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ななしのワーズワード  作者: 奈久遠
Ep.4 ワルツを君と
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Waltz with Wiseacre 05

 『マーズリー家・個室』。


 必死に食い下がる従者を部屋の外で待機させて、部屋の中には俺と『ルアン公』ルルシス・トリエ・ルアンの二人だけが残された。


「良かったのか? 俺が魔法を使えるという報告も入っていると思うのだが」

「そなたは我を害するのか?」

「いや、そんなことはしないが」

「ならば、よい」


 ……剛胆なのか信用されているのか。

 テーブルを挟んで、対面に座る。

 蝋燭の揺れる炎に照らし出されるルアン公はいっそ蠱惑的である。

 蒼炎色の髪で顔の半分が隠されている所もミステリアスさを引き立たせている要因だな。


「そなたは魔法の付与された道具を作ることができると聞いた」


 なんの駆け引きもない直接の質問。

 まぁその辺の情報は、入っていてしかるべきか。


「できるな」

「その力、我と我が国の為に使え」


 なんらの揺らぎもない命令口調。

 用件が分かりやすくて助かる。


「条件次第だな。俺に何を望む?」

「魔法の武器の作成を」

「作った武器の利用者は?」

聖国ウルターヴ軍の全兵士」

「無敵の軍を作ったとして、その力で何を行う」

「侵略による国土拡大を」


 本当にバッサリ本質のみを主張してくるな。

 やばい、俺、こいつ好きかもしれん。

 しかし、


「軍事力のみに頼った侵略は住民の猛烈な反発を生むだろう。結果支配を維持できず失敗するパターンだな」


 ルアン公の赤紫色ワインレッドの瞳に、驚きの色が混じる。


「……そなた、特異な魔法の力を持っているとは聞いたが、軍事についても語れるのか」


 人類の歴史は、戦争の歴史である。

 この世界の人間には想像もつかないだろうが、戦争の定義とその分類/分析、成功例失敗例、経済政治情報心理電子陸空海――さまざまな戦争局面における具体的謀略と戦術の解説、更にはその対抗手段カウンターチェックまでもが、戦争をキーワードにするだけで入手可能な環境というものがあるのだ。

 現実事例以外にも、人類は小説、ゲーム、ムービーとあらゆる媒体の上で仮想戦記を生みだしている。

 脳内記憶野に蓄えられたそれら膨大なサンプリングから、適合するパターンを引き出すだけで、大概の状況には転用できる。


「専門ではないがな」

「構わぬ。そなたの策を述べてみよ」


 さて、策と言われても、この国の生産力や軍事力について何の情報もないのだがな。

 そもそも彼女に俺の『お話』についてこれるだけの基本知識があるのかが問題だ。

 ……探り探りいくしかないか。


「まず『侵略』とは、それがどれだけ理不尽なものであれ、外交手段の一つであることを忘れてはならない。外交手段である以上、単純な武力行使で満足するのではなく、事前に『終了条件』を提示しておく必要がある。終了条件自体はどれだけ無理難題でもかまわない。それを飲ませる外交手段こそが侵略戦争という行為なのだから。その上でやっと、条件が受け入れない敵国にこそ非があり、故を以てその国の『人を殺す』のだという大義名分を掲げることができる」

「……」

「国土拡大を終了条件とするならば、軍事力による勝利を得た後の支配手段が重要となる。下策は『軍事力に頼った実効支配』。これは必ず反発を生み、後に続く戦乱の火種となるだろう。上策としては『宥和戦略』が挙げられる。宥和戦略は前の国より善政を引く方法だ。例えば、新しく編入された支配地で税率を引き下げるだけでよい。あとは年数をかければ、住民は勝手に宥和するだろう」

「……」

「端的に指摘するのであれば、領土支配における最大の課題は、既得権の剥奪『度合い』にある。つまり、元からその地に住んでいる住民の財産、権利をどの程度剥奪するかだ。その意味で実効支配は強奪であり、融和戦略は差し押さえだ。どちらにしても程度問題の反発がある。そこからの問題解決を考えれば、全財産を奪い遺恨無く全ての住民を殺し尽くす『焦土戦略』も上策と言える」

