表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17

第十二話 プロローグ

どうも、パオパオです。


タイトルは直訳で「発端」とか、そんな感じ。

異常に短いですが、導入なので勘弁願います。

まあ、今回から無理にでも話進めようかな、と。

受験に向けて、書く時間も削っていかないといけませんし……。


 時はなだらかに、しかし確実に過ぎ去っていく。

 何でもない日々。

 時折現れる侵入者を撃滅し、日々の糧を求めて森を徘徊し、昆虫で遊び、耳の長い童女と触れ合う。

 そんな、今までと変わらない日常。


 依然として空は飛べていない。

 どこまでも装飾の域を越えない一対の翼は、いつしか邪魔にしか思わなくなっていた。

 翼があるせいで仰向けで寝られず、頻繁に手入れを必要とし、弱点を増やしてしまっている。

 日常的な不満が積もりに積もって、本気で鬱陶しくしか思わなくなっている。

 とは言え思考と感情は別物らしく、やはり折ってしまおうと思うと、途端に失い難い物に感じてしまうのだが。


 豚人(オーク)達との関係には、何も変化がない。

 相変わらず俺を弱くしたいらしく、渡される食事は一日に林檎二つになった。

 どう考えても嫌がらせでしかない同族の行為に腹が立つが、同時に仕方ないかとも思う。

 最近、見回りに出向く豚人(オーク)が目に見えて減ってきている。

 それは即ち、戦死した豚人(オーク)の数が加速的に増えている事を示している。

 そもそも、必要最低限の繁殖行為すらエルフの統制下にある状況だ。

 厳しい条件での戦闘を強いられ、死亡する確率は高まらざるを得ないだろう。


 それ以外の変化は、あるようでない。

 強いて言うのならば、童女が俺の前で猫被りを止めたくらいだろうか。

 元々それ程演じていた訳でもないのだが、虫の玩具で遊んでいた童女の姿を見て以来、彼女がか弱さを見せる事はなくなった。

 今まで以上に振り回され、翼を愛でられ、肉体を弄ばれている。

 また、あの光景程の残虐さは流石に自重しているらしいが、それでも嬉々として虫を解体したりする姿には違和感が拭えない。

 まあ、ドジなのは根っかららしく、急に走り出した時などはよく地面を転がっている。

 ……考え直してみれば、猫を被っていた訳でもなく、人に知られたくない趣味を持っていただけのようにも思えてくる。

 その考えは、強ち間違っていないように思えた。


 ――そんな日々が薄氷の如く、脆く儚いものなのだ、と。

 決定的な破綻を迎えるまで、結局俺は知る事は出来なかった。

 何も変わらない日々が、緩慢に続いていくのだと、根拠もなく信じ込んでいた。


 どこか、驕っていたのだろう。

 おかしな機能を付属していようと、比肩する者が居ない程の強靱な肉体を持っている事に。

 自分ならば何だって出来る。そう、言葉にはしなくとも体現してしまっていた。


 同族とは険悪な関係を続けて。

 言葉の一つも覚えようとはせずに。

 最低限に交流するのは、遊びに来た童女を迎えるのみ。

 そんな一匹狼――言い換えれば協調性のない木偶(でく)の棒が、一体何を成し遂げていただろうか。

 求められた力を提供するだけの、薄っぺらい関係。

 それが齎した破滅は、深く、大きい。


 もしも。

 もしも、何か一つでも違っていれば、決定的な破滅は避けられたかもしれない。

 後から思えばそれは意味のない仮定でしかないが、けれど、どうしても悔やんでしまう。

 何か一つでも、俺が生きる努力をしていたのなら、結末は変えられた筈なのだ。



 そして悲劇の序曲(プロローグ)は、何の前触れもなく奏でられる。

 俺の知らない所で、俺の関与出来ないままに。



 飼われた豚に守られた森の――エルフの領域の衰亡は、ここより始まる。

読んでくれてありがとうございました。

意見、評価、感想、指摘などを頂けると嬉しく思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