晴天の霹靂
コメディ要素強めです。
「ロティ。すまないが、お前にこの家を継いでもらうことになった。」
「…はい?」
突然父から書斎に呼び出され告げられた言葉に、シャルロッテは首を傾げた。
後ろではその後を継ぐはずだった長兄のアルバートが、心なしか申し訳なさそうに立っている。…あまり表情には出ていないが。
シャルロッテ・ハーベル16歳。2人の兄を持つ3兄妹の末っ子として生まれ、これまで伸び伸びと育てられてきた。
ここにきて突然の後継者宣言である。
まさに晴天の霹靂。
他にこの状況を表す言葉があったかしら?
今日は朝から晴天でこれから散歩がてらお庭のハーブを見に行こうと思っていたのに。
雨でも降ったらどうしましょう。
そんなことを考えていると、父に肩を揺さぶられた。
「ロティ…ロティ、戻ってきなさい。」
「あら、失礼しましたお父様。疲れていたようで幻聴が聴こえたようですわ。もう一度寝なおすことにします。失礼いたしますわ。」
「待ちなさい、帰ろうとするんじゃない。幻聴ではない。とりあえず座りなさい。」
お父様が目頭を押さえながらため息をついた。
お疲れなのはお父様のようだ。
とりあえず、大人しく座って話を聞く体制をとると、兄と父も正面のソファに座った。
「先ほども言った通り、お前にこのハーベル家を継いでもらうことになった。」
「はぁ。」
思わず気が抜けた声が出てしまう。
この国では女性が後継となるのは決して珍しいことではない。
なんならこの国は女神の起こした国と呼ばれる所以か生まれてくる子供も女性がほとんどで、女性の後継の方が圧倒的に多い。
ハーベル家は数少ない男児2人を産んだ家として、しばし有名になったくらいだ。
そもそも3人子供が産まれること自体が珍しい国だ。
この国は女神がこの土地に住まう男に恋をして、降嫁したのが成り立ちと言われている。
それが単なるおとぎ話で片付けられないのは、この国の民は全員高い魔力を持っているからだ。他の国では100人に一人いればよい方という魔力持ちがこの国では全員だ。
そのためか長寿の者が多く、その分出生率がかなり低い。
とくに高い魔力を持つ王家や貴族家は一人生まれればいい方だ。
だから、女性だろうと男性だろうと一番最初に生まれた子供が継承権を持っている。
そんな国なので私が産まれた時は、女神の奇跡と言われたらしい。
それはさておき、子沢山なハーベル家。
兄が二人もいるというのに自分に回ってくるとはシャルロッテは全く想定していなかった。
まぁ、次男のクリストフは既に武官系の辺境伯家に婿入りが決まっているため、アルフレッドに何かあればシャルロッテが後継になることは当然の流れではあるが。
「アル兄様。何をやらかしましたの?今なら謝れば許してもらえるかもしれませんわ。」
「何もやっていない。」
お兄様も疲れたようにため息をついた。
「アルフレッドは王家に婿入りすることになったのだ。」
「王家に?」
王家で未婚かつ適齢期の者と言えば王太女のアンネリーゼ様しかいない。他に生まれたばかりのマルガレーテ様と王妹の子であるフェルディナント様がいるが、婿入りを求められるのは次代の女王となるアンネリーゼ様だけだ。
でも、アンネリーゼ様には婚約者の方がいらっしゃった気が。
「不潔よ、アル兄様!まさか婚約者のいらっしゃるアンネリーゼ様に手を出すなんて。」
「だからやっていない!さっきからお前は私をなんだと思っているのだ。」
違ったらしいわ。
濡れ衣を着せられたアルフレッドは「お前は兄の扱いがひどい」などとぼやいている。




