Waltz with Wiseacre 07
「見つけたぞ――シャル」
「フェルナ……兄さん」
青藍色の髪。瑠璃色の瞳。
『ワーズワード魔法道具店』に現れたのは、一人の青年だった。
「兄……?」
「シャルちゃんのお兄さんなの!? ふわー、すっごい綺麗なお顔……」
ラーナの呟きは、呟きと言うには大きすぎる類のものだ。
とはいえ、そこに異論はない。何という美形だろうか。
青年は店内をぐるりと見渡したのち、俺の前へと歩み寄ると、腰から角度60度を曲げる深い一礼を示した。
「ここで妹がお世話になっているとロッシ氏に聞いて参りました。私はフェルナ・フェルニと申します」
「『ワーズワード』だ。よろしく頼む」
まず俺に挨拶に来るところは、なかなか世間慣れしていると見て良いか。
俺としても、シャルの兄だと言われれば歓迎する以外の選択肢は特に思い浮かばない。
だが、当のシャルを見てみれば、そこに兄妹の再会を喜ぶ姿は見られなかった。
これまでに見知っているシャルの性格を考えれば、すぐにでも兄の元に駆け寄っていきそうなイメージがあるのだが。
「どうした、シャル?」
「……なんでもない、です。――ごめんなさい、フェルナ兄さん。私がすぐに帰らなかったから迎えにきてくださったんですよねっ」
言葉の調子はいつも通りのはずだが、そこにあるのはぎこちない笑顔だった。
「えとですね。どうせなら、薬花の売上だけじゃなくて、もっと稼いで帰った方が村のためになると思ってですね、それでワーズワードさんのお店で働かせてもらっていて、お給料もよくって――」
言い訳でもするかのようなシャルの説明を、フェルナは一言も口を挟むことなく、聞いている。
……二人が兄妹だということに疑う余地はないのだが、いっそ他人行儀なこの会話はなんなんだ?
複雑なご家庭の事情でもあるのだろうか。
妹の話を全て聞き終わった兄は、ゆっくりと頭を振り、
「迎えに来たのは事実だが、お前が長く戻らなかったことを責めるつもりはない。むしろ、残された時間をお前が自分のために使えて、良かったと考えている」
……わからないのは、その言葉の意味だけではない。フェルナの、シャルを見るその冷徹な視線こそが、理解不能である。
しかし、シャルには、その意味が分かったようである。
「終わり……なんですね」
「昨日、使者が迎えに来た。こちらから改めて伺うと言うことで引き取ってもらったが、もう猶予はない」
使者。それに猶予がない、ねぇ。
はい、と消えてしまいそうな笑顔を浮かべて応えるシャル。
「それじゃ、仕方ないですね。……ワーズワードさん」
「なんだろう」
「兄さんが迎えにきてくれたので、私は帰らないといけません。申し訳ないですが、今日で"あるばいと"は終わりにさせてください」
「……了承した」
「本当にすいません」
60度を超えて大きく頭を下げるシャル。
俺はその姿を見止めた後、フェルナ青年に視線を向けた。
「バイト終了の件は了承した。が、それ以外の件はまた別だ。シャルの兄、フェルナといったか。そちらの事情について、俺にも判然るように説明願えるか」
さて。兄妹の話も終わったようなので、そろそろ俺も口を挟んでいこうか。
バイトの件はいい。職業選択は自由である。
だが、先ほど方針を策定したように、俺はシャルの個人的事情に干渉する気マンマンである。
自分でそうと決めたことに自重など一切しない。
たかがバイトを辞めるという話だけで、このような痛々しい姿を見せられるとあっては、なおのこと。
今、シャルの兄という想定していなかった関係者が現れたわけだが、逆に言えば、その事情をうかがい知るには絶好の機会である。
驚いたのはむしろフェルナの方だろう。
「……失礼だが、これは我々フェルニの村の問題。貴方には関係のない話です」
「それこそが認識違いだ。シャルが俺と出会っておらず、フェルナ、お前がこの店を訪れていなかったのであれば、確かに無関係だったろう。だが、現実はそうではない。お前たちは既に俺に関係してしまっている」
「なっ!?」
まさかそんな切り返しが来るとは考えていなかったのだろう。フェルナの怜悧な表情が始めて驚きに変化する。
そう、これはシャルに干渉することを決めた『俺の事情』なのだ。
「待ってください! あのっ、お気持ちは嬉しいんですけどっ」
「……」
だが、それにストップをかけたのはシャル本人だった。
……ふむ。