「……焦土戦略は上策とは思えぬ」

「瞬間的には有効だ。当然、その後非支配地での抵抗は大きくなるだろう。財政的・時間的余裕があれば宥和戦略を選択できるだろうが、戦費軽減と侵攻速度を重視するのであれば十分選択肢に入る。当然指揮官には一生消えぬ汚名を負ってもらうことになるがな」


 白起的な感じで。


 地球のように、民間人を巻き込んではいけないという国際法上の取り決めの下で行われる戦争ではとりえない策だが、この世界の文明レベルではそんな国家を超えた崇高な取り決めなどないだろうしな。焦土戦略はおすすめである。


「戦争という外交手段は、中途半端に人を殺して、領土を増やして、それで満足するようであれば、そもそも選択すべきではない。『人命の尊さを凌駕する絶対的な使命』を大義名分としてこそ、戦争行為は正当化される」


 俺の語る言葉はルアン公に少なからず衝撃を与えているようだ。


「俺を納得させるだけの絶対的な使命。どうだ、ルアン公……貴女にそれがあるか?」

「………」


 変化しない表情からは分かりにくいが、ビリビリと僅かばかり震えるその耳から、ルアン公の動揺が推し量れる。

 ……まぁ、あるって言われても困るんだがな。


 高度に文明的に発達した日本の価値観を持つ俺からすれば『人命の尊さを凌駕する絶対的な使命』など、存在しない。あったとすればそれは幻想である。

 つまり、『あらゆる戦争行為は正当化されるべきではない』というのが俺の持論だ。


 彼女がここで、そんな使命があると即答するようであれば、それが彼女の器の『底』だ。

 だが、言葉に詰まるということは、彼女には十分見込みがあるということである。


「答えられないか」

「そのようだ。……我はそなたを失望させたか?」

「いや。さらに評価が高まった」

「なに?」


「では、続けて『最上策』について、意見を述べよう」



 ◇◇◇



 今度こそ隠しようもなく、ルアン公が瞠目する。

 ……してるんだよな? あんまり表情変わらないけど。


「更に上の策があるのか」

「あるな」

「……我はまた試されたのだな?」

「試すと言う言葉は適当ではない。測るというのが正しい。これから俺が述べる策には、その真の意味を理解できるだけの『資質』が必要だった。不快を与えたなら、謝っておこう」


 ゆっくりと、かぶりを振るルアン公。


「不快ではない。それどころか、我は今大いなる歓喜に包まれている。我の持ち得ぬ叡智。それを持つそなたに認められたことに」


 言葉だけなら、やけに深い賞賛の込められたお言葉である。

 無感動な視線のままでそんなこと言われても、違和感があるが。


 さて、最上策と言っても、これもまたどこまでの知識レベルの策を上梓すべきか、考えどころである。

 ハッキリ言うなら、『魔法付与』の技術を使って魔法の武器を作るよりも、俺の『科学技術』の知識を元に銃と車を大量生産した方が効率がよい。

 問題はルアン公がどれほど優秀でも、所詮産業革命も起きていないような文明レベルの中で優秀だということである。

 例えるならば、諸葛孔明に空軍力による『制空』戦略の優位性を説いたところで、天下三分の計を越える策は出せなかっただろうということだ。

 『制空』戦略を採用するためには、工場制機械工業の導入による大量生産技術を確立させ、製鉄技術の熟成を待ったのち、蒸気エンジンを製造できなくてはいけない。

 同時に科学技術の研究を進め、航空工学を発展させ、鋼鉄の塊を宙に浮かせる揚力についての知識を発見しておく必要がある。

 俺の存在と魔法という超理があれば、そのいくつかの難所は論理ジャンプできるにしても、国家あるいは人類総体としての文明レベルは、一人の天才の出現とそれを受け入れられる土壌の二つがあって、始めて上げられるものだ。

