第十二話 プロローグ
どうも、パオパオです。
タイトルは直訳で「発端」とか、そんな感じ。
異常に短いですが、導入なので勘弁願います。
まあ、今回から無理にでも話進めようかな、と。
受験に向けて、書く時間も削っていかないといけませんし……。
時はなだらかに、しかし確実に過ぎ去っていく。
何でもない日々。
時折現れる侵入者を撃滅し、日々の糧を求めて森を徘徊し、昆虫で遊び、耳の長い童女と触れ合う。
そんな、今までと変わらない日常。
依然として空は飛べていない。
どこまでも装飾の域を越えない一対の翼は、いつしか邪魔にしか思わなくなっていた。
翼があるせいで仰向けで寝られず、頻繁に手入れを必要とし、弱点を増やしてしまっている。
日常的な不満が積もりに積もって、本気で鬱陶しくしか思わなくなっている。
とは言え思考と感情は別物らしく、やはり折ってしまおうと思うと、途端に失い難い物に感じてしまうのだが。
豚人達との関係には、何も変化がない。
相変わらず俺を弱くしたいらしく、渡される食事は一日に林檎二つになった。
どう考えても嫌がらせでしかない同族の行為に腹が立つが、同時に仕方ないかとも思う。
最近、見回りに出向く豚人が目に見えて減ってきている。
それは即ち、戦死した豚人の数が加速的に増えている事を示している。
そもそも、必要最低限の繁殖行為すらエルフの統制下にある状況だ。
厳しい条件での戦闘を強いられ、死亡する確率は高まらざるを得ないだろう。
それ以外の変化は、あるようでない。
強いて言うのならば、童女が俺の前で猫被りを止めたくらいだろうか。
元々それ程演じていた訳でもないのだが、虫の玩具で遊んでいた童女の姿を見て以来、彼女がか弱さを見せる事はなくなった。
今まで以上に振り回され、翼を愛でられ、肉体を弄ばれている。
また、あの光景程の残虐さは流石に自重しているらしいが、それでも嬉々として虫を解体したりする姿には違和感が拭えない。
まあ、ドジなのは根っかららしく、急に走り出した時などはよく地面を転がっている。
……考え直してみれば、猫を被っていた訳でもなく、人に知られたくない趣味を持っていただけのようにも思えてくる。
その考えは、強ち間違っていないように思えた。
――そんな日々が薄氷の如く、脆く儚いものなのだ、と。
決定的な破綻を迎えるまで、結局俺は知る事は出来なかった。
何も変わらない日々が、緩慢に続いていくのだと、根拠もなく信じ込んでいた。
どこか、驕っていたのだろう。
おかしな機能を付属していようと、比肩する者が居ない程の強靱な肉体を持っている事に。
自分ならば何だって出来る。そう、言葉にはしなくとも体現してしまっていた。
同族とは険悪な関係を続けて。
言葉の一つも覚えようとはせずに。
最低限に交流するのは、遊びに来た童女を迎えるのみ。
そんな一匹狼――言い換えれば協調性のない木偶の棒が、一体何を成し遂げていただろうか。
求められた力を提供するだけの、薄っぺらい関係。
それが齎した破滅は、深く、大きい。
もしも。
もしも、何か一つでも違っていれば、決定的な破滅は避けられたかもしれない。
後から思えばそれは意味のない仮定でしかないが、けれど、どうしても悔やんでしまう。
何か一つでも、俺が生きる努力をしていたのなら、結末は変えられた筈なのだ。
そして悲劇の序曲は、何の前触れもなく奏でられる。
俺の知らない所で、俺の関与出来ないままに。
飼われた豚に守られた森の――エルフの領域の衰亡は、ここより始まる。
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