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「おや。それはそれは……。設定ミスですねぇ。」
安藤さんは私が説明すると困ったように頬を掻いた。
「……とりあえず、設定ミスの原因を追究するのは後にして、設定を直してしまいましょうか。」
「は、はい。」
私は机に戻りパソコンにパスワードを入力しロックを解除する。
サーバーの設定画面を表示させ、バックアップフォルダの設定画面を開く。
そこには確かにバックアップフォルダが公開される設定になっていた。
私はそのバックアップフォルダの公開設定を非公開にし、さらに誰もアクセスできないようにアクセス権を設定する。
作業すること10分。
確認のためにサーバーのトップ画面を表示させてみると、日付のみのフォルダは消えていた。
「対処が済んだようですね。」
「……はい。」
サーバーへの対処が終わると、安藤さんが椅子を持ってきて私の横に座った。
「今回、なんでこんなことが起きたのかわかるかい?」
「はい。先週のバックアップ設定変更時ですね。」
バックアップの設定を先週変更したことを私は思い出した。
きっと、その時に設定が漏れてしまったんだと思われる。
「うん。そうだね。それもあるかもしれないね。でも、ね。麻生さんはバックアップ時の手順を覚えているかい?」
「はい。帰る前にバックアップ用の外付けのハードディスクをサーバーに接続して、それから、バックアップ自体は、午前0時に自動実行されます。それから、バックアップ先の外付けハードディスクへのウイルス感染を防ぐために……あ。」
私はそこまで答えてハッと息を飲んだ。
今日、やらなきゃいけなかった作業を忘れていたことに気が付いたのだ。
サーバーのデータバックアップを取得した後、サーバーがウイルス感染した際にバックアップしたデータを守るために、バックアップデータが入った外付けハードディスクをサーバーから取り外して保管する必要があるのだ。
その作業は毎朝出社したタイミングでおこなっていた。
けれど、今日はそれを忘れていたことに気づいた。
「そうだね。外付けハードディスクがサーバーに接続されたままだった。だから、今日晴海さんはバックアップデータの方を見ることができたんだね。」
「……はい。私の二重のミスです。」
「今日まで露見しなかったのは、毎朝ちゃんとにバックアップデータが保存されている外付けハードディスクを朝一でサーバから取り外していたからだね。よかったね。毎朝サーバーから取り外していて。もし、サーバからバックアップデータの入った外付けハードディスクを取り外していなかったら、先週から今週までずっとバックアップデータに誰もがアクセスできたことになる。その点は不幸中の幸いだったね。」
そう言って安藤さんはぽやんと笑った。
「……はい。ミスが重なりました。申し訳ございません。」
「失敗は次への成功の糧だよ。今後は気をつけなさい。それに、私にも落ち度はあるね。麻生さんがおこなった設定の確認を私は怠ってしまった。だから、これは私と麻生さん、二人のちょっとしたミスからおこったことなんだ。」
「……はい。」
「ミスは誰でもするから気にしないでね。」
「……はい。ありがとうございます。気を付けます。」
油断していたのかもしれない。
大丈夫だと。
自分のおこなった設定にミスがあるはずないと。
自分の作業も確認をおこたっていた。
それが今回のことに繋がった。




