Jet-black Juliette 19
Base of the Exceptional Terrorist which is Adversary of the world.
すなわち『BETA』。
無理やりに訳せば『世界の敵である優れたテロリストの根城』となるだろうか。
言われたところで『特別に優れた』など片腹痛い。『利己的な』がよいところだ。
セカンドエネミー『バイゼルバンクス(B.B.)』の立ち上げた、この世界の敵専用のコミュニティスペースは『ベータ・ネット』と呼ばれていた。
ジャンジャックをはじめて見かけたのは俺が『ベータ・ネット』に誘われた日から四日目のことだっただろうか。
金髪の美男子を模す仮想体は『月の支配者』ことコメットクールー(C.C.)のものである。その足元にへばりつく軟体。俺は初めそれを一個の人格として認識しなかった。
「CC%94%fc%82%b5%82%a2」(コメットクールー。美しい)
「ヘドロが喋った? いや、もしかしてそれは誰かのアバターなのか」
「これはジャンジャックという物体だ。相手にしなくていいよ」
アバターはその名の通り仮想の身体であるので、名状しがたきその軟体をその仮想の身体に選んだとしてもおかしい話ではない。
「なんだか明滅しているんだが」
「%82%e0%82%c1%82%c6%82%d3%82%f1%82%c5」(もっと。踏んで)
「喜んでいるんだよ。ン~、本当に気持ちが悪いねぇ」
「……そうなのか。ジャンジャック、貴方の発見した中大王シリーズのセキュリティホールのおかげで、今では一般人レベルでも人工衛星を自由に操作してサテライト・ビューを楽しめるようになった。俺も結構遊ばせてもらっているので、是非お会いしたいと思っていた。感謝的な意味で」
「……%82%bf%82%aa%82%a4」(……違う)
%82%bf%82%aa%82%a4――違う、か。この軟体はなんで通常会話を暗号化して話しているんだ。面倒過ぎる。
「何が違うんだ?」
「……」
俺の問いかけを無視して、コメットクールーの足の裏に戯れるジャンジャック。いやいや。
「あれか、サリエストッド(T.T.)と同じで会話できない系の人か」
『エネミーズ20』サリエストッドはアジアンテイストな石仏アバターの持ち主であり、少し前にかの『フォートノックス・ブレイク事件』を引き起こした重犯罪者である。サイバーテロというのは基本セキュリティの弱いところを狙って攻める犯罪なわけだが、サリエストッドはそうではなく、世界最高のセキュリティに挑戦し見事突破してのけた。俺の『COINサーバーハッキング事件』も方向性としてはサリエストッドのそれと近いものであったため、俺はややの親近感すらを持ってその石仏に話しかけた。
そしてそのまま三分が経過し、俺は彼または彼女に対する一切のコンタクトを諦めた。
「アレは正真正銘の会話不能。コレの場合は君と会話する気がない、だねぇ」
「俺とは話す価値はないということか。それは残念だ」
「ン~、キミがそうであるかぎりね」
「俺の態度が生意気で気に入らないということか? 俺としては十分な敬意を持って接しているつもりなんだがな」
「それだからだろうねぇ。アハハハ」
ジャンジャックとは別の意味で解読できないコメットクールーの反応に、俺としては頭の上に疑問符のエモーティコンを浮かべるしかなかった。
◇◇◇
今その名状しがたいジャンジャックの中身が、地面へと落ちてゆく。
白と青と緑の源素を計十二個つなげた源素図形は硬質な金属片を生み出し、それをマシンガンの如き勢いで発射する魔法だった。
あの状態のジャンジャックが使おうとした魔法なのだから、おそらく遠距離かつ攻撃に属した魔法であろうことは想定していたが、ここまで殺傷力の高いものだったとは。