シャルはああ見えて、自分の中にビシリと一本頑固なものを持っている。今の状態でこれ以上押しても無駄だろう。
となればここは、日本人が生みだした偉大なる問題解決術を活用するしかないか。
「シャル」
「はい」
完全に身構えた固い声のシャル。
「バイトは今日までという話だったな」
「はい、すみません」
「いや、それはいい。だが、今晩のマーズリー伯爵家での晩餐会に招待されている件については、既に参加すると回答してしまっている。今日までということであれば、晩餐会終了をもって業務終了だ。それはいいな?」
「えっ――」
自分で出した『バイトは今日まで』の条件に抵触していない以上、シャルはこれを拒否できないだろう。
これぞ、日本流問題解決術――『問題の先送り』である。実質解決していないあたり、日本人らしくて素敵だ。
今すぐにどうにもできない問題は先に送ることで、別の方法を思いつくこともあれば、時間経過とともにうやむやにできることもある。
つまりは、一旦時間をおいて、状況をクールダウンさせようということだ。
今回の場合は、口を閉ざすシャルの心変わりを待つための先送りである。
「あの、それは――」
「かまわない、どうせ今から出ても今日中に村に着かないのだから、出発は明日朝になる。それまでの間、私は一切干渉しないので、お世話になった皆さんとのお別れを済ませるといい」
「わかりました。フェルナ兄さん……お時間を頂いてありがとうございます」
「決まりだな」
シャルが事情を話したがらなかった理由については、ある程度推測できる。
それを話すことにより、何かしら俺たちに迷惑がかかる、もしくは心配させると考えているのだろう。
だがな、シャル――
君はまだ若い。幼いと言っても良い。その人生経験はあまりに薄い。故に、今こそ学ばねばならない。
自分が本当に困ったとき。
そのときには例え他人に迷惑や負担をかけることになったとしても。
――人を頼ってよいのだと言うことを。
先ほど、これは問題の先送りだと言ったが、つまり俺はシャルに期待していのだ。
そのことをシャル自身が気付いてくれることに。
◇◇◇
何にせよ、シャルを連れ帰ろうというフェルナの案件を、今の今まで積み残していたわけである。
「どうだ、落ち着いたか」
「……はい。えへへ、恥ずかしいところを見られちゃいました」
大石橋の上。夜の冷えた空気を吸って、シャルが大きな深呼吸を一つする。
どうも俺はこの透明な水を湛える大河のことが気に入っているらしい。確かリンキス川といったか。
ここまで来れば『ワーズワード魔法道具店』はすぐそこだ。
酔い覚ましの名目で、馬車には橋の袂で待ってもらっている。
人気のない夜の橋の上。
欄干の上には携帯用【フォックスライト/狐光灯】。その明かりが、俺とシャルのドレス姿とを幻想的に浮かび上がらせている。
深呼吸を終えたシャルが、ピタリと俺に向き直る。
「私のこと――フェルニの村のこと。お話させてもらっていいでしょうか?」
「聞かせてもらおう」
ギリギリセーフと言ったところか。
期待に応えてくれて、ありがとうシャル。
「――私の住む『フェルニの村』はここから『ニアヴ治林』を越えた先にあります。私の足でも早朝に出れば夕方に着くくらいの場所で、冒険者さんなら半日もあれば到着できる距離です」
ふむ。江戸時代の旅人たちは「一日十里(40キロ)」を歩いたという。そこから類推すれば、その『フェルニの村』というのは、ここからおおよそ20~30キロ離れた位置にあると考えて良いだろう。俺の足なら三日はかかるな。
「フェルニの村は濬獣自治区の奥にあるので普通の旅人はほとんど訪れません。税を納めることで、『北の聖国』 に属する村ということになっているのですが、実際には私の父が群兜を務めていて、どこの貴族様の領地にもなっていません。貧しくて小さな村ですが、村の人たちはみんな家族同然で、本当に平和な村だったんです」
『だった』か。
つまり、ここからが本題である。
話の腰を折ることなく、続きを促す。
気合いを入れ直すように、シャルがその耳をピンと立たせる。
「――数年前の話です。『イ・ヴァンス』の聖都・アルトハイデルベルヒの王城が急襲されて、一夜のうちに陥落したという話はご存知でしょうか?」
「いや、ご存知ない話だ」
『南の法国』自体が初耳である。
軍事的なクーデターがあったということだろうか?
