9 とある会社の社員
私はある会社に勤めています。
その会社は警備関係の仕事なのですが、普通の警備会社といえばマンションの見回りやセキュリティー室にいるようなものを想像する人が多いと思うのですが、少し変わった会社なんです。
というのも、大統領や大金持ちの方が護衛のために頼んだりする会社なのです。たまに男性の方が護衛にと連絡を受けますが、男担の資格を持っている社員はいないので女性のみになります。
護衛というのは凄く大変な仕事なのです。大変だからといって手を抜けるわけでもないです。でもずっと気を張っていることはできないので1日4人でローテーションします。それでも疲れて休みのときは寝ていることが多いです。
ここで働き始めてから約2年、そろそろ慣れてきたなと思っていた時でした。
ベッドで寝ていると携帯電話が鳴り出しました。
「はい、もしもし」
少し寝ぼけながら電話をとりました。
「坂口〜!ちょっと来週の木曜日、空いてる?」
この声は会社の先輩で吉田さんですね。
こういうときは大体仕事代わって欲しいとかなんとかですよね〜たぶん。
「はい、私はその日は休みですね。予定も特にありませんよ〜」
「そっかそっか、じゃあ頼まれて欲しいんだけどさ仕事」
「わかりました。」
「ありがとー!まぁ少し代わった内容なんだけどさ、給料はいつもの倍でるらしいよ!社長直々のお話みたいだから後で社長に連絡して自分で聞いてくれ〜!そんじゃありがとねー」
「ちょっ!なんですかその仕事っ!」
私の言葉は虚しく通話は切られてしまいました。
はぁどうしよう。社長となんてほとんど話したこと無いし、変な仕事受けちゃったなぁ・・・。
でも仕方ない、社長に連絡してみますか。
こんにちは、今日は木曜日です。
この前、社長に電話して聞いた内容は衝撃的でした。なんと、社長の息子さんの護衛だそうです!男担は持ってないのに!と思ったのですが、何事も事情があったりしますよね?
社長の息子さんが幼稚園でお泊まり会があるそうなのです。そこで社長は息子さんが心配で心配でたまらくご自分で護衛することにしたと。
まぁ隠れてですけどね?
まぁ社長は役員みたいなものですから現場は少し厳しいのかな?なのでそれでも心配なようです。
ということで、私の仕事です。
名目上は社長の護衛です!あはは・・・。
ですが実際は社長の息子さんを隠れて見守るって感じですね!
少しだけ楽しみにしてるのは秘密です。
もうすぐ夕方で仕事の時間です。
幼稚園の近くで社長と待ち合わせしています。
そろそろくるはずなのですが
「おまたせ〜」
「あ、よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくね?あ、あとうちの子を変な目で見たら・・・わかってるわよね?」
優しそうな顔してるのに、一瞬でゾッとするような社長の空気に触れ、さっきまで楽しみにしてたのがバレてるのかとすら思ってしまいます、、
「は、はい〜もちろんですっ」
こうして社長と2人きりの隠れながら護衛が始まったのですが、、、
警察の方などもいるし、警備も他で雇っているようで凄くしっかりした幼稚園なのです。あー、私たち必要ないな〜と思ってた矢先に不審者が現れたのです!!!
まだお泊まり会といっても始まったばかりで、子供たちが夕食のカレーを作っているときです。カレーはキャンプみたいな感じで、幼稚園の外の広場で作って外で食べるようでした。なので私たちは近くの茂みから見ていたのです。
男の子たちが騒ぎながらジャガイモの皮を剥いたりしていて私は少しニヤニヤしていたかも知れません。
そんな時、護衛対象のあきとくんもジャガイモの皮を剥いてました。すこし不器用だけど一生懸命で可愛いな〜と見守っていたんです。
そしたら近くの茂みからゴソゴソと音がして園児たちの方に向かっていこうとする人がいました!
そうです!社長です!!
目を血走らせて何か呟いています!
「…あきとくん ……あ、あぶなぃ・・・こんな姿も可愛ぃっ」
「社長!しっかりしてください、隠れてることがバレますよっ!!」
社長の手を掴んで出て行こうとするのをとめます。他の警備の人に見つかったりしたら大変なことになりますよっ!
それからというもの不審者は社長以外現れなかったのですが、大変な時間を過ごしました。
何かあるごとに園児たちの方にふらふらと近づいていってしまうのです!
私は社長を止めるという仕事だったんだとその時気付きました。
犯罪を犯さないように、園児たちが楽しく子供達だけで居られるように、、、。
社長が息子さんを大好きなことはわかりました。息子さんと一緒にいる男の子がすっごく可愛いのに息子さんしか見えてないような感じですね。
それにしても疲れました。
仲間のはずの社長を見張らなければいけないのですから。
もう社長直々の依頼は受けたくない。そう思いました。
あ、でもあの可愛い男子たちを見てられるっていうのは素晴らしいです。
だから疲れてなかったらまた受けたいなー
なんて、、私も女ってやつですか・・・。
自己嫌悪になりながらも男子たちの顔を思い出して、妄想に浸りながら眠りにつくのでした。