なんだかわからないまま発動させたので、命中に関する制御はないに等しいものだったが、次に使うことがあれば十数人程度の騎士隊ならば長槍の届く距離に近づけさせることなく瞬時に掃討できるだろう。人間一人が対象であれば余裕でミンチだ。
魔法でここまでできてしまう。この世界で銃の技術が発展していない理由がよく判然るな。
鋭利な先端を持つこの魔法の破片弾が身体にあたれば、即死しないにしても死ぬほど痛い。俺であればその痛みだけで死ねる。
だというのにそれを受けてなお、あの表情を見せるジャンジャック。理解できない。
もしや、まだこの上の奥の手があるというのか? それとも――
なんにせよ確認せざるを得まい。あまり近づきたくはないが、このまま放置するわけにもいかない。
「ちょ、ちょっと待てよ! アタシも行く!」
ジャンジャックの落下地点へと足を進める俺に駄犬が慌てたように付いてくる。
追い払っても無駄だろうから制止はしないが、念のためいくつかの源素図形は作っておこうか。
緑の絨毯の上に仰向けに倒れているジャンジャック。ここまで近づいてもジャンジャックの従源素に動きはなく、ジャンジャック自身が立ち上がる気配も見せない。死んでいるのかとも思ったが、わずかに胸部は上下しており、かろうじて生命はつなぎとめていることがわかった。
もちろんそれすらもフェイクである可能性がある。更に注意深く近寄っていく。が、その警戒は思いのほか早く解除された。
――ざっくりと切り裂かれた腹部の大きな傷跡……俺に医学の心得がなくとも、色を失い青白くなった肌の色と腹部の傷跡から溢れ出る液体でずぶと濡れた黒衣を見れば、これ以上何ができようはずもないと判然ったからだ。
ジャンジャックの黒の頭巾は解け、美しく艶やかな黒髪がこぼれ落ちていた。
黒曜石の瞳が俺を見る。そこに俺に対する憎悪はなく、薄い微笑みだけがあった。
「生きてんのか……」
「そのようだな。その傷で、しかもあの高さから落下して生きているとか忍者すごすぎだろう」
「かっか……追い詰められたとはいえ、使い慣れぬものを奥の手とするなどプロ失格にござったな……否、本気の拙者を退けた貴殿こそまさに……かはっ」
もはや、この異世界の言語を使う余裕もないのだろう。ジャンジャックの紡ぐ言葉は日本語に戻っていた。
吐血するジャンジャック。ビクリと身を震わせたパレイドパグが俺のシャツの裾をぎゅっと握ってくる。
「苦しいなら別に喋らなくていいぞ。というか、その状態でまだ笑顔を見せるお前の精神構造が謎すぎて、俺にはお前と交わせる言葉がない」
どちらかといえば皮肉に分類される俺の軽口に、ジャンジャックが少し驚いたような反応を見せた。
「笑顔……拙者は今笑うてござるのか。相手の警戒心を反らせる笑顔の作り方は忍びの技の一つとして習得してござるが今はその余裕もなし……であらば、拙者は本当に笑ってござるのであろうなあ。これぞ、本懐にござる」
死の前にしたジャンジャックがいう本懐という言葉の意味。自らの願い。本来の希望。
「まさか……いやそうなのか。お前の望みは――そうか、それでコメットクールーなのか」
閃光のようなひらめきが俺の脳内に走り、やっと全てが腑に落ちる。
あの時コメットクールーの見せた反応はずっと俺の中でひっかかっていたのだ。
「あのよ、ワーズワード。コイツ、この傷じゃもうなんも出来ねぇだろ。助けてやったほうがいいんじゃないのか?」
さっきまで敵対していた相手だというのに、そんなことを言い出すパレイドパグ。
いや、例えサイバーテロリストであろうと流血を伴った現実の死を目前にしては、それも当然の反応か。
しかしそれは――
俺がそれにどう答えたものかやや迷っている間に、ジャンジャックが先に答えた。
「無用にござる」
「無用……要らないッて言ったのか? フザけんな! そのままじゃ、テメー死んじまうだろうが!」
