実戦剣術2
土方が公園の自販機前にさしかかったところ。
俺は後ろから土方に襲い掛かった。
躊躇なく竹刀を振るう。
狙うは奴の右手。
右手の手首に打ち込み、自転車ロックの鍵を落とさせる。
バシュ
俺の竹刀が土方の右手首を捕らえたと思ったが。
バチンッ
土方に竹刀で受け止められる
彼は身を反転し、竹刀で俺の斬撃を受け止めたのだ。
「くっ」
思わず声が漏れる。
土方はにやりと笑う。
「良い攻撃だったな。だが俺様には通じない。俺様はこういうのには慣れてるんからな」
自販機の前で俺と土方は竹刀を向け合う。
自販機の光が俺たちを照らす。
「土方、いいから鍵をよこせ。それで終わりだ。勝負ならまた今度受ける」
「あーん。俺様は今戦いたいのよー。今すぐにな」
「なんでそんなに戦いたい?」
「理由?そんなもんねーよ。戦いたい時に戦うのみ」
ダメだ。
土方の様子を見るに、話し合いでは解決できないようだ。
ならばっ。
武力で押し通すっ!
「土方、後悔するなよ、少々痛い目にあってもらおう」
「あーん、いつでもいい、早く来いよ」
俺は直ぐにでもこの場を離れ。
彩を助けに行きたいのだ。
こんなところで時間をロスしている場合ではない。
「いくぞっ!」
「こいっ!」
バシュ
俺は土方に向って突きを放つ
強烈な突きをおみまいする。
奴はギリギリの所で突きをいなす。
俺は剣筋を変更して。
土方の腕を叩こうとするが・・・かわされる。
ちっ。
相手はかなりの腕前のようだ。
このままでは長引いてしまうかもしれない。
「沖田、焦ってるのか。そんな攻め方じゃー、俺様には勝てないぜ」
「この勝負、後には出来ないのか?」
「あーん、逃げるのかー?俺様が怖くて」
「それでもいいー」
「逃がすわけねーだろ。お前は倒す。一目見たときからピンと来ていた。
戦うってなー。オラヨッー!」
バシュ
土方の斬撃を受け止める。
竹刀をぶつけあう。
くっ。
俺は早くこの場をさりたいのに。
武道場に行って彩を救いたいのに。
こんなところで時間をくっている場合ではないのに。
ならばっ。
勝負を決めるしかない。
迅速に決めるしかない。
そう思った瞬間。
その瞬間。
ドカッ
土方が腹に蹴りを入れてきた。
俺は咄嗟に反応して距離をとる。
「くっ、土方・・・」
「あーん。沖田、何か勘違いしてないか?
これは剣道じゃないぜー、蹴りもアリだろ。
俺様は実践で鍛えてきたからな。ちゃちな道場剣術とは訳が違う」
シュ
目の前に石つぶてが飛んできた。
一瞬視界が塞がれる。
それと同時に土方の斬撃がくる。
完全に視界を塞がれた。
見えない斬撃。
俺は感で竹刀を動かし防ぐ。
バチンッ
なんとか土方の竹刀をとめるが。
ボフッ
土方は肘打ちを繰り出してきた。
寸前のところでよけるが。
皮膚が接触する。
焼き焦げる。
俺は土方と距離を取る。
「沖田ー。俺様は毎日ナイフや鉄パイプと戦ってきたんだ。
道場剣術と実践剣術どちらが強いか分かるかー?」
剣術の間に繰り出される。
腹蹴り、目つぶし、肘うち。
これが実践剣術か。
勝ちにこだわったスタイルなのかもしれない。
それに土方からは。
異様に戦い慣れした気配を感じる。
「勝つのが全てなんだぜー、沖田。負ければ終わりよ。
早く実力出さないと、直ぐに終わるぜ」
ならば仕方がない。
鍵だけとって終わろうとしていたが。
軽くいなして終わろうと思っていたが。
真面目に相手をしないといけないようだ。
俺は集中し、竹刀を土方に向ける。
こちらの雰囲気が変わったの感じたのか。
土方の雰囲気も変わる。
「沖田ー。やっと本気になったか」
「土方、この一撃で決める」
俺は竹刀を相手に向け・・・
意識を集中する。
剣道の試合の様に相手に全ての意識を向ける。
本気で土方に闘志を向ける。
二人の間を夜風が吹く。
シューン
ドスッ ドスッ ドスッ
三段突きを放った。
「うっ!」
バシーンッ!
土方の竹刀が吹き飛ぶ。
俺は土方の顔の前に竹刀を向ける。
首筋に竹刀をつきつける。
「これで勝負アリだ。土方、鍵を渡せ」
「・・・・ちっ、ほらよ」
土方が諦めたような表情をし。
自転車ロックの鍵を俺に渡す。
俺は鍵を受け取り、すぐにチャリに戻る。
そして夜の公園を後にしたのだった。
勝負は俺の勝ちだった。
沖田が消えた公園。
土方が椅子に座っていた。
自販機で買ったジュースを飲んでいた。
すると。
一人の人物が後ろから現れる。
「土方君、何故手を抜いたのかな?」
土方が振り返ると。
「あーん?近藤君か。別に意味はねーよ。
沖田の三段突きがどんなものか食らってみたかったんだ」
「ほーう。それで、どうだった?」
「そこそこだな。沖田は何かに焦って、集中出来ていなかったようだから。
実力は分からん」
「そのようだね」
近藤は土方の傍にある竹刀を握り。
自販機と対峙する。
数秒後。
竹刀を思いっきり振る。
バシンッ
ドッシャーン!
するどい音がすると。
竹刀が自販機に突き刺さっていた。
破損部はビリビリと放電している。
ガタン
ゴロゴロゴロ
ガタン
ゴロゴロゴロ
自販機から大量のジュースが出てくる。
取り出し口から溢れんばかりで。
一部は地面に転がっている。
『当たり!当たり!大当たり!』
自販機は壊れたのか。
機会音を繰り返し、ピカピカ光っている。
「やっぱりもろいな。竹刀は」
「近藤君が凄いんだよ」
近藤は落ちているジュースを拾い。
蓋を開け、グビっと飲み干した。




