刀剣演舞9
「有村さん?なんでここに?」
「助けに来たのよ。ネットで変な生放送見て、ここだって分かったの」
ガタンッ!
炎が燃え広がり。
武道場が崩れかかっている。
一部の天井は崩れている。
「有村さん、ここは危ない。すぐに避難するんだっ!」
「そんな、あたしだって、力になるわっ!」
「だめだっ!有村さん。こっちにくるなっ!」
「うっさい。沖田君、一人だけかっこつけないでっ!」
「だめだってっ!」
「あたしにだって、堀北さんは大事なんだからっ!」
有村さんがこちらに駆けてくるが。
ドゴンッ!
炎で建物の構造が崩れたのか。
天井が崩れ。
ちょうど有村さんの頭の上に落下する。
「きゃああああっー!」
「有村さんっ!」
俺は助けに行こうとしたが。
くっ、ダメだっ!
体が動かない。
先程尋常じゃない動きをしたせいか。
体中に痛みが走り、動けないのだ。
なんでこんな時にっ!
「有村さぁぁぁああああーーーん!」
バッシャーンッ!
無常にも天井が崩れ落ちる。
凄まじい音がし、土煙がまう。
建物の素材が視界を覆う。
有村さんの姿は消えてなくなってしまった。
「あ、有村さん・・・・なんで・・・なんで彼女が・・・」
目の前で有村さんが・・・
天井に押しつぶされてしまった。
俺の目の前で死んでしまったのだ。
俺はまた、救えなかったのか。
折角田中を倒したのに・・・
力を手に入れたのに・・・・
また、力が足りないのか・・
・
俺は・・・・
俺って奴は・・・・
また繰り返すのか・・・・
同じ悲劇を・・・
悲しみにくれる。
だが、土煙があけると。
そこには・・・
視線の先には・・・・
無傷の有村さんの姿。
彼女が生きているのだ。
対照的に。
彼女が元いた場所には、田中君の姿。
田中君は天井の下敷きになり、完全に体がつぶれている。
一目見て分かった。
田中君が最後の力を振り絞って有村さんを助けたんだと。
縮地で近づき、有村さんの代わりになったんだと。
だが、田中君が助からないのは明白だった。
あのタイミングで飛び込めば、田中君だって助からないと分かっていたはずだ。
「な、なに、どうして田中君が?なんで!?なんでなのっ?」
有村さんが、田中君を崩れた天井から引っ張りだそうとする。
俺は彼女の腕を持って止める。
「有村さん、やめるんだっ!」
「なんで、なんで止めるの?だって田中君が・・・」
「無理だっ!もう助からない・・・」
「うそっ!なんで、なんで、おかしいよーっ!こんなこと・・・・・
田中君が私のために命を落とすなんてっ!」
泣き叫ぶ有村さん。
田中君は虚ろな表情をしている。
だが、彼の口が僅かに動いている。
死ぬ前に俺に何か伝えようとしているのかもしれない。
俺は耳を彼の口元に近づけると・・・
かすかに声が聞こえてくる。
「沖田・・・いいか・・・気をつけるん・・だ・・・・
敵はまだいる・・・俺より強い・・・猛者どもがな・・・」
「何っ?」
「沖田・・・いいか・・・よく聞け・・・刀を追え・・・それが答えだ」
「田中君・・・・」
「そうだ・・・これは・・・返さないとは・・・」
田中君の視線を辿ると、ポケットからブレスレットが出ていた。
俺はそれを受け取る。
「あの女の・・・贈り物だ・・・そういえば・・・僕も昔はいたな・・・大事な人が・・・」
「・・・・」
言葉が途切れた。
田中君を見ると、彼の目は閉じていた。
息を引き取ったのだ。
隣では、有村さんが田中君を揺すってる。
「助けなきゃ。沖田君。早くっ!」
「無理だ。有村さん。もう死んでる」
「いやっ、なんで、なんで田中君がっ!」
俺は有村さんを田中君から引き剥がしながら。
田中君が有村さんを助けた理由。
俺にはかすかにだが、その理由が分かった。
その答えは。
俺の頭に流れ込んできた記憶の一部にあったのだから。