パレイドパグも日本語を理解できないわけではない。他の言語に比べて、やや難解といったレベルだろう。なんだかんだでジャンジャックの身を案じて喚き立てる駄犬のキンキン声は、聞いていて気分の悪くなるものではなかった。
「ルーキー、お前もなんか言えよ! あるんだろ、助ける魔法が!」
なんでそこまで必死な表情を見せるのか、そんな泣きそうな表情は孤絶主義者失格であろう。
いや、もしそうであるなら失格したほうが良いのだ。
パレイドパグ――ブリュンヒルデという本当の名を持つ少女は未だ十五歳、まだ十分にやり直しがきく年齢であるのだから。
俺は駄犬の言葉を視線に変えて、そのままジャンジャックに受け流した。
同じ日本人である俺とジャンジャックであれば、その視線の動きだけで十分に意図が伝わる。
ジャンジャックが一瞬困ったような表情を見せ、そして空を見上げたまま、再び口を開いた。
「パレイドパグ……『自由』と意味を反対にする言葉はなんでござろうな」
唐突な問いだった。
「……そりゃ、『不自由』とかじゃねーの。そんなの今どうでも」
「聞くでござる。『自由』の対義語は『規律』。拙者にとって、自由とは規律の軽視と同義でござる。規律をなくし弛緩した世界になんの美しさがござろう。自由とは魂の腐敗促進剤。そうではござらんか」
抑揚もなく、淡々と紡がれる現代に生き残った忍者の言葉。
「拙者は忍びである自分を好いてござる。自由のない規律しかない生き方。厳しい修行も忍耐のみの日々の苦痛も、全ては拙者の一部でござる。だから……拙者の自由にしてよいというのなら、拙者は忍びとして下された主命の中で――」
再びジャンジャックが微笑む。
「――忍びのままで散りたい」
パレイドパグは言葉を発することもできず、ただ息を呑む。
それはジャンジャックの壮絶な願い。
彼女は、忍びである自分のままで最期を迎えられる、そんな死地を求めていたのだ。
たしかに忍者などとうに滅んでいるべき存在だ。科学万能、自由主義全盛のこの現代まで生き残っていた事自体が奇跡だ。
自由は素晴らしいという絶対の通念。しかし、なにごとにも限度というものがある。世界は自由だといいながら、その実ジャンジャックのような存在までは許容できない。忍者であることを貫き通す限り、ジャンジャックは『世界の敵』にしかなれなかった。
パレイドパグのように、俺のように、『世界の敵』であることを楽しむことができたなら、そんな結論には至らなかっただろうが、その点でもジャンジャックはまっすぐすぎた。
それに『与えられた任務の中で忍びとして死ぬ』というジャンジャックの理想。理想はそうであっても、彼女に向かい『死ね』と命令できる者は少ない。
それこそ現代人の中に見つけることはできないだろう。
ジャンジャックが俺に言った『違う』という言葉の意味がまさにそれだ。相手に敬意を払うような人間をジャンジャックは求めていなかった。
ジャンジャックが欲したのは、俺の在り方とは対極に位置する人物。
ジャンジャックはそれを『ベータ・ネット』で見つけた。巡りあうことができた――彼女に厳然と死の命令を下せる絶対のご主人様に。
「……未来のないコメットクールーと死を望むジャンジャック。それがお前たちを結ぶものか」
「ちょっと待て。コイツの『死を望む』ってのはわかるけど、コメットクールーの『未来のない』ってのはなんだよ」
「ああ、お前はコメットクールーのことをしらないんだな。ここまでの敵対行為を見せられて黙っておいてやる義理もないので教えてやろう。ヤツの中身は月面基地にいる。たった一人の月の住人だ。有り余る電力で仮想空間に入り込むことには困っていないようだが、現実の肉体はこの先誰とも言葉を交わすこともできず、誰と触れ合うことできない。だから、ヤツには未来がない」
「それ、マジかよ……」
まあびっくりするだろうな。俺もそれを知った時は驚いた。
