その後1
気づくと。
俺は病院のベッドで寝ていた。
目覚めると。
看護婦さんが医者を呼び。
俺は検査を受けた。
打撲やら捻挫やら怪我をしていたが、命に別状はないようだ。
その後。
俺は刑事さんたちの聴取を受けた。
事件。
ネットの生放送で彩が傷つけられた事件についてだ。
俺は正直に話した。
犯人は田中で、彼が彩を誘拐し、傷つけたと。
だが同時に、有村さんの命を救った事も話した。
田中君が田中君でなかったことはふせた。
新撰組の田中寅蔵が憑依していた。
尋常ならざる剣技をはなったといっても、信じてくれないだろうから。
そんな事を話せば、俺が狂ったと思われるだろう。
刑事さん達も田中君が犯人だと思っているようだ。
きっとパソコンなど、色々な証拠を集めたのだろう。
納得がいかないことも多そうだけど。
事件は田中君が犯人でおわりそうだ。
そういえば、田中君の体にあった斬傷について聞かれたので。
俺は正直に話した。
日本刀で斬り合ったと。
相手が斬り込んできたので、そうするしかなかたっと。
俺は正当防衛が認められ、罪には問われなかった。
あの時は、ああするしかなかったのだから。
刀といえば。
沖田総司の愛刀、「菊一文字」は今病室に置かれている。
俺が所有する事になったのだ。
初めて知った事だが。
俺の家は新撰組の沖田家に関係する家だったらしい。
本当に。
その上親族は誰も刀を所持したがらなかったので。
とりあえず俺が所持する事になったのだ。
今の世の中、刀が必要な事態なんてまず起こらないし、刀の所持は面倒臭いらしいから。
刀の登録証やら警察への届出は、親がやってくれた。
後、田中君の刀は行方不明だ。
焼け跡から見つかったという話は聞いていない。
俺もあの炎の中では、「菊一文字」を持ち出すだけで精一杯だった。
というか、無意識に腰にさして出てきたのだ。
田中君の刀には注意が向かなかった。
最後にどこにあったかも分からない。
多分、田中君の死体の傍にあったと思うんだけど・・・真実は闇の中だ。
これから見つかるのかもしれない。
でっ。
俺が今入院している病室には、御馴染みの面々が居る。
彩に、一条、それに有村さんだ。
同じ部屋に入院している。
有村さんは一番の軽症。
目立った怪我はないが、とりあえず一緒に入院した。
一条は、田中君に打たれた怪我が大きかった。
彩は手の傷がひどかったが、それ以外は問題なし。
今は包帯を巻いており、傷は全て隠れている。
俺達には報道陣の取材が激しかったので、一緒の部屋に隔離されたのだ。
それに。
刑事さんたちに聴取される際は、同じ部屋の方が効率がよかったみたい。
愛子先生もお見舞いに来てくれて。
俺達が作った歴史新聞を持ってきてくれた。
俺と有村さんが愛子先生に頼んだのだ。
俺、彩、有村さん、一条、田中君で作ったものだ。
田中君が犯人だったけれど、実際は違った。
田中寅蔵が乗り移っていたし、有村さんの命を救ったのも田中君だったのだ。
荒唐無稽な話だったが。
被害者の彩と一条にも説明した。
彩も一条も仮面姿の田中君と対峙していたためか。
相手が図書委員の田中君だとは信じられず。
俺の話を信じてくれた。
俺は壁新聞を見て、田中君を思い出した。
入院生活。
一条と有村さんは仲良くしている。
一応カップルだし。
数日前に浮気がどうとかあったと思うけど。
今はその話はどこかに消えているようだ。
俺と彩も仲良しだ。
いつも通りのカップルだ。
付き合って1年半の記念日を祝った。
田中君から渡されたブレスレット。
彩が俺のために用意してくれたブレスレットを今もつけている。
そして俺と一条。
彩と有村さんも、そこそこ仲が良い。
今回の事があり、妙な仲間意識ができたためか。
これまであった壁が薄れてきた。
ずっと24時間。
同じ病室に居るのだから、仲良くもなる。
俺は浮気相手、元親友の一条には良い気持ちを持てなかったが。
今回一条は、彩を助けるために田中君と戦ってくれた事もあり。
俺は一条を許す事にした。
彩も有村さんが命がけで助けに来てくれたので。
彼女の事を受け入れているようだ。
有村さんも、彩に対してとっていた邪険な対応を謝っていた。
9月に起こった寝取られ。
動画流出事件でぎこちない関係になった俺達4人だが。
ここから新しい関係を築けるのかもしれない。
俺は、未来に希望を抱いた。
だから。
俺は皆に呼びかける。
「なぁ、皆、これまで色々なことがあったけど。
これからは手を取り合っていこう。全部水に流そうじゃないか」
「宗司。あたしもそれでいいよぉ」
「今までごめんね、堀北さん」
「宗司悪かった」
「ならっ、皆で手を合わせよう」
俺たちは手を重ねて、和解したのだった。
次回、最終話です。22時です。