昼下がりのお茶会
「笑いごとではありませんわ!クリス兄様」
あの衝撃の話から10日後。
庭でお茶をしながら、クリス兄様に盛大に愚痴っていた。
「ふふっ、ごめんごめん。でもロティ、ここまで来たら覚悟を決めるしかないんじゃない?」
「・・・。」
わかっている。わかってはいるのだ。
認めたくないだけで。
「まあ、当日は僕がエスコートするから何かあったらフォローするよ。」
「ありがとうございます。でもジョセフィーヌお姉様はよろしいのですか?」
クリス兄様は辺境伯家の猛プッシュを受けてジョセフィーヌ様との婚約を機に、あちらの領で生活をしており学園も辺境伯領の方に通っている。
アンネリーゼ様の新しい婚約者お披露目も兼ねたパーティなので、当日アル兄様はアンネリーゼ様のエスコートがあり、両親はそちらのサポートにつきっきりのため、今回はクリス兄様に特別に帰ってきていただだいた。
「ああ、ジョゼがこちらに来るとなると僕がエスコートしないわけにはいかないからね。今回はあちらに残ってもらったんだ。」
「よくお許しいただけましたわね。」
クリス兄様の帰省には必ずジョセフィーヌお姉様がセットでいらっしゃるほどの囲い込みぶりだというのに。今回はクリス兄様おひとりだ。
「ジョゼは快く見送ってくれたよ。ロティが婿を見つけられなかったら僕が伯爵を継ぐ可能性も出てくるって伝えたからね。ロティには婿探しがんばってほしいって。」
見えますわ。
クリス兄様の後ろに目を光らせるジョセフィーヌ様の影が。
絶対に婿を見つけてこいという圧を感じますわ。
もし見つけられなかったらこのハーベル家は辺境伯家に取り込まれるかもしれません。
ああ、お父様。不甲斐ない娘を許してくださいませ。
「ロティ、今から諦めたりしないようにね。パーティまでマナーのおさらいとダンスの練習も付き合うから。」
「善処いたしますわ。それにしても、クリス兄様はもう辺境伯領の執務もお手伝いされていらっしゃるのでしょう?お仕事の方は大丈夫なんですの?」
ダンスの話題を出され、一旦話を逸らすことにした。
辺境伯家は武を重んじる家(つまり脳筋一家)のため内政は大の苦手で、クリス兄様がまだ婚約者で学生の立場にも関わらず政務をお手伝いされているのは、そういった事情からだとふんわり聞いている。
そんな中でクリス兄様が長期抜けても大丈夫なものなのかしら。
「・・・・・辺境伯もいらっしゃるから大丈夫だよ。」
クリス兄様はにっこりと笑ってそう言った。
「さすが辺境伯様ですわね。武官系一家でもご当主様はですものね。」
何度かあちらに伺わせていただいた時にお会いしてますが、
ご立派な体格をしてらっしゃってお顔も少し怖めですが、渋くてかっこいいのです。
密かな憧れですわ。
「・・・ソウダネ。」
本当はクリスの帰省をもっとも渋ったのは辺境伯で、出発の朝まで涙目でごね続けていた。
しかしクリスは辺境伯の名誉のためにも、ロティにその事を黙っていることを決めた。