しかし、いきなり話が飛んだようにも聞こえるな。
「私も詳しくは知らないのですが、それ以降、法国は大きく変わってしまいました。もとは魔法研究の盛んな平和な国だったんですが、今の法国は戦争を繰り返す恐ろしい国になってしまいました」
「なるほど。その王城を陥落させた誰だかが新しい支配者になって、外交戦略を刷新したということか」
「がいこうせんりゃく?」
「いや、気にしないでくれ。それでどうなったんだ」
「……はい。そして、法国の軍は私たちの村にもやってきました」
「村が戦火に巻き込まれたということか……だが、シャルの村は聖国に属しているはずだな。聖国の軍はどうしたんだ?」
さすがに国境を越えて侵入してきた他国の軍を放置はすまいに。
「フェルニの村へは濬獣自治区を通らないといけませんから。私たちの通行をお許しくださっているニアヴ様でも、さすがに軍隊の進軍は許していません。それにどの貴族様の領地でもないので、私たちにはお縋りする先もありませんでした」
「なんだニアヴのせいか」
「いえ! 決してそんなことはないですっ!」
それは冗談だけどな。
聖国軍がフェルニの村を救いたくとも、濬獣・ニアヴの存在があるため、大規模な兵は送れない。
これは法国軍にも言えることで、フェルニの村を押さえたところで、それ以上聖国に攻め入るには、まず濬獣・ニアヴと敵対しなければならないことになる。
魔法の力だけは人間を十倍するニアヴ。似たようなのがあと11人?いるらしいので、ホームでのバトルとなれば、濬獣側に利がありそうだ。
こちらの世界の人間のニアヴに対する態度を見ても、『ルアン公』ルルシス・トリエ・ルアンの聡明さから考えても、聖国軍は……そしておそらく法国軍も、あえて濬獣と敵対する道はとらないだろう。
両軍がぶつかるとしても、それは『ニアヴ治林』を迂回した別の場所が決戦場となるはずだ。
つまり、
「どちらにしても聖国は頼れないということだな」
「はい。ですがそれでフェルニの村が襲われたというわけではないんです」
「ほう?」
「えっとですね、法国の新しい王様が、私のことを気に入ってくれたんです」
ああ、やっと核心に辿り着いたな。
「なるほど。自分がその身を献ずるかわりに村を助けると、王に約束させたわけか」
「……ワーズワードさんって本当になんでもわかるんですね」
「暴虐の王が若い娘を力ずくで奪ってゆくなど、テンプレも良いところだからな」
「"てんぷれ"ですか」
「ああ、テンプレだ。意味は知らなくていい」
「あはは。ですが、今の話はもう一年以上も前のお話でして。王様に気に入られたのはいいんですが、その時には、まだ早いといわれてしまいました」
ふむ、少女趣味の変態KINGではなかったということか。
それが唯一の慰めだな。
村のために我が身を捧げること。それはシャル自身が自分で選択したことなのだろう。
そしてそれは、美しい自己犠牲の精神にも見える。
だが、そんなことは俺が許さない。
「話してくれてありがとう、シャル。事情はわかった」
「はい」
「ではとりあえず、その新しい王様とやらに会わねばならないな。そいつは今シャルの村にいるのだろうか? それともその『アルトハイデルベルヒの王城』まで行く必要があるのだろうか」
「……えっ!?」
まるで当たり前のように。全く逡巡なく。『それ』を口にする俺をシャルが驚きの眼で見つめてくる。
それは困惑を通り越して、純粋に理解できないという視線だ。
