表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/44

赤い瞳の先には

 詠治の住むアパートから五百メートルほど離れた雑居ビルの屋上で、ナズナは水晶玉を左手に掲げていた。水晶玉はぼんやりと燐光のような明かりを帯び、レキ・アースガルと宮上氏の姿を浮かべている。

 ナズナの後ろには二人の魔導士の男が付きしたがっている。二人とも闇に溶け込むように黒いダークスーツを身にまとい、シャツとネクタイまでもが黒い。唇を引き結び、ナズナたちが交わすやり取りを無言で見守っている。

 ナズナが眉をひそめ、水晶玉に浮かぶレキと宮上氏に話す。

「どうにも判断がつかないなぁ。あの娘。只者ではないような気もするけど」

『と、言うと?』

 宮上氏が訊ねた。

「宮上が派遣したこの二人の気配には気付いてたみたいなんだよ、あの娘。食事中も食べ物に夢中なようで目は周囲の気配を探ってたし。何者かまではもちろん判断つかなかっただろうけど、コイツらの存在は認識していたと思う」

 そう言うと、ナズナは背後の二人をちらりと見やった。宮上氏がナズナだけではと寄こしてきた魔導士たち。その実力は折り紙つきである。相手に気付かれるようなミスをやるような者たちではない。

 ただもし、相手がかの魔女殺しのユグルズなら話は別だが。

『なるほど。で、君はどうしたい』

「直接撃って確かめる。それしかないね」

『それはちょっと、危険ではないかね……』

 宮上氏が苦言を呈した。『もしユグルズではなくて一般人だったらどうする。それで死んでしまったりしたらなおさらだ』

「死なないようにやりゃあいいんだよ。それに……」

 そこで言葉を濁し、ナズナは考えを搾り出すようにつぶやいた。「あの娘は、死なない。そんな気がする」

『やって頂きましょう』

 議論を前に進めたのはレキだった。『貴女がそう仰るのなら、きっと大丈夫でしょう』

『レキ・アースガルッ、よろしいので?』

 宮上氏の不安げな声に、レキは余裕を滲ませて答える。『大丈夫です。もし万一のことがあったとしても、私どもで何事もなかったことにしてしまえばいいのですから。アースガルズには、その力があります』

「ご心配どーも。さっすがアースガルズの坊ちゃんだね。けどその心配は杞憂に終わらせてやるよ」

『そう願っております。それでは、吉報をお待ちしておりますよ』

 レキはそう言い残し、水晶玉から姿を消した。宮上氏も後に続くようにフェードアウトしていく。

「まったく、お偉いさんの雇われ魔女は相変わらず面倒臭いなー。さて、と」

 ナズナは振り向き、二人の魔導士を見やった。二人とも無表情に風に吹かれている。「どっちでもいいけど……じゃあ、あんた」

「はっ」

 指名された魔導士が慇懃に礼をした。

「あの女に一発撃ち込んでみせて」

 ナズナは人差し指である方向を示した。そこには詠治のアパートがあり、今まさに詠治とユリアがドアを開けて出てきたところだった。

 五百メートル先など本来は見えないが、ナズナたちは自らの瞳に遠眼術えんがんじゅつをかけているため、手に取るようにそんな遠方の様子を探ることができる。三人とも瞳を赤く発光させ、魔法がかかっていることを示している。

「全力でね」

 ナズナは不敵な笑みを浮かべ、付け加えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