高校2年生、夏(ソラ)
だいたい500〜1,000文字程。しばらくの間更新します。
オマケなので、話が繋がったり繋がらなかったり、それぞれ完結。
僕の髪は、ふわふわの猫っ毛だ。
頭の中にソックリでお似合いだ、と言われている。
この髪は、僕の両親のどちらにも似ていない。
おじいちゃんやおばあちゃんにも、似ていない。
僕には一つ年下の弟がいるのだけれど、その弟とも。
そのことが、僕は不満だった。
ついでに言うならば、不安だった。
たぶん、僕は、橋の下で拾われた、捨てられっ子なんだ。
小さい頃、僕はそう、本気で信じていた。
幼い不満をぶちまけると、おばあちゃんは、僕の頭をなでて言った。
「おまえの髪は、私の母にそっくりだよ」と。
僕にとっては、ひいおばあちゃんだ。
それから一度だけ、ひいおばあちゃんの写真を見せてもらったことがある。
白と黒だけでできた古い写真は、無言でこちらを見つめてきた。
写真に温度なんてある訳がないのに、温かく感じるような眼差しで。
何かが少し、許された気がした。
ひいおばあちゃんがおばあちゃんの言うとおり、ふわふわ猫っ毛なのかは、よく分からなかったけれど。
おばあちゃんが言うのなら、そうなのだろう。きっと。
◇◇◇
アマネちゃんは僕とは違って、黒くて真っ直ぐな綺麗な髪をしている。
触れるとさらさらと音をたてる。
とても綺麗な髪。
それこそ、アマネちゃんの真っ直ぐな心根を表しているみたいに。
普段は一つにまとめていることが、もったいないと思う。
背中へ真っ直ぐ伸びる髪は、とてもキラキラとしているのに。
後頭部で一つに結っただけの髪は、ちょっと素っ気ない。
その素っ気なさは思春期の女の子特有の潔癖さに合致したようで、アマネちゃんは大モテだ。
そこらの男じゃ敵わないくらい、女の子からモテまくっている。
アマネちゃんは、決して男らしい訳じゃない。
どちらかと言えば、女性らしい繊細さのある子なのに。
あまり弱気を見せないアマネちゃんが、女友達ができないと嘆いていたことがあった。
女の子たちから、熱狂的過ぎる好かれ方をしてしまったせいだろうか。
女の子がダメなら男の方はと言うと……やっかみもあって、ますます望みが薄い。
それから、アマネちゃんは僕を見て笑った。
「友達ならソラがいるのに、私は欲ばりだね」って。
僕はちょっと、困ってしまった。
確かに僕らは友達だけれど、僕はもうとっくに、友達という言葉だけじゃ足りなかったから。
だから、なんとなく触れていた手をぎゅっと握った。
返事の代わりに。
アマネちゃんは、欲ばりなんかじゃない。
アマネちゃんの手は、僕より小さくて僕より温かい。
でも、今日はほんの少しだけ冷たかった。
僕の体温をうつすように、ぎゅっと握りしめる。
握り返してくれた手は、友情と親愛。
アマネちゃんが欲ばりだと言うのなら、僕はどうなのだろう。
僕はもっと多くのことを、アマネちゃんに求めている。
「ソラ〜」は、本編含めてちょっと試験的な書き方をしています。これはこれで書きやすいけど……読みやすいかというと、別の話。
お読みいただき、ありがとうございます。
誤字脱字ストーリーの抜け等ありましたら、お知らせいただければ幸いです。