刀剣演舞10
再び現代。
燃える武道場。
所々天井が崩れている。
この建物が完全に崩壊する時も近いだろう。
有村さんは、自分を救って下敷きになった田中君に涙している。
彼から離れようとしない。
「有村さん、早く逃げてっ!俺は彩と一条を救ってすぐ逃げるから」
「だめっ。私も二人を助けるから。田中君に助けられたんだもんっ!」
「だめだ。危ないっ!」
「私も力になれるわっ!」
くっ。
強情な。
だがここで言い争いをしても仕方がない。
時間を無駄には出来ないから。
「分かった。ならこっちだ」
「ええ」
俺と有村さんは炎と黒煙の中を駆け巡る。
炎の熱で、肌がやけるように痛い。
目を開けているのも辛い。
黒煙で息も十分に出来ない。
数時間にも思える数分を過ごすと。
「彩だっ!」
「掘北さんっ!」
俺たちは彩を発見した。
彩は椅子にロープで縛りつけられ、ぐったりしている。
出血多量で意識を失っている。
俺は刀でロープを切り、彩をオンブし。
戻っている時間はないので、そのまま一条を救いにいく。
「有村さん、一条はこの部屋の奥だっ!」
「うん、いくよ」
俺たちは先に進むと。
一条が床に転がっていた。
煙をすっているのか、完全に気を失っている。
一条をどうやってか外に運ばないといけないが。
さすがに二人はかつげない。
「有村さん、一条の片方の肩、持ってくれる?」
「分かった」
俺と有村さん二人で一条を担ぐ。
そして、炎上する武道場を後にした。
炎がこない校庭に避難する。
武道場は完全に炎に包まれ。
ほぼ崩壊していた。
建物としての形状を保っていなかった。
夜の闇中。
炎と黒煙に包まれていた。
田中君の死体も持ち出したかったが。
それは適わないだろう。
もう中には戻れない。
すると。
消防車の姿。
校庭に何台もの消防車が入ってきて消火活動が始まった。
俺と有村さんは。
校庭の土の上に座りながらその光景を眺めた。
パトカーと救急車が校庭に入ってくる。
警察官がゾロゾロでてきた。
幾人かの警官が寄ってくる。
俺たちの姿を見て「ぎょっ」とする。
自分達の姿を見直してみると。
確かにひどい格好だ。
俺は血まみれで煙まみれ。
彩も同じようなもの。
一番軽症の有村さんだっていくつもの切り傷をおっている。
「き、君たち、大丈夫か?」
「ええ、はい」
「なんとかね」
「いや、どう見ても大丈夫じゃないだろ。すぐに救急車に乗りなさい」
俺たちは警官と救急隊員に促されて救急車の中に。
俺は疲労困憊で意識が怪しかった。
何か色々効かれた気もしたけど。
適当に答えた。
そして、促されるままに運ばれていった。
俺は救急車の中で横になりながら。
多分病院に向っているだろう車内の中。
いつのまにか眠っていた。
目を瞑ることが。
ただ力を抜いて眠ることが。
とても心地よく感じたのだった。