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6.ホスト

「兄貴の思い付く職業ってそれだけかいな。」

馬鹿にされ、苛ついたは苛ついたが、本当に皆目検討がつかない。


「いいよ、教えてやんよ。耳。」


俺は素直に耳をカウンター席につきだす。

光は周りの客には聞こえないように俺の耳を指の短い手のひらで包みこみ、囁いた。


「ホ・ス・ト。なぁ??びっくりしたやろ」

光はほくそ笑んだ。


しかし俺は一瞬頭の中が空っぽになった。そして数秒して、いろんな感情がダムでせき止められた大量の水のように、ものすごい勢いで小さな「口」という穴に向かって一心不乱に流れ出す。


「ホスト…??!!!!」


結局それが一番初めに口から吐き出された。大声で。

また店内が水を打ったように静かになる。

恥ずかしくなり、平静を装おっているとやがておっさんの釣り話が静けさを破り、いつもの喫茶店に戻った。


「馬鹿、兄貴声でかいねん。」

一応そうは言うものの、光は鼻を膨らませ、早く誰かに話したい、という思いが丸見えだった。

こいつは喜びも不満も、全て顔に出る。


「いや…なんで??お袋と親父には??」

やっと俺は落ち着いて自分に浮かんだ疑問を整理することができた。


「あんな、俺この前高校時代の先輩に会ったん。拓海先輩て言うんやけど。」


そういえば何か一度聞いたことがある気がする。

確か何回も万引きで捕まっていて、光の本当の兄貴みたいな奴だったか。


「俺が金に困っとる言うたら先輩も働いとる高級ホストクラブ紹介してもろてん。ええやろ??」


光はさも得意げに親指を立てた。


「先輩の紹介やからいじめられることもないし、犯罪ちゃうし、かわいい女の子喜ばしてお金貰えるなんて俺の天職や。」


光はまた無意識にタバコをポケットから取り出そうとする。


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