ユリアとエーファ
ユリアとエーファは友達でした。
幼い頃からいっしょでした。
いつも仲良く遊んでいました。野を駆け回り、川で水遊びをし、家で秘密のお話をしました。
エーファはユリアに言いました。
――私、魔女なの。それでも、友達でいてくれる?
ユリアはエーファに言いました。
――ずっと友達だよ。
やがて二人は大人になりました。
ユリアは家の都合で男のような名前に変わり戦士となり、村を出て城へ。
エーファは村に残り、占い師になりました。
ある日公示人が国中に知らせを撒きました。
――魔女は危険です。魔女は人を喰います――
ユリアにはそれが嘘だとわかっていました。
エーファは一度も人間を食べたりしなかったからです。
けれども公示人の知らせは国中に広がってしまいました。
人々は魔女に怯え、公示人は不安を煽るように嘘を大きくしていきました。
そしてついに、
――エーファが村を焼いた――
そんな嘘までばら撒くようになったのです。
エーファの占いはよく当たると評判でした。それが仇となったのです。
そしてあれよあれよという間に民会で魔女狩りの行使が可決。
王はその決定を呑んで、ユリアたちスウェイデン軍ヴァルキュリア隊に命じました。
――エーファを討伐せよ。
ユリアは王に忠誠を誓った戦士です。逆らうことなどできません。
ユリアは部下を率いてエーファがいる村に向かいました。
けれども、ユリアはエーファを前にすると、剣を取ることができませんでした。
そして彼女は部下を置いてエーファを連れ去ってしまったのです。
ユリアとエーファは逃げに逃げて、遠く離れたエッゾまでやって来てしまいました。
けれどもユリアの部下たちはいずれ追いついてきます。
死ぬまでずっと逃げ続けなくてはなりません。
そこでエーファは言いました。
――わたしを倒したことにすればいいわ。わたしはここで、自らの命を絶つから。
ユリアは反対しました。
けれどもエーファの決意は固かったのです。
諦めたユリアはエッゾを離れ、部下たちにはエーファを倒したと告げました。
スウェイデンに帰ったその日、ユリアは英雄となりました。
けれども彼女の耳に入ってくるのは国民の歓喜の叫びでも、部下たちの賞賛でも、王の労いの言葉でもありませんでした。
その日一日、ユリアの頭の中には常にエーファが語りかけていました。
エーファは最期に一日だけ、幼い頃のようにユリアと秘密のお話がしたかったのです。
友達の話。
村の噂話。
恋の話。
二人の思念のやり取りは途切れることなく続きました。
でも、終わりはやって来ました。
エーファが、自ら命を絶ったのです。
そのとき、エーファの体が雪となり、世界中に降り注ぎました。
それが『真夏の雪』。
その雪を浴びた女たちは魔女となってしまいました。
ユリアは英雄から一転、『真夏の雪』を降らせた者として蔑視されるようになりました。
民会でユリアの処刑が決まるのに時間はかかりませんでした。
けれど王はそれを退け、ユリアにこう告げました。
――ユグルズよ、そなたは何も悪くはない。だがこの城に留まることを許すことはできん。許せ。
ユリアは戦士を辞めて城を出ました。
国のあちこちで魔女狩りが行われているのを見て、ユリアは思いつきました。
――そうだ、私が魔女を守ろう。
それが罪滅ぼしだと思ったのです。
ユリアは自分の考えを魔女たちに進言しました。
けれども、返ってきた答えはユリアの処刑でした。
ユリアは魔女たちの望みを受け入れ、火あぶりにされて死にました。




