだ。

「そうか……」

 俺の答えを聞き、鬼丸は静かにそう答えた。

 その時、俺達のいる場所から数メートル先で何かが吼えた。通路を渡る咆吼に鼓膜が悲鳴を上げる。一同は瞬時に視線を移す。見ると薄暗い通路の先にギラギラとした眼光が浮かんでいる。それはグルグルと咽を鳴らしながらゆっくりと俺達の視界に姿を現した。

 黄金の鬣をなびかせ俺達を睥睨するその顔は獅子のそれ。しかし胴体は鬣と同じ黄金色の鱗に覆われた龍族特有の体で、その尾もまさしく龍族の物なのだが3本あり、各々が独立して動き奇妙なうねりを演出していた。

「『マンティギアレス』……しかも雌もいやがる」

 そのセラフの後方から銀色の鬣を持つ色違いの龍の姿を確認し、一同が息を飲む。

 この獣とも龍とも付かないようなセラフは幻龍種と呼ばれかなり稀少な存在だった。大抵は雄、雌のどちらかで出現するが、希に今回の様な『夫婦』で出現することもある。強力な冷却ブレスを吐き、非常にどう猛。炎系の魔法には弱いが雷撃系の魔法はその首廻りの鬣が避雷針のような役割をして吸収されてしまう。体長は8m前後と比較的小柄だがそれなりに俊敏で、特に雄雌のつがいの時には高度な連係攻撃を仕掛けてくる。さらに各々が独立した形で動く奇妙な3本の尾は、時には攻撃、時には防御と多彩な用途に変化させるやっかいな代物だった。

「まずいぜっ、バックアタックだ」

 リオンが吐き捨てるように言った。バックアタックとは呼んで字のごとく、後方からの攻撃のことだ。直接的な攻撃力の乏しい後衛にダイレクトに攻撃を食らう事になるので致命打になりやすく非常に危険な状態だった。

 広いフィールドならともかく、この狭い通路でコレを食らったら回避は難しいが、幸い今回は敵から若干の距離があるため何とかなりそうだ。この距離で会敵した幸運に感謝したい気分だ。

 直ぐさま腰の剣を抜いて前に出るリオンに続き、太刀を引き抜き前に出ようとする俺を鬼丸が止めた。

「何故だ、鬼丸?」

 鬼丸は俺のその質問には答えず、いきなり俺の胸ぐらを掴むと思いっきり後方に放り投げた。俺はいきなりのことで何がなんだか判らず受け身も取れないまま後方の通路の壁に叩き付けられた。

「なっ……!!」

 咽を捕まれ無理矢理放り投げられた衝撃と叩き付けられた背中の痛みに息が詰まり言葉にならなかった。

 蹲る俺に振り向きつつ一瞥を投げる鬼丸の口元に、うっすらと笑みが浮かんでいるのを俺は見た。いや……見てしまった。

 見る者を虜にしそうな、あの極上の笑顔とは似ても似つかない笑み。俺の知っている鬼丸という男が、決してしないだろうと思われる冷たい笑みだった。

 直ぐさま鬼丸は呪文詠唱に入った。凄まじい早さで硝化される意味不明なスペル【コマンド】。使う魔法のほとんどが回復か魔法剣の俺には到底何の呪文なのかは検討が付かないが、それは今までに聞いた事がないフレーズのスペルだった。その鬼丸の詠唱に呼応するように通路の天井に虹色に輝くドーム状の傘が現れる。そして唐突にその詠唱がやんだ。鬼丸は手にした太刀を、まるで魔導士の装備である『杖』【ワンド】の様に高々と掲げ大きな声で最後の発動条件である呪文名を叫んだ。

「コンプリージョン・デリート―――――――――っ!!」

 響き渡る鬼丸の声。そして……


 ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンっ――――――!!


