刀剣演舞4
都内の警察署。
プルルルルー
プルルルルー
プルルルルー
「はい、こちら警察」
「分かっています」
「はい、こちらでも認知しております」
所内の電話はなりっぱなしだった。
ここ数十分間。
鳴り止む事がない。
署員総出で応対におわれている。
室内を見回しながら。
現場を統括する十勝警部補は、現状を苦々しく思っていた。
『ネット生放送で、拷問が行われている』との通報がなりやまないのだ。
拷問されている生徒の制服から、高校は割れている。
そこで、高校を管轄する内の署に電話がかかってきている。
「警部補。また、切り傷が一つ増えました!」
この室内でも、犯人の生放送を確認している。
『やってみたシリーズ~美少女を監禁してみたっ!(*゜▽゜)ノ 』という。
ふざけたタイトルがつけられたネット生放送。
投降主名も『新撰組隊士:沖田宗司』と、これまたふざけている。
映像の中では、椅子にしばられた女子生徒の腕がナイフで切り裂かれている。
痛々しいほどに真っ赤な血だ。
彼女の白い肌を覆うように、真っ赤な血が流れている。
苦悶の表情や反応から、それが演技ではないことが分かる。
「おい、まだこのふざけた放送を止められんのか?」
「はい。生放送の運営先に連絡して最初の放送は止めてもらったのですが。
すぐに、他のアカウントから放送を再開しているようです」
「なら、サイト自体を閉鎖できないのか?」
「強制的に閉鎖する許可を取るのに時間がかかります。
警告はしていますが、運営元はなんだかんだ理由をつけて応じてくれません。
他の動画サイトもありますから、本サイトを閉鎖してだけでは意味が無いかと」
「なら、誰の目にみれないようには?」
「twitterでも、snsでも、今ネット上ではこの話題で持ちきりです。
放送場所が変わっても、すぐにユーザーに発見されて拡散されるようです」
「ネットのバカ共が・・・野次馬根性で・・・・
それが犯人の利するところになると分からないのか。
それで、データのUP先をブロックできないのか?」
「分かりません、運営会社もやろうとはしているようですが、上手くいっていないようです」
くっ。
ネットの詳しいことは分からないが。
こんなふざけた放送をこのまま流すわけにはいかない。
それに、すぐに犯人を見つけて捕まえなければ。
「どこから放送されているのか分からないのか?」
「はい・・・なんとも。現在調査中です」
「放送に移った場所や服装からは?」
「場所を特定できるモノはうつっていません。
どこかの室内としか・・・
音声も切られているようで、映像のみからだと特定は難しいです」
ここまで無力とは・・・
時間をかければ特定する事はできるだろうが・・・
今は一刻もあらそうのだ。
それでは遅いのだ。
なぜなら・・・
生放送内では、明らかに大きなナイフが映し出されている。
そして犯人。
仮面の人物は、少女の首を切るジェスチャーを繰り返している。
このままでは・・・・
遅かれ早かれ、少女の命は尽きるだろう。
「少女の身元はまだ分からないか?」
「はい。放送を見た視聴者から、候補の名前はあがっているようです。
ですが、出た名前が多すぎて、どれが正しい情報なのか分かりません。
今、一人一人確認しているところです」
時間との勝負だというのに。
誰もが見れる場所に放送が投降されている故。
そのため市民から集まる情報が多すぎるのだ。
分析に時間がかかりすぎる。
ドカンッ
十勝警部補は、抑え切れない想いから。
机を激しく叩く。
そうしながらも、歯軋りをした。
ここまで犯行を見ながら。
何も出来ないとは・・・
ネット時代に対応できない。
自分、警察能力の非力さに痛みを感じていた。