「シャル。人間の脳は、抑圧された枠の中であっても、その枠内で自由があれば、自分は自由なのだと錯覚できるように出来ている。『井戸の蛙は海を知らない』というやつだ。
シャルは村のために、自分でその王の許へゆくことを選択したのかもしれない。
しかし、他に選択肢のない状況下での意志決定は『洗脳』という別の呼び方すらできるものだ。
本当に君が選んだ未来であれば、俺はその意志を尊重する。
だがそれは、シャル自身があらゆる未来を選択できる状態で決定する自由意志でなければならない」
「自由、意志」
「そうだ。――それにだな、シャルは俺の諦めを期待して、話してくれたのだろうが、話を聞いた俺の感想としては、さほど深刻な状況じゃないみたいだしな」
「そんなわけないじゃないですかっ! 私が行かないと、村が!」
「いや、少し言い換えれば法国軍は村を襲う対価として、シャルで手を打ったということだ。ということは、同様にシャルと等しい価値を持つ別の何かを提示すれば、十分交渉が可能だと考えられる」
「ふえぇぇぇぇぇ!?」
略奪者に対して、交渉を持ちかけるという発想がシャルにはないのだろう。
弱肉強食は動物社会の絶対律だが、言葉を持つ人間に対しては絶対ではない。
会話による交渉。思考による問題解決。それこそが動物にはない人間だけがもつ『力』なのだから。
やる前からできないと考えてしまうのは、既にして発想の欠如である。
「村に住む家族、親しい人たちの生命はシャルにとって確かに大切なものだろう。同時にその人たちにとって、君の将来は大切なものではないのか。君の犠牲の上に成り立つ生活は、彼らにとっても緩やかな監獄となる」
「…………」
「君の兄に言ったとおり、俺は君たちの事情に干渉する気マンマンだ。だが、最終的にはシャル……君の意志を尊重する。どうしても関わってくれるなと言うのなら、これ以上困らせる気はない」
シャルは賢明な娘だ。俺の言葉はきっと届いている。
「――君はどうしたい?」
「……私は」
大きな露草色の瞳が、凝と俺を見つめる。いや、その瞳は俺を通して、もっと大きなものを見つめているように見える。
シャルはその小さな身体で一生懸命考えている。
考えて考えて……今やっと本当に『自分の未来』を探している。
やりたい仕事を。なりたい自分を。ありたい姿を。
それでいい。可能性は無限だ。
そして、それに少しだけ手を貸してやることが、俺に出来るシャルへの恩返しである。
恩返しというと、まるで俺がマトモな人間であるように聞こえるな。正確には借り返しか。俺は誰かに借りがあるという状態が好きじゃないだけなのだ。
遠いどこかに合わされていた焦点が、戻ってくる。
考えすぎて知恵熱でも発したのか、その瞳が熱に潤んでいる。
「……本当にいいんですか?」
ポツリと呟く。
「本当に、頼っちゃっていいんですか?」
「もちろんだ。先に頼ったのは俺の方なのだから、これでやっと貸し借りなしの対等な関係になれるというものだ」
「そんなの全然っ。全然、釣り合いませんよ!」
「同じなんだ。シャルにとっては何でもない親切が、俺にとっては最大の感謝に相当するものであり、俺にしてみれば何でもない交渉が、シャルにとっては大きなモノに見える。そういうことでしかないんだ」
「……すごいです。そんなわけないのに、そうなのかもって、勘違いしちゃいそうです。本当にワーズワードさんは口がうまくて、すごい人です……」
