婚約破棄騒動
お父様に窘めるよう見られ口を噤む。
「二人とも落ち着きなさい。シャルロッテも、最後まで大人しく聞きなさい。シャルロッテ、最近の王立学園での騒ぎは知っているか?」
「騒ぎですか?他校の事ですのでなんとも。卒業パーティーで侯爵令息がいきなり婚約破棄をアンネリーゼ様に突きつけたことくらいしか知りませんわ。」
「・・・それだな。」
「なぜ、その騒ぎを知っていて私の不貞を疑ったのだ?」
お兄様がまだ何かぼやいてらっしゃるわ。
ちょっとした冗談でしたのに、相変わらずお顔に似合わず繊細でいらっしゃる。
先日、兄の通う王立学園で卒業パーティーが開かれていた。
そこでアンネリーゼ様の婚約者であり王配となるはずだったロベルト侯爵令息が婚約破棄を告げたのだ。なんでも、隣国の第3王女であるマリーヌ様に惚れたとかなんとか。
「王立学園の噂は私共の学院まで届いておりました。噂は噂だと思っておりましたがまさか本当だったなんて。」
「ちなみに聞くが、どんな噂だったんだ?」
疲れたように眉間を揉むお父様に促されて、学院での噂を思い起こす。
ちなみに、私が通っているのは王立学園ではなく王都立魔法女学院。
女学院なので男子禁制、魔法を愛しマナーも愛す才色兼備な淑女を育成する伝統ある学院なのです。
そこでは、淑女の嗜みとして頻繁にお茶会が開かれており、貴族社会に欠かせない情報合戦が繰り広げられているのですわ。・・・単なるおしゃべり会ではありません。
「たしか、アンネリーゼ様や高位貴族の方の婚約者様方が軒並みマリーヌ様の色気に惑わされて、アンネリーゼ様たちをないがしろになさっているとかしないとか・・・。
マリーヌ様がいじめられただのと所かまわずお嘆きになり、それを取り巻きの方たちが庇って、アンネリーゼ様たちを糾弾なさっているとか・・・。そのせいで学園内の雰囲気が最悪になられているとかないとか・・・。あくまで噂ですけど巻き込まれなくてよかったですねと友人たちと笑っておりましたわ。まあ、あくまで噂であってまさかそんなバカげたことをと思っていたのですけど。」
「・・・・・・・事実だな。」
「・・・事実ですね。」
なんということでしょう。事実でしたわ。
「でも侯爵令息様は次男で王家に婿入り予定でしたわよね?マリーヌ様も第三王女であちらは我が国のように女性の継承権が高いわけではないですし。」
「・・・あいつは、自分が王家を継ぐつもりだったらしい。」
「それはお家乗っ取りというのでは?革命でも起こされるつもりでしょうか。」
現在の王家は真に女神の血を引く尊い存在。そう簡単に成り代われるものではない。血の濃い公爵家であればあり得たかもしれないが、それでも王家の直系がいない場合という条件はつく。
「あいつらにそんな根性はない。」
お兄さまがバッサリ切り捨てた。だいぶ彼らにご立腹のよう。顔は怖いですが、中身は温厚なお兄さまを怒らせるなんて相当だわ。
「よっぽど頭が悪いのね。」「ロティ、口が慎みなさい。」
お父さまに窘められた。コホンと咳ばらいをして言い直す。
「よっぽど頭の中にお花が咲いていらっしゃるのね。侯爵令息様もマリーヌ様も。それで、どうしてアル兄様が王家に婿入りする事態になってしまったのです?他にも候補はいらっしゃったのでは。」
「跡継ぎ以外の男児など生まれたそばから取り合いだ。上位貴族であれば赤子のうちから婚約者が決まっていて当然だ。王家の都合で無理やり婚約破棄をさせ、王配を指名などしたらそれこそ暴動が起こってもおかしくない。それに、今回は上位貴族の次男たちが騒動の中心となった婚約破棄騒動だ。公爵家や侯爵家の婿予定だった奴らもいたが、そいつらも軒並み婚約破棄となり今は深刻な婿不足だ。まだ貴族であれば他国から婿を取ればいいが王家はそうはいかないからな。」
揃いもそろってお馬鹿さんでしたのね。希少な男児で幼いころから甘やかされて自分が偉いのだと勘違いしてしまったのかしら。