 『一人の天才』枠に俺を割り当てるまではいいとしても、土壌の方はないだろう。


 ――そもそも。


 そもそも、それら近代戦争概念・高度軍事技術が採用可能であっても、それは所詮『人殺しの効率』が上がるだけで、戦略的な意味での最上策でもなんでもないのだ。

 アホの子同士が剣や弓で非効率的な殺し合いをしているところに、銃を差し出して「さあこれで効率よく相手を殺しなさい」なんていう協力は策でもなんでもなく、ただの死の商人アーマライト・インクである。


 俺は戦争を否定はしない。侵略・征服大いに結構。

 だがどうせやるならスマートに、そしてシニカルにやってのけるのが、ハッカー魂だろう。


「俺の考える最上策は『文化侵略』という」

「文化侵略……? 敵国の文化を攻撃するのか」


 怪訝そうに疑問を口にするルアン公。


「違う。『文化侵略』とは自国の文化により、他国民を感化する戦略のことだ。故に、その侵略対象は国土ではなく人心となる」

「……人心を侵略する?」

「例えば、隣国『西の光国ロス・アロニア』は水源の貧弱な国土だそうだな。であれば、魔法付与の力を使って、武器を作るのではなく、水の湧き出る【ウォーターフォウル・バレル/降鵜樽】を作り、それらを『北の聖国ラ・ウルターヴ』名義で支援する。生活に密着し、生存に不可欠な物資の支援を受けたアロニア人は聖国に対してどのような感情を抱く?」

「感謝……だろうか」

「そして、好意だ。それにより、アロニアは内部から自律的に親聖派へと変革する。国は国境線によって区切られるが、人心は共に聖国に属し、外交的優位に立つことができる。両国の人命が損なわれることなく、平和を維持したままで、聖国が文化的に勝利する。それが、俺の唱える『文化侵略』という策だ」

「…………」


 魂が抜けたように茫然自失のルアン公。

 これか最後の試練だ。『文化的に勝利する』。その価値が理解できるか否か。

 もし、その価値が理解できないならば、俺の語った策は下策以下の愚策にしか映らないだろう。

 だが、理解できるならば――


 ガタンッ!


 突如立ち上がったルアン公が、テーブルを迂回して俺の足元に跪いた。

 ちょ。


「……そういうのはやめていただきたい。従者殿に見られたら殺されそうだ」

「できない」


 できないと言われてもな。


「我は感情を言葉で伝えることがうまくない。態度で示させて欲しい」


 跪いた状態で、威圧的眼光でまっすぐに俺を射抜いたまま、そんなことを口にするルアン公。


 ……は?


「とりあえず、座って話そう」


 手を差し出し、ルアン公に起立を促す。

 おずおずとその手をとるルアン公。表情に変化のないままだが、よく観察すれば確かにそこには興奮の色が混じっていることが判然る。ボディラインを隠さないドレスとか威圧的(に感じる)眼光とか直接的な物言いとか……ぱっと見、ドSの王女様かと思っていたのだが、もしかしてこの娘、単に感情表現が不器用なだけなのか?


 隣の席に座らせたので、距離が一気に近くなった。

 近くで見るとなお妖艶である。が、その変化しない表情の裏にあるものが、不器用故の無反応なのだとすると、その見え方は全く変わってくる。


「我は感動した。そなたの策はたしかに至上のものだ」


 至上かどうかは知らないが、地球上の各国は日本が無自覚に仕掛ける文化侵略で、実際やばいことになってるからな。

 具体的戦術はさておき、日本に対する各国の好意は、簡易入国審査、ノービザ優遇、コミック文化浸透、為替信用、日本製品の品質一強神話などなど、さまざまな側面において発揮されており、その効果は実証済みである。


