薄くなった一流の血
「この大馬鹿者! 詠治に当たるところだったじゃないの!」
ナズナは攻撃を放った魔導士を叱責していた。彼女に怒鳴られている魔導士は、ただひたすらに頭を下げてナズナに許しを請う。
宮上家は一流の魔女の血、という認識を改めなければいけないと、ナズナは内心で思わずにはいられなかった。
『真夏の雪』から三百年、あの雪を浴びて魔女になったのが、文字通り女ばかりだったから、子を生むたびにその血の濃度を薄くさせ続けてきた。それでも宮上家は血の維持のために魔女の血が濃い家系としか結びつきを許さなかった。
――でも、この程度にまで落ちちゃったかぁ。
この魔導士は宮上家の者ではないにしても、宮上氏が認めた一流の魔女の血だという。だとするなら、宮上家の血とやらも、そう大したものではないと考えてしまうのは無理もない。
先ほどの魔法の威力自体には文句はない。一瞬にして焼き尽くす閃光を絞り込み対象を狙う。腕に覚えがあり、魔女の血が濃くなければできない芸当だ。証拠隠滅の手間を省くことも怠っていない。
ただ、狙いを外すなど論外だ。離れた距離からの砲撃とはいえ、遠眼術をかけているのだから、当てて当たり前なのだ。ナズナの感覚としては。
魔導士を叱ることに疲れを感じ、ナズナは言葉を切っておもむろに水晶玉を取り出した。彼女が手にした途端、水晶玉は詠唱なしに反応を示す。
「レキ、宮上」
ナズナがそう呼びかけると、三秒ほどの間を取ってレキと宮上の姿が浮かび上がった。
『報告を聞きましょう』
レキが呼びかけに答えた。
「……本物だ。あの娘は本物の、魔女殺しのユグルズだ」
そう告げるナズナの声は、もう詠治やユリアと戯れる無邪気さなど欠片もなかった。やっと獲物を見つけた狩人のように不敵な笑みを浮かべ、殺意をみなぎらせる。
――ユグルズ、やっとこの手であんたを殺せる。




