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580年  作者: ジェノ
2/8

1話・3匹

―地上 19:00―

夜の街を、3つの影が走る。


「畜生!警察サツ巻いたと思ったら連中かよ!」

「猫さぁぁん…やっぱ銀行強盗なんて止めといた方が良かったんじゃないですかね?」

「あー、今後悔してももう遅いだろ。ったく、明王ゴキブリって奴はデカイ癖に脚が早いなぁ…全く持って羨ましい限りだ」


一匹目は美しい雌猫のCBで、体型からしてどんな男性でも魅了できそうだ。

二頭目は逞しい雄犬のCBで、映画等で悪漢共を蹴散らすイメージがある。

三体目は巨体の雄竜のCBで、巨体ながら眼鏡を掛けたその顔つきは博識なイメージを醸し出す。


実はこの3匹、ほんの30分前に銀行強盗を働き、警官から必死に逃げ回っていたのだ。

そして先程、猫の機転で何とか警察から逃れる事が出来たのだが、運悪く明王ゴキブリ―全長3.5m、前足は蟷螂で尻はハサミムシという人喰い大ゴキブリに追いかけられていたのだ。



と、此処で雄竜が、

「よし、お前等。

俺に任せろ!」

「は?」

「へ?」

猫と犬は一瞬疑問に思ったが、次の瞬間答えは出た。





ふわっ…





3匹は浮いていた。

そう、雄竜は西洋竜を模した姿で、背中には巨大な翼が有った。

それを広げ、雄竜は他の2匹を抱えて天高く飛び上がった。

「で…でかした死恋!」

「竜さん、凄いです!」



「よし、これで少しは何とか…なってねぇぇぇぁああ!!!」





そう、どうなる筈も無かった。

読者諸君はゴキブリが一般的に知られる昆虫の中でどれに近いかご存知だろうか?

実は、バッタやカマキリに近いのである。

故にゴキブリには立派な羽がある。

この明王ゴキブリもそれは全く同じ。

つまり、明王ゴキブリは飛んでいた。

しかも、飛行速度は死恋と呼ばれた雄竜を遥かに上回るだろう。


「し…死恋!お前という奴はぁぁぁ!」

「竜さぁぁぁぁん!!!!」



「…あー…ヤバイ…どうしよう…」

悩む死恋、と、此処で彼の脳裏にある考えが浮かぶ。


「どうすんだよオイ!この状況どうすんだよ!」

「竜さん!私はゴキブリ(あんな奴)の餌になって死ぬのは絶対に嫌ですよ!」

「解ってらぁ!


いよし…お前等、ちょいと良いか?」


「何だ?」

「何です?」


「飛べ。心配すんな、計算上は其処の池に投げ込むだけだから」

そう、死恋はこの2匹を池に投げ込む気だったのだ。

2匹は騒ぐが、死恋は無視して2匹を投げた。


「しぃぃぃぃぃれぇぇぇぇぇんんん!覚えとけよぉぉぉぉぉぁぁぁぁ!」

「りゅぅぅぅぅさぁぁぁぁぁんんん!」

2匹は遠い池へ飛んでいった。

と、明王ゴキブリは直ぐ其処まで向かって来ていた。

「おっと、コイツがまだ居たんだった…」


と、死恋は背負ったクレイモア(大剣)を手に取り、向かってくる明王ゴキブリに振り下ろす。



「SGYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!」

ズビュッ……………ベショッ!ベショッ!


明王ゴキブリは真っ二つに斬られて誰も居ない道路に落ちていった。



「ふぃ…これで何とかなったな…。

さ、あいつ等助けるか。」


と、その後池に落ちる直前に2匹は何とか助けられた。

が、死恋は怒られた。

「二度とやるな!」

「命が幾つ有っても足りませんよ!」


「…」

2匹の意見は正論なので、黙る死恋。


さて、此処で3匹について一応紹介するとしよう。


まず雌猫、血徒ことケット・アモデウス。

彼女は製造過程のミスにより、美しい雌の肉体に雄の人工知能を埋め込まれてしまった。

更にかなりの変態で、その行動は常に勝手でいい加減なことが多い。

オフィスに派遣されたが、派遣2週間後に職場の女(人間)に手を出して捨てられた。


次に雄犬、雨霧。

元々警察犬だったが、控えめで臆病な性格の為捨てられた。

ケットとは捨てられる前から交流が有ったようだ。


最後に雄竜、死恋ことシレン・ラセルティナ。

暴力団護衛用に創られたが、組が悪事を働こうとしている事に不安を抱き、自ら地上に降りた。

巨体で大食漢だが、眼鏡を掛けたその顔つきは何処か冷静さも見せており、雑学や科学系知識も豊富である。



この3匹、出会ってから3ヶ月していきなり所持金が底を尽き、ケットの提案で強制的に銀行強盗をする羽目になってしまった。



さて、金は手に入ったが行く当ての無い3匹。

そんな3匹に、未だ嘗て無いチャンスが訪れる。



「んー?何だあれ?」

血徒は何かを見つけた。


「どうしたんですか猫さん?」

「いやな、何かさ、店…っぽいのを見つけたんだよ。」

「店?」

「ああ、ほら、あそこ。」


血徒が指差す方向には、白いネオンサインの看板を掲げた飯店が有った。




『雌狐飯店』




それが店の名だった。

「入ってみるか?」

「入ります?」

「入ろうか。」


と、血徒を先頭に、雨霧、死恋の順番で店に近づいていく。


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