「うまくは言葉に出来ぬ。だがそれは人を愛するということではないのか」


 ……打てば響くとはルアン公のことだろう。


「貴女の聡明さこそがこの国の宝だろうな」


 愛――ルアン公は『文化的に勝利する』ことの意味をそう受け取ったわけだな。

 戦略論上、『愛』と言う定義出来ない言葉を用いてしまうと共感はできても理解はできない。だが、基本概念としてはそれでいい。

 具体な戦略として理解するならば、『文化侵略』は仕掛けられた側が同等以上の文化的価値観をもっていなければ、それが侵略行為であるということすら気付くことができないと言う隠密性をこそ評価すべきであろう。見えざる攻撃に対しては応戦も防御も不可能。全くもってイカちゃん恐るべしである。

 文明レベルが封建国家程度であれば、まずもってその戦略自体を見抜かれることはあるまい。

 世界に『愛』をばらまく聖国。実はそれは侵略行為だったというわけだ。


 この世界においては魔法付与技術を持つ俺がその能力をウルターヴに提供することで、独占的な文化侵略が可能であろう。

 もしルアン公に俺の示した通りの策を進めるつもりがあるなら、アロニアを憂うイサンに恩を売ることもでき、売上倍増、名声向上、おまけで国家太平と、俺にとって一石四鳥くらいのメリットが望める。


「そなたのことはウォルレイン・ストラウフトにも負けぬ、天才魔法使いと聞いていた」


 そのウォル某ってのは、なんなんだ。

 誰もが知っている前提で話されても困るぞ。


「だが、そなたの真価は魔法の扱いではなく、その叡智にこそあるのではないか」

「どうだろうな」


 俺にしてみれば、趣味や興味で得た知識に多少色を付けて話してやっただけのことである。

 日本人ならば、誰でもできる程度の話だ。俺が特別なわけではない。


 じっと、ルアン公が俺の瞳を覗き込んでくる。一呼吸半の間。



「我は、そなたが欲しい」



 唐突な要望だった。

 ナルホド。少しずつだが、ルアン公の感情が読めるようになってきたぞ。

 つまりは、瞳と耳だ。それ以外のパーツは全く動かないので、その二点の僅かな動きだけで感情を読み解けということだ。

 命令口調に聞こえるのは、不器用故に言葉を装飾できていないだけだ。

 俺の解析によると今のルアン公の心情は、不安と緊張。

 言葉はおそらく、「そなた『の頭脳』が欲しい」という意味に捉えるのが無難であろう。

 見た目だけは妖艶この上ないのだ。理解の及んでない受け取り手だったら、その言葉はあらぬ誤解を受けている所だぞ……


 それはさておき、多少の知識を貸すくらいで最高権力者の一族とパイプをもてるなら、俺得この上もない。


「それを望まれるなら」

「望む」


 即答だ。

 心情的には安堵と喜びか。


 さて、ルアン公とのつき合いが上辺だけの会話で終わらないとなれば、二人きりの密談とも言える今の状況は大変都合がよい。

 無茶な要求も今なら通せるだろう。


「いいだろう。だが、それにはまず前提条件を提示させてもらいたい。そこに合意がなければ、この話は無かったことにさせてもらうがいいか?」


 こくりと、ルアン公が頷く。


「まず第一に、俺は行動の自由を何よりも重んじる。故に、力は貸すが従属はしない」


 言葉の意味をじっと考え込むルアン公。

 相変わらず顔のパーツは動かないので、瞳の動きだけで判断する。


「……我には仕えられぬか?」


 でもって、この理解の早さはやはり心地よいな。


「少し違う。士官を強制するようであれば、拒否すると言うことだ。俺が仕えたいと思えば、俺の方から願い出るだろう。それが行動の自由ということだ」

「報酬の問題ではないのだな」

「強いて言うならば、在り方の問題だ」


 何よりも自由に。誰を相手にも自重しない。それが『ワーズワード』の在り方である。


「わかった。強制はせぬ」


 と口では言いつつ、諦めていない目である。

 威圧的だと思っていた視線が、今では幼子が自分の母親を見つめる、ひたむきな視線にしか感じなくなっている。セスリナのように、言動が幼いわけではなく、その脳内では様々なことを考えているのであろうが、それが表に現れることが少ない。まさに不器用な子だというほか、いいようがないな。


