安心のクリス兄様
「それはそうと、もうパーティに来ていく衣装は決まったの?」
「・・・実はまだなのです。」
どうも気が乗らなくて後回しにしていたら、あっという間に10日経ってしまっていた。
「もう当日まであと1ヶ月しかないよ。仕立て屋も混み合ってるだろうし。母上には何も言われなかったの?」
「痛いところを突きますわね、クリス兄様。ちょうど昨日怒られまして、ドレスの目処が立つまでは温室にも調理場にもなんと図書室も出禁になってしまったのです。」
悲しいですわ。
せっかく美味しそうな山菜の情報を入手しましたのに。調べる事も採りに行くこともできないなんて。
「ああ、だから朝から庭でお茶してたんだね。」
クリス兄様がなるほどと頷いた。
「そうなのです。せめて庭園の花でも見て心を安らげようかと。私のドレスなんて誰も気にしてないでしょうし、前回来たドレスをリメイクすればいいと思うのですが、お母様は絶対に許さないと。」
「それはそうだろうね。ロティは今回の主役の一人だよ。お古のドレスなんて着ていったら家の金銭状況が疑われる。」
王配となるアル兄様の支度金で余裕がとか言ったら通らないかしら。
「ロティ。」
あら、考えていることがバレたのかしら。
クリス兄様が咎めるように見つめてくる。
「わかっておりますわ。わかっておりますけども。」
反抗心を捨てられず、自然と唇が尖り拗ねた顔になってしまう。
そんな私の顔を見て、クリス兄様は仕方ないと笑った。
「僕も一緒に付いていくから。王都でまだ空きがありそうな仕立て屋は・・・。いや・・・。」
何か言いかけてクリス兄様は考え込んでしまった。
なんにしろクリス兄様が味方になってくれるのは心強いので、全力で頼る気持ちである。
「ロティ。今回のドレスについて全部僕に任せてもらえる?ちょっとアテができた。」
「ええ、そうしていただけるのであればとってもありがたいですわ。」
特に希望はないので、クリス兄様に丸投げ出来るなら万々歳だ。
これがアル兄様だったなら不安になりますが、クリス兄様のセンスであれば間違いないでしょう。
「よかった。装飾品もこちらで用意するからロティは何もしなくていいよ。ドレスや靴のサイズは去年辺境で作った時と変わっていない?」
「はい、変わっておりませんわ。」
残念なことにここ1年、縦にも横にも伸びていない。
まだポテンシャルはあるはずですのに。
「よし、早速連絡をしないと。悪いけれど、これで失礼するね。また目処がついたら伝えるよ。もしアテが外れても辺境伯家の力を借りれば何とかなるだろうし。」
「それはそれで後が怖そうなのですが。」
パーティで婿を見つけられなかった時の圧に耐えられないかもしれませんわ。
やはりお家断絶・・・。
「ロティ。君に婿を見つけて欲しいのは本当だけど、辺境伯家は君の幸せも全力で応援したいと思ってるんだよ。彼女達は君に大きな恩があるからね。」
「私、何かしましたかしら?」
さっぱり身に覚えはないのですが、辺境伯に遊びに行くとやたらとお菓子やらドレスやら与えられるのは、恩返しだったのかしら。
「それもロティの良いところだよ。ジョゼも君のことが可愛くて仕方ないと言っていた。また辺境にも遊びにおいで。」
そう言い残してクリス兄様は足早に去っていった。なんだかよくわからないが、何にせよドレス問題は片付いたので出禁は解除されるはずだ。
早速お母様に直談判に行かなくては。




