表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソラが笑う。  作者: 朝生
オマケ
3/11

高校2年生、夏(ソラ)

だいたい500〜1,000文字程。しばらくの間更新します。

オマケなので、話が繋がったり繋がらなかったり、それぞれ完結。

 


 僕の髪は、ふわふわの猫っ毛だ。

 頭の中にソックリでお似合いだ、と言われている。

 この髪は、僕の両親のどちらにも似ていない。

 おじいちゃんやおばあちゃんにも、似ていない。

 僕には一つ年下の弟がいるのだけれど、その弟とも。


 そのことが、僕は不満だった。

 ついでに言うならば、不安だった。

 たぶん、僕は、橋の下で拾われた、捨てられっ子なんだ。

 小さい頃、僕はそう、本気で信じていた。


 幼い不満をぶちまけると、おばあちゃんは、僕の頭をなでて言った。

「おまえの髪は、私の母にそっくりだよ」と。

 僕にとっては、ひいおばあちゃんだ。

 それから一度だけ、ひいおばあちゃんの写真を見せてもらったことがある。


 白と黒だけでできた古い写真は、無言でこちらを見つめてきた。

 写真に温度なんてある訳がないのに、温かく感じるような眼差しで。

 何かが少し、許された気がした。

 ひいおばあちゃんがおばあちゃんの言うとおり、ふわふわ猫っ毛なのかは、よく分からなかったけれど。

 おばあちゃんが言うのなら、そうなのだろう。きっと。


 ◇◇◇


 アマネちゃんは僕とは違って、黒くて真っ直ぐな綺麗な髪をしている。

 触れるとさらさらと音をたてる。

 とても綺麗な髪。

 それこそ、アマネちゃんの真っ直ぐな心根を表しているみたいに。


 普段は一つにまとめていることが、もったいないと思う。

 背中へ真っ直ぐ伸びる髪は、とてもキラキラとしているのに。

 後頭部で一つに結っただけの髪は、ちょっと素っ気ない。

 その素っ気なさは思春期の女の子特有の潔癖さに合致したようで、アマネちゃんは大モテだ。

 そこらの男じゃ敵わないくらい、女の子からモテまくっている。

 アマネちゃんは、決して男らしい訳じゃない。

 どちらかと言えば、女性らしい繊細さのある子なのに。


 あまり弱気を見せないアマネちゃんが、女友達ができないと嘆いていたことがあった。

 女の子たちから、熱狂的過ぎる好かれ方をしてしまったせいだろうか。

 女の子がダメなら男の方はと言うと……やっかみもあって、ますます望みが薄い。

 それから、アマネちゃんは僕を見て笑った。

「友達ならソラがいるのに、私は欲ばりだね」って。


 僕はちょっと、困ってしまった。

 確かに僕らは友達だけれど、僕はもうとっくに、友達という言葉だけじゃ足りなかったから。

 だから、なんとなく触れていた手をぎゅっと握った。

 返事の代わりに。


 アマネちゃんは、欲ばりなんかじゃない。


 アマネちゃんの手は、僕より小さくて僕より温かい。

 でも、今日はほんの少しだけ冷たかった。

 僕の体温をうつすように、ぎゅっと握りしめる。

 握り返してくれた手は、友情と親愛。


 アマネちゃんが欲ばりだと言うのなら、僕はどうなのだろう。

 僕はもっと多くのことを、アマネちゃんに求めている。



「ソラ〜」は、本編含めてちょっと試験的な書き方をしています。これはこれで書きやすいけど……読みやすいかというと、別の話。


お読みいただき、ありがとうございます。

誤字脱字ストーリーの抜け等ありましたら、お知らせいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