 腹の下をゴリゴリとローラーか何かで敷かれているような重苦しい音と共に通路全体がブレた。まるでフィールド全体が身をよじっているような揺れ。先ほどまで七色に輝いていた光のドームは2体のマンティギアレスや後衛のメンバーはおろか、通路そのものを飲み込み、今は極彩色の明滅を繰り返している。

 他のメンバーがどうなったのか、鬼丸はどうなったのか、そもそも何が起こったのか全く判らないまま、狂ったように揺れる世界の中で、俺は意識を失った。

 どれくらい意識を消失していたのか判らないが、俺は目を開けて周囲を見回した。立ちこめる砂埃から考えて恐らく時間にして数秒。俺は腰にある太刀を確かめて起きあがった。

「なっ……なんだこりゃ……!?」

 俺の立っている通路の数メーター先が真っ黒な『空間』になっていた。俺達が此処まで来るのに歩いた通路、さっきまで幻龍2体とメンバー4人が対峙していた場所は、まるで墨汁を落としたような真っ黒な『穴』がぽっかりとあるだけになっていた。その『空間』だけそっくり『えぐり取られた』状態。まさにそんな風景だ。

 そして、その『穴』の縁に鬼丸が立っていた。

「鬼丸、今のはなんだ? みんなはどうなったんだ?」

 俺は背中からそう声を掛けた。現象前の鬼丸の行動から考えて、この状況は鬼丸が作ったと考えてまず間違いはないだろう。

「消したのさ……全部」

 どことなく軽い感じの鬼丸の声。

「消した?」

「そう、消してやった。セラフもろとも……予定ではもう少し行けるかと思っていたんだが、まあいいさ」

 振り向きもしないまま、鬼丸は俺にそう答えた。

「此処まで来たらあとは俺だけでも何とかなるから。『ガーディアン』や『他の連中』が気づいてももう遅い……」

 ガーディアン? 他の連中? いったい何の事だ?

 だが、今の言い方からして鬼丸は故意でメンバーを巻き添えにしたのだろうか?

 いや、そんなはずはない。人一倍『仲間』に拘っていた鬼丸に限って―――だが

「もう一度聞く。あ い つ ら は ど う な っ た?」

「だからぁ、消したんだよ、俺が……」

 そう言いながら振り返った鬼丸は何故か笑っていた。あの極上の笑顔で。

「アレは魔法じゃないんだ。『強制削除コマンド』っていってね、このセラフィンゲインのプログラムを強制的に削除【デリート】するコマンドなんだ」

 強制的に削除するコマンド? いまいち意味がよく分からない。

「いいかい、この世界は全てがプログラムで出来ている。俺達が此処で目にする物、体感する物全てだ。『コンプリージョン・デリート』はこれらプログラムを初めから『無かった事』として削除する事が出来るのさ」

 まるで出来の悪い生徒にかみ砕いて説明する教師のような言い方だった。

「俺達プレイヤーの意識もこの世界に転送された時点でデジタル化されプログラムに組み込まれる事になるから『コンプリージョン・デリート』のデリート対象になるわけ。プレイヤーの意識も初めから『無かったこと』となるのさ」

「それは……つまりどういう事だ?」

「分からないか? つまり『ロスト』だ。肉体は接続室にあるのに意識だけ『削除』されるんだぜ? 『入れ物』があっても『中身』が無きゃダメだろ、普通」

 そう言ってまた笑う。

 鬼丸の言っている事が本当なら、あの4人は通常のデッドではなくなる。恐らくセラフィンゲインとの接続が切れた今でも、接続室のベッドで覚醒しないまま眠り続けているだろう。恐らく永遠に……

 何がそんなに可笑しいんだ、アンタ。4人もロストさせておいて……

「な、何故だ……あれほど仲間に拘ったアンタが何故……」

 鬼丸は太刀を引き抜き、ゆっくりと近づいてくる。俺はじりじりと後ずさり、とうとう通路の壁際まで後退した。もう後がない。

「俺はどうしても『聖櫃』に行かなくちゃならないんだ。悪いな、シャドウ……」

 そう言って鬼丸は安綱を逆手に持つと渾身の力を込めて地面に突き立てた。それと同時に俺の右足に激痛が走った。

「―――――っ!!」

 あまりの痛さに声が出なかった。見ると鬼丸の愛刀である安綱が俺の右足の甲を貫き、深々と地面に突き刺さっていた。思わず片膝を付いて蹲る。

 すると鬼丸は痛みにこらえて震える俺の腰から俺の太刀である『細雪』を引き抜いた。

「俺は先に行く。その安綱はお前にやるよ。代わりにコレを貰っていく。じゃあな、シャドウ」

 そう言って立ち上がるとくるりと背を向けて鬼丸は歩き出した。

「ま、待ってくれ鬼丸っ……」

 痛みをこらえてそう言うのが精一杯だった。俺は必死に安綱を引き抜こうともがくが、安綱はビクともしなかった。右足を切り落とそうにも自分の太刀は鬼丸が持っていって仕舞った。