「そしてもう一つ。コメットクールーの口癖はお前も知っているだろう」
「あの『ン~』ってやつか?」
「それもあったな。じゃなくて、そのあとに続く『美しくない』という言葉だ。両者ともその向かう先は虚無しかないが、それでいてどちらもある一点の美を目指している。CとJを結びつけているもの――それは『滅びの美学』というヤツなのではないだろうか」
「滅びの美学だァ!? それってテメェらジャパニーズ得意のハラキリの精神ってヤツかよ」
「ハラキリが得意な奴はみんな死んでいると思うが。そうではない。切腹は失敗に対する責任の取り方の一つだがジャンジャックのこれはもっと儚い。忍びとして与えられた任務の中でただ露と消える。それは『滅私』の究極形だろう」
それがジャンジャックの持つ美学。一方のコメットクールーの求めるそれはジャンジャックほどやさしくはない。
月面エネルギープラントを乗っ取った理由すら『美しくない』の一言で表現するコメットクールー。それは文字通りの意味なのだろう。地球表面上で九〇億という数的飽和状態にある人類に対して、宇宙に手を伸ばしてまでその生存を維持することは、ヤツの中にある『滅びの美学』に反するのだ。自己ではなく、全ての人類に対して美しい滅びを求めるコメットクールー。それができるだけの実力があるのだからたちが悪い。
ヤツもまた明確な『世界の敵』の一人である。
「そんな死に方、何の意味があんだ。ひとっかけらも理解できねぇ」
だが俺にはなんとなく理解できてしまう。ある意味で俺も同じであるからだ。俺の場合は、一般社会からのドロップアウトという社会的『死』があったわけだが、根本にある『自分でない選択をしてまで生きながらえたいとは思わない』という考えだけは共通している気がする。
何に対する怒りなのか。なんにしても自分のことに怒りを見せるパレイドパグを見上げ、ジャンジャックは満ち足りた笑顔をみせた。
「理解できぬ故の孤絶主義者でござろうが、それでも拙者にはこのような拙者を理解し、使うてくれる主君がいた。一人でいいのでござる。拙者にはそれで十分――」
安らかな表情のまま、ジャンジャックが呟く。小さい呟きを。
「――全ては、我が主君の心のままに」
正直に言おう。俺は今猛烈に衝撃を受けている。
シャルのこと。ニアヴのこと。商売のこと。獣人たちのこと。まあ駄犬のことも入れていい。ジャンジャックに比べれば、俺は色々なものを求めすぎているのではないか。
ジャンジャックの求める滅びの美学は、己というただ一点を突き通す生き方である。そんな生き方もある。俺には真似できない生き方だ。本当にすごいと思う。
「それが貴方か、ジャンジャック。一つ、ドMと言ったのは訂正してお詫びしておこう。貴方の精神のあり方はまさしく武士道、いや忍びであるなら忍道というべきか。今はもう失われてしまった日本人の魂の形の一つだ」
「かっか……それこそ、無用の感傷にござる。なにを言おうと拙者は一介のテロリスト、その道のプロにござれば。元より野ざらし以外はありえぬ身」
俺はジャンジャックの生き方をただ、見事だと思う。
「じゃなくて、治療は!」
ここまでの話を聞き、ジャンジャックの考えを知ってなお、駄犬は生命だけは救おうという考えを捨てていないらしい。
であるならば、俺は――
「……なんでだ。今聞いたとおり、コイツはそれを望んでいないぞ。それに元気になったら、また襲ってくるに違いない。死を恐れないプロの忍者とか、素人の操縦する神風特攻よりはるかに恐ろしいわ」
「じゃあ、逆に止めをさすってのかよ!?」
「いや、助けもしないし、トドメもささない。最終的に俺自身はこうして無事なわけだから、殺すほどの恨みもない。傷は浅くないようだが、今の状況は俺としては正当防衛。俺のことを殺すつもりでやってきたのだから、反撃されて自分が傷を負うことくらい覚悟の上だろう。その傷が元で死ぬなら勝手に死ねばいいし、運が良ければ死なないだろう。この後コイツがどうなろうと俺の知ったことじゃない。自己責任の範疇だ」
