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刀剣演舞7

 沖田宗司。

 俺は記憶の中で見た沖田の体術。

 縮地で動き回りながら、斬撃を繰り出す。



 バシュ

 バシュ

 バシュ



 仮面の体が血にまみれていく。

 相手も同じように縮地で動き回るが。

 俺の方がスピードで圧倒しているのだ。


「遅いっ!」


 バシュ


「うぐわっ!」


 俺が仮面の人物の胸を切り裂く。

 盛大に血が吹き飛ぶ

 胸を押さえて「はーはー」と荒い息をする仮面。

 今にも倒れそうだ。


「な、なぜ・・・沖田君・・・僕のスピードに」

「もう、からくりは分かってる」


「!?」

「同じ縮地なら、実力が上の方が勝つ。お前に勝ち目はない」







「ぐっ・・・」

 田中寅蔵は焦っていた。

 相手が・・・

 沖田君がいきなり覚醒したのだ。

 最早ただの高校生ではない。

 歴戦の猛者。

 幕末の京都を生き抜いた、沖田総司を彷彿させるのだ。

 

 このままではまずい。

 長引けば、こちらが負ける事は確実だった。

 これまでの経験が強く告げていた。


 ならばっ!

 次で決めなければならない。

 時間をかけられない。 

 正面からいく。

 真正面から。

 全てのスピードを一撃にこめる。

 最短距離で加速し。

 確実に仕留めるっ!

 ここが勝負どころ。

 生と死の狭間。

 勝負の境界線だと確信した。

 

 田中寅蔵は勝負に出るのであった。








 仮面の者がつっこんでくる。

 これまでで一番の速度。

 正面から最短距離を駆け抜けてくる。

 尋常ならざる殺気を込めて襲い掛かってくる。


 カキンッ!


 俺は相手の刀をはじく。

 想いをこめて弾き飛ばす。

 ササッー

 奴の剣は遠くに吹き飛んでいく。


「なっ!?」

「貰ったっ!」


 バシュ

 バカンッ!


 がら空きになった相手の顔。

 俺は仮面を真っ二つに叩き斬った。


「うぐあっー!」


 相手は顔を押さえて地面に屈みこむ。

 膝を突いて悲鳴をあげている。

 手の隙間からは血がポタポタと垂れている。

 荒い息をしている。

 最早、相手が瀕死状態に陥っているのは明らかだった。



「はぁーはぁー・・・な、なぜ、僕の剣が・・・僕の剣が負けるなどぉおお・・・」

「お前の剣は軽いんだよ。重さが足りないっ!」


「ぐっ、僕の剣が軽くなどっ!」

「何も宿っていない剣だっ!

 俺は愛する者を守るために戦った。彩のために。

 想いの差が刀に出たんだ」




 割れた仮面。

 相手の仮面が地面に落ち。

 手の間からするりと落ち。

 顔が見える。

 

 現れたのは・・・

 

 田中君っ!

 図書委員の田中君だった。


「君が・・・田中君が犯人だったのか・・・」








~~~~~~~~~~~








 田中寅蔵。

 試衛館高校2年、図書委員。

 高尾山で新撰組隊士「田中寅蔵」の刀、「零式虎鉄」を入手してから。

 僕は一時も心が休まらなかった。


 刀は部屋に隠していた。

 両親にばれないようにポスターのケースに入れていた。

 だが・・・

 常に刀を触りたくなる衝動に駆られるのだ。

 学校に持っていく事はできない。

 でも。

 できるだけ刀を触っていた。

 家では部屋にこもり、ずっと刀を手にしていた。

 この刀を持っているだけで、幸せな気分になれたのだ。

 圧倒的な力が体に流れ込んでき、充実した感覚を得られた。

 万能感が得られたのだ。


 力が満ちるので。

 発散するために刀をもって散歩に出かける。

 竹刀袋にいれて剣道少年を装う。


 人とすれ違うと、途端に相手を斬りたくなる。

 自分の力を試したくなるのだ。

 誰でもいいから斬り殺したくなる。

 激しい衝動に襲われるのだ。


 僕は務めてその衝動を抑えた。

 人を斬ると大変な事になる。

 だから、林に入って木を斬る事で力を発散していた。


 しかし。

 そうしていると・・・

 衝動を抑えていると・・・

 自分の心の中にエネルギーがたまっていくのを感じる。

 僕の心が他の何かで満たされていく。

 僕の心なのに、他の者で満たされていくのだ。




 時折。

 記憶がない時があった。

 自分が何をしていたか分からない時があった。

 自分がどこでに何をしていたか思い出せないのだ。

 

 それが徐々に増えてきた。

 最近は、自分の意識を保てる時間の方が少ない気がする。


 徐々に他の者に侵食されている。

 刀を手放せば解放されるのだろうけど・・・

 最早無理だった。

 僕以外の心の方が多いのだ。

 その心が刀を取り。

 さらに僕の心を失わせる。




 もう、終わった。

 僕は・・・もうすぐ消えると悟った。

 もう持たないと感じていた。

 時期に僕でない者が僕を支配すると。

 僕が僕である時間はもうないんだと。

 時間の問題だと。




 僕は最後に思った。

 

 刀なんて。

 復讐なんて・・・

 望まなければ良かったと。

 

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