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ソラが笑う。  作者: 朝生
オマケ
4/11

高校2年生、夏(アマネ)



 ソラの髪は、ふわふわの猫っ毛だ。

 少し栗色がかった髪は、触れるととても柔らかい。

 血統書付きの、長毛種の猫みたいに。

 彼の心のそのままに、ふわりと全て、受け止めるような。

 強さで跳ね返したりはしない、そんな髪。


 反して私の髪は、真っ黒で真っ直ぐ。

 色も形質も、変化を拒む。(かたく)なに。

 切ったばかりの髪は、チクリと痛い。

 自分自身すら、拒んでいる。


 顔にかかる感覚が煩わしくて、だいたい長く伸ばしていた。

 私の髪はあまりにも真っ直ぐすぎる。

 まとめようとすると、するりと逃げていく。

 だからいつも、一つに結ぶだけ。


 私はソラの髪が好きだ。

 ソラの全てが好きだけど、とりわけ、ソラのように優しい髪が。

 触れると、日向ぼっこしている猫みたいに目を細める。

 ふわふわと、幸せそうに。

 それを見て、私も笑う。

 私の心まで、日向ぼっこしているみたいに温かい。


 第二次性徴期を迎え、思春期と呼ばれる私たちの距離は、たぶん、近すぎる。

 そんなことは分かっていたけど、この近すぎる距離が心地いい。


 ◆◆◆


 高校は、少し居心地が悪い。

 いつの間にか女の子たちに囲まれ、騒がれるようになっていた。

 思春期真っ只中に、私で擬似恋愛を楽しんでいる。

 同じ性を持つ私を、安全であると、本能的に嗅ぎ分けて。

 彼女たちは、私に理想をみている。

 理想を、押し付けている。


 ソラだけが私の居場所だった。

 ここは、いつもと変わらない。

 ソラは今日も、笑っている。

 ソラの隣だけが、私が私でいられる。

 温かな微睡みに似て。

 柔らかな、居場所。


 繋いだ手が、ぎゅっと握られる。

 ここに居ると、知らせるように。

 いつまでも、変わらないと思っていたソラ。

 そんなソラの、少し大きくなった手に、気づいていた。

 でも、もう少しだけ気づかずにいさせて。

 もう少しだけ。


 ぎゅっと、握り返す。

 子どもみたいに。


 (すが)るみたいに。




読んでいただき、ありがとうございます。

ブックマークと評価、感想もありがとうございました。


誤字脱字ストーリーの抜け等ありましたら、お知らせいただければ幸いです。

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