「んな……」
俺はまあ……俺として対応するだけだ。それがジャンジャックの望みでもあるような気がする。
「かっか。やはり合わぬ……拙者とワーズワードは正反対に……ござる」
「そうだな。俺とお前の王子様との相性は最悪、当然王子様派のお前とも悪くて当然だ。俺はお前の求めるご主人様にはなりえない。同じ日本出身であっても友人になれない人間というのはいるものだ。ベータ・ネットでお前に相手にしてもらえなかったのも納得できた」
「今では少し評価を変えてござるがな。……そういえば、リズロットめがこんなことをいうていたでござる……ワーズワードと拙者の関係はまるでロミオとジュリエットのようでござると」
「やめろ。シャルのことだけでも限りなくグレー評価なのに、その外見のお前を俺が愛しているように言われるのは深刻な風評被害だ。精々死んだはずの俺が生きていて、代わりにお前が死にかけているところぐらいだろ、似ているのは。だとしても黒い瞳のジュリエットなど噴飯ものだがな」
「今の話で、なんでテメェがジュリエットだよッ!?」
「然り……通常ヒロインといえば、拙者のような乙女がこなす役ではござらんか」
二人のエネミーズからフルツッコミを受けるが当然無視する。
「それだけ男前な生き方を見せつけておいて、今更ヒロインもないだろう」
「テメェの方がニンジャなんてのより、よっぽど無茶だってンだよ……」
キャンキャンとうるさい駄犬である。だが、今わの際、しばしこの時間だけは、『ベータ・ネット』の中に戻っているような気分を味わえたのではあるまいか。
「行くぞ、パレイドパグ」
「ちょ、本当にこのまま放っておくのかよ」
「いやー、なんだかんだで結構元気そうだしな。このまま放置しても死なないんじゃないかな」
「だからって……オイ、待てって!」
もはや俺はジャンジャックを見ない。俺のこの目は『次』を見なければいけないからだ。
代わりに心のなかで二人の魔人に宣言する。
アルカンエイク、それにコメットクールー……俺と遊んでくれるというなら、自分で動かず手駒を操るなんて余裕はあまり見せないほうがいいぞ。
その余裕は必ずお前たちの致命傷になる。
遊びに本気。俺は遊びにも手を抜かない性質なのだからな。
◇◇◇
俺はざっとあたりを見渡し、最新の状況を確認した。
雌雄を決した俺とジャンジャックとの戦闘は、主戦場をやや離れた場所で行われたものであり、時間も三分に満たないわずかな間の接触でしかなかった。いくつかの魔法の行使はあれど、それは極小範囲のものであり、誰の目を惹くものでもなかった。
もとより、ジャンジャックの存在はサイラス伯の鎮圧部隊にとってもイレギュラーであるのだから、注目する理由はなかったのだろう。
主戦場はレオニードと雪豹子さんの暴れるメイン戦闘区域。それも終結しつつある。
戦場から逃亡する兵士は街へ逃げ込む流れと、そのまま別の方向へ散り散りに分かれている。
残っているのはサイラス伯爵を護る近衛騎士、魔法使いの混成部隊くらいだ。彼らが動き出せばレオニードであっても劣勢に回る可能性があるが、ニアヴと飛虎が前後から威圧をかけ彼らの動きを封じてくれている。その辺りの機微はさすがである。
状況は良好。ではそろそろ仕上げといこう。
俺はポケットに入れていたソレを取り出した。それは刃の欠けた一振りのナイフ――こんな使い方は考えていなかったが、まあ状況が状況だけに面白いことになるのではなかろうか。
獣人解放を宣言する記念の狼煙がただの破壊活動だけでは面白くあるまい。
ここは一つド派手にいこうじゃないか。
ここまできてタイトルジャックするワーズワードさん、マジ鬼畜。
あ、『フォートノックス』というのはアメリカにある地名です。あんま有名じゃないですが。