「第二に、言葉遣いについての多少の無礼は容認してもらいたい。『ルアン公爵』位を軽く見ているつもりはないが、これもまた『ワーズワード』の在り方として、変えようがないからな」

「よい。我もそれを願う」


 微振動でピコる耳から判断すると本心からそう思っているようだ。

 ルアン公は至尊の身分を持つ者の一人である。立場上、対等な言葉遣いをする人間というのは逆に新鮮なのかもしれない。


 さて、これであの従者軍団が何を言おうと、問題はなくなったわけだ。

 文明レベルが上がれば、いずれ崩壊するであろう階級制度であるが、トップダウンで物事が決定されるという意味では、まさに今の俺には好都合である。


「……契約は成立だ。俺の知識が必要になれば、いつでも呼んで貰えればいい」

「そなたに感謝を」


 その耳と瞳が全身全霊の喜びを表現している。

 妖艶な容姿に相反する初々しい少女のような反応。

 いや、そうだと判然るのは、俺の観察眼あってのことなのだが。

 なのだが、初対面での印象を180度ひっくり返すこの反応のギャップに、思わず背筋がゾクリとざわつく。


 ……これはぜひ、他の感情も試してみたくなるな。基本的にハッカーという人種は好奇心の塊なわけなので。より新しい技術・新しい情報を求めて、ついついハッキングしちゃうんだ☆ってなモンなのである。


「ちょっといいか」

「……?」


 さわっ


 この世界の女性は確か、耳を触ると面白い反応をするはずである。


「……」


 さわさわ


「…………」


 反応しないか?

 まっすぐに俺を射抜く視線のまま、微動だにしないルアン公。

 大人の女性になると耳を触られた位では、取り乱したりしないのか。


 と、思った瞬間、ギンとその目が見開かれた。同時に瞬間湯沸かし器の如く、沸騰する耳。

 これまでにない大きな反応である。

 ということは単純に反応がでるのが遅かっただけか?


「……ン」


 そこでシャルよろしく絶叫が迸るかと思いきや、ルアン公は小さく吐息を漏らし、ぎゅっと眼を瞑ると、後はフルフルと何かに耐えるように、小さく固まってしまった。

 これは想定外の反応である。


 瞳を閉じられてしまうと、感情がわからないではないか。


 さわさわ


「……っ……っ」


 さわわわ


 ルアン公が固まったままなので、さわさわのやめどきを逸してしまった。

 このままではいつまでもさわさわし続けてしまいまそうだ。


「……ルアン公」


 俺の呼びかけにやっと瞼を開けるルアン公。

 そこから読みとれる感情は――

 …………。


「えーと。正直すまなかった」

「……ッ!」


 バチンッ!!!


 ルアン公の感情について思考を巡らす暇なく、強烈なダイレクト平手アタックが俺を襲った。痛くて死ねる。判断する必要もなかったということだな。

 バタンと勢いよく扉を開けて、ルアン公が飛び出して行く。


「ルアン公、一体どうなされました!?」

「お、お待ちを!」


 遠くなってゆく、女性の足音と従者の声。


「ワーズワード殿。中で一体何が……その腫れた頬は……」

「ああ、オルド殿。なに、ちょっとした検証実験により偶発的事象が発生しただけだ。多分大丈夫なので気にしないでくれ」

「……はぁ」

「ちなみにオルド殿」

「なんでしょう」

「この国には不敬罪というのはあるのだろうか?」

「……」


 そんな絶望的な目でみないでほしい。

 やっちゃったことは、これはもう仕方ないのだ。ルアン公もあの様子ではさすがに今日はもう戻ってこないだろう。



 過去の反省は次回に活かすとして、まずは会場に戻るとしよう。

白起:秦の武将。強い。


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