衝撃の学校2 新撰組最強の剣士
同日。
日本史の授業中。
お爺さん先生こと、江荒友三郎先生。
通称エガ爺が。
眠くなるような声で黒板を指しながら説明する。
「ええー、江戸時代末期、幕末。
この時、京都が政治の中心地となっており~。
主に京都の治安を守っていたのは、京都所司代と京都町奉行。
今で言う警察みたいなものじゃな」
俺は机につっぷしながら。
眠ってしまいそうで、頭をウトウト。
瞼が思い。
「だが、京都には全国各地から倒幕派。
江戸幕府を倒そうとする過激な剣士達が集まってきたのじゃ。
剣士達は天誅と証して、夜な夜な幕府の役人を斬りまくったのじゃ。
因みに天誅とは、天に変わって罰を下すという意味じゃ~」
「連続連夜殺人事件がおきるので。
幕府は現状の人員では治安を維持できなくなった。
そこで登場するのが、漫画やテレビで御馴染みの新撰組じゃ」
うぉっ!
ズコッー。
肘がガクっとなって、頭を机にぶつけそうになった。
危ない危ない。
「新撰組の結成は話せば長くなる。
元々は、清河という人物が、詐欺みたいな方法で江戸で人材募集したのが始まりじゃ。
将軍が京都にくるのを警護する目的で人を集めたのじゃが。
実際は天皇配下の私兵部隊を作ろうとしたのじゃ~」
ウトウト話を聞いていると。
話はグングン進んでいく。
教科書の内容を脱線しているので、あまり聞かなくても大丈夫だろう。
「新撰組の隊士には、近藤、土方を中心とした試衛館派と、芹沢を中心とする水戸派がおり~。
試衛館派の剣技は天然理心流。
芹沢は神道無念流で、現代剣道の母体にもなっておる流派じゃ~」
「新撰組のリーダーである近藤局長は、大きな度量で部下から好かれ。
逆に、サブリーダーである土方副局長は鬼軍曹の如く隊士に恐れられ。
組織のバランスを保っていたといわれている。
隊士の中には、沖田総司、斉藤一、永倉新八など名だたる剣士がおり~」
うおっ!
いきなり俺の名前が呼ばれたと思ったら。
なんだ。
あっちの沖田の話か・・・
新撰組の沖田ね。
ビックリした。
でも・・
なんだか目が覚めてしまったな。
「先生!新撰組では誰が一番強かったんですか?」
クラスメイトからあがった質問。
エガ爺は「うーん」と考え込む。
「そうじゃの~、様々な文献を見ると、正確なことは分からないのじゃ。
一般的には、沖田、斉藤、永倉の内の誰かと言われておる。
今述べた3人の他にも、撃剣師範が4人おるからのう。
実際に戦った結果があるわけではないので、その質問に答えはないのじゃ」
「そうなんだー」
「ふーん」
「へ~」
一部の生徒は興味深そうに聞いている。
新撰組に興味があるのかもしれない。
「先生、違います。新撰組で一番強いのは、田中寅蔵ですっ!」
教室をつらぬく声。
滅多に授業中に発言しない、図書委員の田中君だ。
彼が発言の主だった。
「撃剣師範の田中寅蔵かの?」
「はい。彼が最強です。他の6人はただの卑怯者です。
集団で一人を叩き斬るような輩です」
「確かにのう。新撰組の得意戦法は、多人数で相手を囲み、死角から攻撃する集団戦法。
必ず相手より3倍以上の人数を揃えていたといわれている。
どんな剣士でも、多人数に囲まれると手が出ないといわれているからのう。
それに、田中寅蔵の隊務記録は残っておらんから、彼は集団戦法に加わっていないかもしれぬ」
「所詮、彼らは卑怯者の集団です。武士ではありません」
田中君はきっぱりと言い放つ。
まるで見てきたかのように自信満々に話す。
彼の雰囲気に皆が飲み込まれてしまい。
なんとなく納得してしまいそうになる。
いつもの田中君とは違った。
キーン コーン カーン コーン
授業の終了チャイムがなる。
「おっと、今日はここまでじゃ」
日本史の授業は終わった。
俺は眠気の残る頭でウトウトしていた。