喋るだけならタダだからな。そこは素直に騙されておいてくれ。
でもって、あまり見つめられると、それはそれで気恥ずかしいのでやめてもらいたい。
「なによりも有能なバイトに抜けられると店が困るのだ。いずれは正社員に、と考えているのだから、俺の提案は単純に『ワーズワード魔法道具店』の福利厚生制度の一つだと思ってくれればいい。従業員のために一肌脱ぐのは店長の役目だ」
「ぷっ、あはは、なんですかそれっ!」
「言葉のままだ。バイトを辞めるというのなら、同制度は利用できなくなるので、できればその話もなしで頼む。いや、職業選択は自由なのだが」
「あははっ、ワーズワードさんって、本当に不思議な人です」
俺からすれば、この世界の全てが不思議なんだがな。
シャルが、心を落ち着かせるようにすっと瞳を閉じた。そして再び開いたとき、そこに強い意志の輝きがあった。
……答えがでたのだろう。
真剣な眼差しで、シャルがゆっくりと口を開く。
「私、本当は法国には行きたくありません。ニアヴ様がいて、ラーナちゃんがいて。もっとずっと、ワーズワードさんのお店で働きたいです!」
――やっと、聞きたい言葉が聞けたな。
俺の行動方針をシャルの意志が承認する。
もしこの先に大きな壁が立ちはだかろうとも、承認を受けた俺に敵はない。
「As your wish, lady.」
「えと。ありがとうございます」
英語で答えたので、正確な意味は分かっていないだろう。だが、そこに絆があれば、言葉自体の意味など知らなくとも、意志を伝えてくれる。
全てを言葉にすると俺が気恥ずかしいので、それくらいは許してもらうことにする。
そこから急激に耳をピコピコさせ始めるシャル。
「でもやっぱり、ワーズワードさんのご厚意はそのまま受けちゃうには大きぎます」
「いや、だからそれはもういいと」
「いいえ、そうなんです! ……なので、私をワーズワードさんの紗群に加えてください」
「アルマ?」
「あのっ、そうすればですねっ、私もワーズワードさんのコト、素直にお頼りできてですねっ、いいと思うんですっ!」
何をテンパっているのか知らないが、矢継ぎ早にそんなことを言いつのる。
アルマ。確かどこかで聞いた単語だが……どこだったか? 封印された記憶の彼方にそんな単語があったよーななかったよーな。
まあとにかく、それでシャルが納得して俺を頼ってくれるのなら、問題は何もない。
「構わない」
「あ…………はいっ! ありがとうございます!」
ふわああと、安堵したように大きく息を吐くシャル。表情に明るさが戻ってきたな。
「ちなみに俺は詳しくないんだが、そのアルマに加えるというのは、どうすればいいんだ? 契約書でも交わすのか」
「……口で説明するのは私も恥ずかしいですので、実際にやってみていいでしょうか」
「ああ、頼む」
恥ずかしいことなの?
「で、では、ちょっと屈んでください」
「わかった」
言われるがまま、顔の高さを合わせる感じで、正面から向かい合う。
コホンと一つ咳払いをしたシャルが、すっと俺の顔へ手を伸ばす。
その手が、俺の右耳に触れる。
「ワ、ワーズワードさんも、私の耳に」
「へ?」
耳? 許可された?
お互いの耳を触りあう不思議な行為。
シャルの顔がヤバい近い。
「では、やりますね。……誓いを捧げます。私の群兜――」
二人の距離がさらに縮まる。
大きな露草色の瞳がギュムリっ!と閉じられる。
シャルさん?
えっ。
ちょ。
ちょ――っ!
これはひどいプロットですね。