「鬼丸っ! 何故なんだ……俺達は仲間じゃなかったのか? 『ヨルムンガムド』はどうなるんだっ!」

 俺は激痛にもだえながら、悠然と歩く鬼丸の後ろ姿にそう問いかけた。

「解散さ……当然だろ? メンバーが半分以上居なくなったんだぜ?」

 つーか……アンタが消したんだろうが!

「ここに来るまでにはどうしてもチームでなければならなかった……一番手っ取り早く結束を強化できる手段として『仲間』つーのが最適の殺し文句だ。仲間を必要とし、また自分も仲間から必要とされているつー感覚がさ、人を惹き付けるにはうってつけなんだよ。冷めたリアルじゃ引かれる様な事だけど、此処に集まってくる連中は意外にそういう仲間とか戦友なんつー物に飢えている」

 鬼丸はそう言うと歩みを止め、振り返った。いつものあの人をたまらなく惹き付ける笑顔が、話の内容とのギャップに今は背筋が寒くなる。

「シャドウ、それはお前も同じだ。俺以上に『仲間』に拘っていたのはお前方じゃないのか? いや、違うか。『拘りたかった』と言った方が良いのかもな。リアルじゃ友達居ないだろ? お前」

 だから……なんだってんだよっ!

「マビノ山のこの『聖櫃』に続く通路は特殊なフィールド設定になっている。此処に来るには戦闘能力よりもむしろ『動機』つーか『意志』みたいな物が重要なんだ。チームとしてのな。だから俺は『仲間意識』をそれに利用したのさ。『信頼出来る仲間』が居れば『クリア出来る』つー様なニュアンスをメンバーに刷り込むために……それなりに戦闘能力も必要だからこのレベルまでお前達を育てるのに苦労したよ、マジで」

 それじゃ、今まで一緒にやってきた事は全て嘘だったって事かよ。左腕をちぎられてまで俺を助けてくれたあの時も、痛みをこらえて肩を貸してくれながら歩いた時も……それに今さっきだって俺を投げ飛ばして……


『何言ってんだよシャドウ、仲間だろ? 俺達』


 あの時のあの極上の笑顔が蘇る。違うっ! 違うだろっ、鬼丸、てめえっ……!

「じゃあ何故俺を消さなかったんだ?」

 俺のその問いに鬼丸は少し悩んでいるようだった。

「さあ……あの時の事は俺でもよく分からない……体が勝手に……」

 今までの明朗な言葉ではなく、少し言いよどんだ呟きだった。終始笑みが絶えなかった鬼丸の表情が、その時だけ奇妙に引きつっていたようだった。だがそれも一瞬の事で、鬼丸はくるりと背を向けるとまた歩き去っていった。

「もう行かなきゃ……シャドウ、その安綱はお前が持っていてくれ。お前は恐らく――――だ。使えるだろが――――しろ。そしていつか――――俺を――――になれ。じゃあな、お前ならもしかしたら俺の唯一――――だったかもな」

 去りゆく鬼丸の声がよく聞き取れなかった。ちきしょう、なんて言ったんだ?

 足から来る痛みで考えが上手くまとまらない。安綱が突き刺さった右足が、さっきから情けないほど震えていて痛みを倍増させている。おまけにさっきから耳の奥で耳鳴りがする。くっそっ、なんだってんだっ!

