地球と月
太陽によって美しく、神々しく輝く[月]
そんな[月]に恋をしてしまった[地球]
これはそんな二つの惑星の話。
「よっ、月」
「なんの用?」
月は自分を呼ぶ地球を振り返らずに問う。
「デートしない?」
「嫌よ。絶対に。」
「そんな即答、ヒドいなぁ。」
地球はそんな風に言いながらいつものこと、と諦めていた。そして、いつもと同じ様に続ける。
「太陽と扱い違いすぎね?」
「当たり前でしょ。あんたと太陽さん、比べることすら間違ってるもの。」
いつものこと、だけどこの言葉は、いつも、地球の心を傷つける。
「はい。はい。だけどこっちくらい見て喋れよ。な?きっと太陽はそんな礼儀知らず嫌いだぜ?」その言葉に月はピクッと反応し、渋々といった感じで振り向く。
「・・・これでいいでしょ?まったく・・・私はこれから用事があるの。だからさっさと話を終わらせて。いいわね?」
きっと太陽に会いに行くんだろうな。と、地球は考える。
「そっか。どこ行くんだ?着いてこうか?」
「結構。あなたが嫌いな太陽さんの所だから。」
地球の考えは当たっていた。
「確かに俺は太陽嫌いだけど、そんな嫌みたらしく言わなくてもいいじゃんか。」
「あんたに気を遣うなんて面倒くさい。するわけないわよ。」
「月は本当に俺が嫌いで、太陽が好きだよな。」
「五月蝿い。」月は赤くなっている。直球過ぎる言葉に恥ずかしがっている。
「本当、好きなんだな。」
「・・・・」
「俺の方がおまえを好きなのにな。おまえは俺を見てくれない。それどころか、どんどん離れていく。」
「・・・・」
「何か言ってくれよ。お願いだから。」
自傷気味に笑いながら地球は言う。
「・・・離れるのは私の勝手じゃない。」
「わかってるよ。そんなことは。」
「私が好きなのは太陽さんであって、あんたじゃないんだから。」
「わかってるってば・・・」
自分で墓穴を掘っことを地球は後悔していた。
「でも・・・・太陽が見てるのは俺だぜ?」
「知ってるわよ。私は太陽さんしか見てないんだから。」地球はわざと意地悪いことを言う。予想通り月の顔は陰る。
そんな月をよそに地球は語り始める。
「ずっと思ってるんだけど・・・・」
「なに?」
「なんで、こんな辛いことやってるんだろうな。俺達。」
地球は月に問う。
「えっ?」
月はわけがわからないというように地球を見た。
そんな月をよそに地球は語り始める。
「太陽は俺達の気持ちどころか、自分の気持ちすら気付いてない。だから、俺達はこんな状態なんだよ。」
「・・・・うん。」
「あいつの気持ちを知ってるから、おまえは想いを伝えない。」
「・・・・うん。」
月の陰はますます濃くなる。
「俺ははっきり想いを伝えてるけど、拒絶されてる。太陽になにも言わないのはおまえが悲しむから。・・・・この関係を壊せない。」月は完全に俯いている。が、ここまで言ってしまったからには最後まで言うしか道はない。
「辛いよなぁ。」
その言葉に月は顔を上げた。その顔は怒りとも悲しみとも言い難い顔だった。
「・・・なんで、そう言うこと言うかな。そんな分かり切ったこと。今更、確認しなくていいじゃない。」
そう言う月に地球は少し真面目な顔で答える。
「確認したら、そろそろ諦めてくれるかな、って思ってな。」
「最低・・・・諦められるわけないでしょ。あんたこそ諦めて。」
月にキッと睨まれるが、全く怯まない。
「月が無理なら俺だって無理だよ。残念ながら。」
地球は首を横に振り、そう返した。
「あっそ・・・・・大嫌い。」月は心から、その言葉を吐いた。
「悲しいなぁ。」
「私には関係ないわ。」
「はい。はい。」
「私はもう行くから。」
月は走り出す。その後ろ姿を見送りながら、何故こんな話をしたのかと地球は考えていた。