新学期
9月1日。
始業式。
2学期始まりの日だ。
俺が教室に入って机に座ると。
俺を待っていたのか、つい2週間まで親友だった一条が話しかけてくる。
(まぁ、奴は俺のことを今でも親友と思っているかもしれないが)
「沖田、久しぶり。夏休みの後半姿見なかったから心配したぜ。
連絡しても繋がらないし」
いつも通りの一条。
笑顔で陽気だ。
スポーツマンで陽気な彼らしい。
俺も笑顔を作る。
心の中では久しぶりに顔を見てムカついていたが。
笑顔だ。
決して、彩と一条がやっていたシーンは思い出さないようにする。
「おう。おひさ。スマホなくしちゃってたさー。焦った焦った。
つい昨日見つけたとこなんだ」
「そうか。災難だな。スマホなくすとすげーきついし」
「そうなんだよ」
俺と一条が仲良く会話していると。
一人の女子生徒がこちらを伺っている。
彩だ。
俺の彼女の彩。
いや。
俺だけではなく、一条の彼女であるかもしれない彩だ。
彩は、俺と一条が仲良く話しているのを見て安心したのか。
さささっと。
小動物の様によってくる。
彩は学校では、真面目な良い子で通っている。
見た目もいいので、中々人気がある。
因みに今日もポニーテールだ。
人気抜群の髪型で、歩くとユサユサ揺れる。
「宗司。もぅ、あたし・・・なんども連絡したんだよ~心配しちゃったぁ。
でも、顔見れて嬉しい」
彩は笑顔。
何気ない仕草で、手を俺の机の上にのせる。
本当に害のない笑顔をする。
(けっ、けがわらしい。浮気女が。机が汚れる。今すぐその手をどけろ!)
と、思ったが。
俺は笑顔のまま。
「ごめん、ごめん。スマホが見つからなくてさ、つい昨日見つけたんだ」
「・・・もぅ。家にいったんだから、顔ぐらい出して欲しかったのにぃ。窓に石も投げたんだよぉ」
「悪い悪い、ごめんよ、彩」
「そうだぜ。沖田。彼女を心配させるなよ」
「もう・・・宗司、あたし寂しかったんだからぁ」
(このクソったれ共が。笑顔でよくいうぜ。どんな神経してるんだか・・・)
あの夏の日。
お前らの交尾を見なかったら。
今でも仲良くしていたと思うと虫唾が走る。
だが、今は仲良くしておかないとな。
まだ彩とは彼女で。
一条とは親友である必要があるんだから。
「本当ごめんなー彩。一条もさ。めんご」
「いいってことよ。ならっ、お昼何かおごれよ」
「そうだよー。あたしはジュースで良いよ」
「分かった。それぐらいならいいよ」
「それと宗司?」
「何?」
「ここ、髪跳ねてるよ」
彩が俺の頭を撫でる。
今朝は鏡の前でちゃんと髪型を整えたと思ったのだけど。
学校に来る途中で乱れたのかもしれない。
キーン コーン カーン コーン。
予鈴が鳴り。
俺たちは席に着いた。
ありふれた学級風景。
だが俺の目に映る光景は・・・夏休み前とは明らかに違う。
偽善に満ちた彩と一条。
彼らがいるせいか。
ひどくこのクラスの風景が薄っぺらく感じたのだ。
虚言に満ちている。
だが反対に。
俺の心は燃えていた。
なんとしても復讐計画を完遂したかったのだ。
すぐにでも動き出したかった。