 そして鬼丸の姿が見えなくなってしばらくたって、痛みにこらえつつ、ふるえが止まらない右足と安綱を呪いながら俺はリセットを告げた。


☆  ☆  ☆


「その後俺はウサギの巣のロビーで他の4人がロストしたのを知った。サムは先にデッドしていたので無事だった。あれから鬼丸がどうなったのかは分からない。表示板から鬼丸の名前が無くなっていた。まるで初めからそんな奴は存在しなかった様な感じで、全てのデータが消去されていたんだ」

 そう言って俺はテーブルのウーロン茶を一口飲んで続けた。

「奴の言うとおり、チーム『ヨルムンガムド』は解散。俺とサムは『オウル』つー古参のプレイヤーの勧めで『傭兵』になった―――ってオイっ!!」

 嫌に静かなんで辺りを見回す。

 リッパーとドンちゃんはテーブルの上に突っ伏して撃沈。マリアは腕組みしながら船漕いでるし、サモンさんの姿は見えない。そういやさっきトイレに行ったきり帰ってこねぇ……

 お前らな……っ!

 人に散々話せがんでおいて寝オチするって人としてどうなのよ? オイごるぁっ!!

「あなた、その彼にもう一度会いたい?」

 不意に横から声が掛かり度肝を抜かれました。あの、その気配殺したステルスモードで側にいるのは止めましょうよ、心臓に悪いから……

 『木馬ガールズ』はとっくに帰ったからてっきりこの人も帰ったのかと思っていたんだけどまだ居たんですね、ララァさん。

「もう一度彼に会ったら……どうする? ウラミハラサデオクベキカ?」

 どうやら僕の昔話に最後までつき合ってくれたのはこのララァさんだけだったようだ。全く関係ない話なのに変わった人だ。

「えっ? あ、あ、い、いや……」

 恨む……ちょっと違うかな。全然恨んでないって言えば嘘になるけど、それでも復讐だの恨みを晴らすだの考えた事は一度もない。ただ……

「う、恨むとかじゃ……り、り、理由、を、き、き、聞か、せ、せて欲しい」

「ふ〜ん、つまんない答えだね〜」

 余計なお世話です。つーかアンタさっきから何やってんの?

「占なってんの、あなたの事」

 そう言って水晶玉の上に手をかざして行ったり来たりさせている。怪しい……すこぶる怪しい動作だ。水晶玉には全く変化がないんですけど……

「あなた、近いうちに会うわよ、彼と」

「へっ?」

「再会するみたい。それもそう遠くない未来に……」

 マジで? あなたといい、その水晶玉といい、さっきのいかにも系の動きといいどうにも胡散臭いんですけど。さらに緑色のカラーコンタクトを入れた瞳で僕をのぞき込むララァさん。近い、近いって! もしかして僕に気があるんですか!? ヤバ怖いから離れてくれっ!

 不意に右手を僕の顔の前へ差し出す。

「な、な、なんですか?」

「占い料、初回5千円のところ、キャンペーン中につき3千円。ラッキーね、あなた」


 ――――金取るのかよ……


初めて読んでくださった方、ありがとうございます。

毎度読んでくださる方々、心から感謝しております。

第14話更新いたしました。

いや、風邪が治りませんわ。咳が酷くてもう死にそ……

今回は回想シーンがメインになっております。回想から現実へと繋ぐ手法が下手ですね、私は。何度か書いてはボツというのがエンドレスで続き、とうとう『聞いているメンバーが寝オチ』つー強引な展開でカモフラージュしてしまいました。

痛っ! いやっ! ごめんなさいっ! 石投げないでっ……!(汗

情けない作者ぶりに呆れるかもしれませんが、どうぞこれからもご贔屓に

鋏屋でした。



〈次回予告〉

現実世界の大学で雪乃と再会した智哉。学食で仲良くお昼ご飯を食べる事になった智哉は、意味ありげな雪乃の言葉と萌える仕草に暴走気味。

『雪乃さんはひょっよして僕の事を……』

なんて言う妄想を浮かべるが、彼女居ない歴=人生の智哉には妄想だけでも体に悪そう。駄菓子菓子、やっぱりどこか良い雰囲気の2人。智哉に人生初めての春が来るのか!?

そんなこんなで、脳が溶けかかる智哉に雪乃は自分と鬼丸の関係を告白しようとするのだが……


次回 セラフィンゲイン第15話 『雪乃と智哉』 こうご期待!

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