表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/49

公開処刑1

 学校の昼休み。

 それは・・・

 5時限目が始まる5分前だった。

 

 次の授業、5,6時間目は学級活動。

 そのため、クラスメイトはほぼ全員教室に揃っていた。


 ピコーン!

 ピコーン!

 ピコーン!

 ピコーン!


 一斉にスマホのメール音がする。

 一斉に音が鳴ったためか。

 皆不思議そうにスマホを見つめる。


「あれ?変なメール来てる。送り主不明だ~」

「あたしもー」

「俺も俺も」

「なんだろうねー」


 教室がガヤガヤ騒がしくなる。

 

「なんか、動画がついてるみたいだよー」

「やべー、ウイルスじゃね?」

「動画再生するだけでウイルスにかかるかよっ」

「俺、見ちゃおー」

「えー、危ないよ」

「いいって、いいって」

「じゃあ、あたしも~」




 皆がスマホの動画を見始めた。

 音声が漏れ聞こえてくる。


 それは。

 どこかで聞いた事がある音声で。

 馴染みの高い声だった。


『あっ、あーん、あっ』


 そう。

 それは高い甘い声で。

 女性の喘ぎ声が教室で再生された。


「おい、エロ動画じゃん」

「うわぁ。すげーモザイク無しだ、モロ見えてる」

「ちょっと男子~見ちゃダメ」

「でも、あれ?ちょっとこれ・・・誰かに似てね」

「えっ!」

「だれだれ?」


「ほらほら、今顔映った」

「ほんとだー」

「えっと、これは・・・堀北、さん?」

「・・・・・・」




『あっ、あーん、あっ』




 動画の喘ぎ声が響く中。

 静まり返った教室。


 全員が彩をみている。

 彩もスマホを見て固まっている。

 ピクリとも動かない。


「おい・・・しかも、この相手って・・・・一条」

「ほんとだー、一条君だ」

「えっ・・・でも、どういうこと、堀北さんって沖田君と付き合ってるんじゃないの?」


「・・・・・・・・・・」




 彩は固まったまま。

 一条も固まったままだ。

 二人とも石造の様に固まりながら、動画を見ている。


 俺にも視線はあつまっているが。

 あえて机に突っ伏す。

 なぜなら。

 あやうく笑いそうになってしまったからだ。

 気を抜けば、声を上げて笑ってしまう。

 頬が緩んで仕方がない。


 計画通りっ!


 全て上手く行った。

 全員のスマホめがけて時限式のメールを送っていたのだ。

 隠し撮りした彩と一条のハメ撮り動画を添えたものを。


 この時間の選んだのにも理由がある。

 彩と一条がおり、クラスメイト全員が揃っているところで動画を見てもらわないといけない。

 学校以外の時間で流出させても意味がない。

 この衆人環視の中で恥をかいてもらわないと。

 これから公開処刑の始まりだ。






 キーン コーン カーン コーン

 予鈴がなる。

 担任が入ってくるのが見えたので。

 全員がスマホをしまう。


 彩と一条は固まったままだ。

 全員の視線を一堂に集めている。


 教室に入ってきた担任の愛子先生。

 かわいらしい若い女性の先生で、皆の人気者だ。

 生徒思いの良い先生である。


 彼女はクラスの異変を察知したのか。

 

「あれ、皆どうしたの?」


 そう告げた。




 だが、誰も返事をしない。

 なんと返せば良いか分からないのだろう。

 まさか、一条君と彩のハメ撮り動画が送られてきたとはいえない。

 若い女性の先生になら尚更だ。


「まぁ、いいかな。では、学級活動を始めます。

 学級委員の堀北さん、一条君。ちゃちゃっとお願いしま~す」


 先生が促すが。

 二人は椅子からピタリとも動かない。

 彩も、一条もピクリとも動かない。 


「あれ?どうしたんですか~。一条君、堀北さん」


 

 愛子先生は悪気なく、二人の名前を連呼する。

 

 シーンと静まり返った教室で。

 二人に全ての視線が集まる。

 短いようで長い沈黙の時間。





 数秒後。

 彩は諦めたように教室の前に出た。

 彩の姿を見て心を決めたのか、一条も遅れて教室の前に。

 

 だが・・・二人とも表情は凍っていた。

 顔面蒼白とはこの事だろう。

 表情が消えている。


「あれ?元気ないですね~?二人とも。何かあったんですか?」


 愛子先生が無邪気に聞くが。


「いいえ、何もありません」

「俺もです」


 二人は否定する。

 機会の様な声で否定する。


「そうですか。では、お願いしますね。先生は脇で見ていますから」


 そそくさと愛子先生は教室の隅へ。

 彩と一条は表情のない顔で教室を見る。


「では、秋の文化祭の実行委員を決めたいと思います。

 どなたか希望者はいますか?」


 機械の様に話す彩。

 妙な緊張感に包まれる教室。

 誰もが気まずそうな顔をしている。

 笑顔なのは愛子先生だけ。


 沈黙が流れる。

 彩の質問に手を上げる者はいない。

 異様な空間だ。





 すると。

 教室の隅に現れる、他のクラスの担任。

 愛子先生が廊下に移動して少し経つと。


「皆さん。先生は用事がありますので、暫く席を外しますね。

 その間は掘北さん、一条君、頼みますね」


 愛子先生は去っていた。

 壊れそうなクラスの雰囲気を留めていた、管理者が消えたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拍手ボタン設置中。なろうユーザーでなくても、一言感想を送ることができます。

 

9/7 新連載開始です~↓
チートスキル「美容整形」持ちの俺は、目立ちたくないのにハーレムに

 

【8/4 完結しました】↓
ビューティフルざまぁ~公爵令嬢、悪役令嬢への道を歩む~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

こちらも連載中↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

★おすすめ傑作恋愛作品~(他作者様)↓
Be mine(作者;はな様)

 

★こちらも~です↓
乙女ゲームの模範生!(作者:穂兎ここあ様)
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