4話・首領
「よし、漁れ!」
「やった!銃だ!拳銃を見つけたぞ!弾丸も全部入ってる!」
「おおおおお!手榴弾だ!手榴弾がこんなに!」
血で湿った地面。
CBの死体で埋め尽くされた草村。
死体を漁るCB達の殆どは、犬、狼、狐、狸等のイヌ科動物。雄も雌も数はほぼ等しいだろう。
屍肉を求め、様々な生物が集まってくる。
一日蠅、欧米蟻に弾丸死出虫や鎧青虫といった昆虫類。
怪奇蝦蟇、火花山椒魚等の両生類。
飛行毒蛇、第二牙王、戦車亀、毒鱗法皇等の肉食爬虫類は己より小さな餌を狙って。
邪烏、腐食雀というような鳥類。
それらを狙う、官僚鼠や現代と変わらぬ家猫等の哺乳類。
その他、1mを超える大きさの蛞蝓や蚯蚓、全身白い魍魎蛸等も集まってくる。
実に気味が悪い。
そんな、地獄に等しいこの場所で、乱闘により全滅したCBの死体を漁っているイヌ科動物ばかりで構成されている集団があった。
その名は―
『マッド・イル・ドッグス』
軍用に作られたイヌ科動物型CBを中心とした戦闘集団である。
無論イヌ科でない動物の構成員も含まれるが、8:2の割合で圧倒的にイヌ科が多い。
ちょうど、17世紀の海でいう海賊、同時期の山でいう山賊や盗賊等に似た集団かもしれないが、そういった連中とは違った大きな違いがある。
彼らは、普段は略奪や乱闘を繰り返しているが、それと同じだけの時間をボランティア活動に当てているのだ。
これは前首領から受け継がれているルールの1つで、大抵壊れた建物の修理や大型補食動物の討伐に行くことが多い。
現首領・長月はそれが善だと考えているし、手下達もそれを認めている。
「十一班班長!ソノ虫ハ喰エッカラ籠ニ入レテオケ。
五班探索係、ヨクヤッタナ!偉イゾ。ソノ石ハ売ルトカナリ儲カル」
現在、MIDは三十分前まで戦場だった場所で食料及び物資確保活動を行っている。
今までの所、成果は次のようになっている。
火器除く武器 296
刀剣155 短剣・長柄各53 鈍器25
火器 310
拳銃108 ライフル73 爆弾62 ショットガン38 機関銃22 遠隔操作型自走砲台及びその操作機械各7
食料(加工食品のみ) 1050
スナック菓子504 甘味213 インスタント159 レトルト60 冷凍37 その他23
日用雑貨(刃物・家電除く) 2000以上
携帯式小型家電 500以上
食用生物 619
哺乳類102 鳥類50 爬虫類62 両生類31 魚類217 節足動物76 軟体動物17 環形動物64
―2時間後
「ヨシ。大体コンナモンダロウ。
OK、御前等今日ハモウ解散ナ」
「有り難う御座いました!」
構成員達が一斉に帰っていく。
「…ット、後ハ食材ヲ飯店ニ届ケルダケダナ…」
と、嬉しそうな長月。
解説しておくとしよう。一応。
長月は雌狐飯店店主、ミカヅキに好意を抱いている。
それは恋心なんて大層なもんじゃなく、職場の美人で性格の良い先輩の異性を慕う若手社員の感情と同じようなものだった。
―雌狐飯店前 長月視点―
「あら長月君。今日も採ってきてくれたの?何時も悪いわねぇ」
「イエイエ、当然デスヨ」
長月は普通に振る舞うが、心の中では凄く嬉しい。
何たって大好きなミカヅキに褒められたのだ。
それに彼女の笑顔はとても美しい。癒される。
だから大好きだった。
一通り食材を渡し終わってから、長月は静かにその場を後にした。
―マンション 704号室 死恋―
「〜♪」
自室で電脳通信遊戯を楽しんでいるこいつは死恋。
「
ほ!
は!
撃て!
よっし!
うらぁ!
でいっ!
っっおぉぉし倒した〜。
ザマ見たか狂戦士」
どうやら敵を倒したようである。
と、その時。
ピリリリリリリリ…
ピリリリリリリリ…
「あ、電話だ」
死恋の携帯電話に電話が掛かってきた。
どうやらミカヅキかららしい。
「はい、もしもし。店長?
え?長月が食材持ってきてくれたけど調理法分かんないのがあるから調べてくれって?
はい、解りました」
と、直ぐに携帯を切ってから店内に向かっていった。
こうして、雌狐飯店の1日は過ぎていく。
ラスト、雨霧と血徒の日常も書くつもりでしたが、時間の都合上削除…
とりあえず新キャラ出ました。
長月を宜しく。