公開処刑4
校舎の屋上に行くと。
彩がいた。
屋上の隅でチョコンと体育座りしていた。
給水棟の日陰で座っていた。
なんとなくここにいるだろうと思っていた。
彩は小さな頃から。
つらい事があると高い場所に行きたがるから。
俺は泣いている彩に近寄り。
優しく肩をさする。
「彩、ほら、鞄もってきたから。一緒に帰ろう」
「・・・・」
下を向きながら。
無言でこちらを見る彩。
「・・・・」
泣きながらも、俺を見ると表情を険しくする。
「きぃっ」と俺を睨む。
猫の様に。
「なんで・・・・なんで助けてくれなかったの?」
彩は鞄を受け取らず。
泣きながら俺を責める。
「あたしが悪いって分かってるよ。分かってるの。
でも、でも・・・助けてよ、あたしのことっ!
彼氏なんでしょ。あたしのこと好きなんでしょ!
それぐらいしてよっ!」
彩は叫びながら。
俺の服を掴む。
掴んでねじる。
「ねぇ、なんとかいってよっ!
あたし、とってもつらかったんだよ!
皆の前で、一人でつらかったんだから!
皆に見られて怖くてしかたなかったんだからっ!」
俺の服を両手で掴み、顔を近づけてくる彩。
泣き顔で俺を責める。
「あたしがどんなに悪くてもっ!
助けてよっ!
無条件であたしのこと守ってよっ!
優しく励まして、なぐさめてよ!
あたしは悪くない、悪いのは他の皆だってかばってよっ!」
泣き叫ぶ彩。
彼女が俺の胸を小さな手で叩く。
感情を抑え切れないのかもしれない。
「宗司なら助けてくれるって思ってたのに!
皆に私がいじめられていたら、絶対に助けてくれるって思ってたのに!
どんだけあたしが苦しかったか。
宗司なら分かってくれると思ったのに!」
ポロポロと涙を流す彩。
俺は彩の手を取る。
彼女が強く俺の服を握っているが。
その上から手を包み込む。
「彩、助けて欲しいのなら、言葉で言わないと分からないよ」
「・・・そ、そんな・・・」
「本気で助けを求めない奴は、誰も助けない。声に出さなきゃだめだ」
「・・・でも、でも・・・あたし・・・」
「ほらっ、少し落ち着くといい。涙で顔が濡れているよ」
俺が彩の頭を優しく撫で。
鞄を渡すと。
「・・・ありがとう」
彩はしゅんとして鞄を受け取るが・・・
下を向いたままだ。
顔を上げようとはしない。
ポニーテールも元気がなさそうに垂れている。
叫んで少しは楽になったのかもしれない。
「どうしたんだ?彩?」
「・・・宗司、怒ってないの?あたしのこと、怒ってないの?」
先程とは違い。
今にも消えそうな小さな声。
そんな小さな声で彩は怯えるように俺に聞く。
彩は弱っているのかもしれない。
「そりゃー怒ったよ。浮気されて怒らない奴がいないわけないだろ」
「なら・・・なんで?」
彩は・・・
俺の言葉と穏やかな声の際に驚いているようだ。
すっごく怒られると思っていたのかもしれない。
だから始めに強く出たのかもしれない。
「彩をほっておけなかったんだ。
伊達に幼馴染ってわけでもないだろ。
彩が悪い事をしても、それ以上に大切だと思ってるから」
「・・・宗司・・・・ありがと・・・・」
「いいよ、別に。幼馴染なら当然さ」
「あたしって・・・ほんとバカ」
「バカじゃないさ。それに泣きたい時は泣いていいんだよ。
辛いなら辛いっていってくれていいんだから。
彩はプライドが高いようだから。
それに、彩が浮気したのも何か理由があるんだろうし」
「・・・・宗司・・・あたし・・・ごめんなさい。自分が悪いのに・・・泣いちゃうね」
「あぁ。かまわない。泣きたいときに泣けばいい」
シクシクと泣きながら寄り添ってくる彩。
彼女を胸の中で抱きしめる。
すると、さらに声を上げて泣き出す彼女。
俺は「よしよし」と、小さな子供をあやすように。
頭をさすって彼女を落ち着かせた。
彩がこれほど弱い姿を見せるのは、初めてだった。
10分ほど彩を抱きしめた後。
彼女は泣いて落ち着きを取り戻したようだった。
「宗司。ごめんなさい。一条君とは・・・・その・・・遊びだったの」
「分かってるよ。でも、周りはそうは思わないだろうね。変な動画もあるようだし」
「・・・・うん」
「でも、これから頑張ろう。数日、数週間、数ヶ月はつらいかもしれないけど。
彩なら耐えられるよ。俺も援護するから、負けずに一緒に頑張ろう」
「・・・・・できるかな・・・あたし」
「彩ならできるさ」
「うん、あたし、頑張るね」
「俺が支えるよ。一緒に頑張ろう」
俺は彩の手を取り、立ち上がらせる。
彼女は泣きはらしてスッキリしたようだ。
「じゃあ、家に帰ろうか」
「えっ、いいの?授業は?」
「大丈夫、帰宅する事は先生に伝えてもらってるから。クラスには戻りにくいだろ」
「そうなんだ・・・・ありがと」
「まだ昼過ぎだし、久しぶりに二人で映画でも見に行くか」
「学校さぼっていいのぉ?」
「今さら映画見たぐらいで、誰も気にしないよ。俺も悪い子になるんだ」
「なら、あたしも」
「じゃあ、シン・ゴジラ見に行こう」
「えー、やだよー、ドリーが良い。お魚さん見たい」
「じゃあ、着いた時にやっていた映画にしよう」
「あたしにゆずってくれないの~?」
「ふふっ、どうかな?俺は今悪い子だからな」
「もぅ~、ドリーだといいなぁ~」
俺は彩と学校を出。
映画を見てから帰宅した。
完・・・
とはなりません。
ここからが大事です。
明日も投稿です。




