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今日も情シスは恐怖に慄く  作者: 葉柚
見知らぬMACアドレス

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38/39

見知らぬMACアドレス 前編




見知らぬMACアドレス



 その日、始業前からアクセスポイントからのアラートが何度も通知された。


 朝、出社をしてまずコーヒーを淹れてからメールを開く。

 これが私の毎朝のルーティーンだ。

 まあ、メールを開く前に席に着いたと同時に電話がけたたましく鳴り響くこともあるけれど。それは割愛する。

 

「えええっ!!?な、なにが起きてるのっ!?」


 今朝、コーヒーを飲みながらメールを開いた私は口に含んでいたコーヒーを噴き出し損ねた。

 ちなみに飲んでいたコーヒーはコピ・ルアックではない。普通のインスタントコーヒーだ。

 あんなお高いコーヒーは私のお給料では二度と飲むことはないだろう。


 私がコーヒーを噴き出しそうになったのは、メールの受信件数が半端なかったからだ。

 いつもより受信するメールの数が50件は多い。

 何かが起きていることは間違いない。

 これ以上面倒ごとは勘弁してくれと朝から憂鬱な気分になる。

 

「原因、調べないといけないね。これは異常事態だからね、僕も並行して原因解析をするから。麻生さんも麻生さんなりに調査してくれるかい?」


「……はい。」


 げんなりとしながら私はパソコンの画面を睨みつけた。

 大量に来ているメールの内容は全て一緒だった。

 社内に設置してあるアクセスポイントからの警告メールだ。

 アクセスポイントに設定していないMACアドレスから、アクセスポイントに対して接続要求がされているという内容だ。

 MACアドレスというのは、パソコンやスマートフォンなどネットワークに接続することが出来る機器に一意に割り当てられている値である。

 社内のアクセスポイントには限られたパソコンやスマートフォンしか接続できないように、社内のパソコンや社用のスマートフォンのMACアドレスをアクセスポイントに対して設定している。

 社内のネットワークに会社で管理していないパソコンやスマートフォンを接続することはウイルス感染のリスクや、情報漏洩のセキュリティリスクに繋がるためだ。

 

「誰かが、アクセスポイントに許可されていない機器を接続しようとしたらしいね。」


「そのようですね……。特定するの難しそうですね……。」


 今やだれもがスマートフォンを持っている。つまり、持ち物検査をしても全員のスマートフォンや通信できるゲーム機なども視野にいれて確認をしなければならない。

 一台一台社内のアクセスポイントへの接続設定がされていないか確認する作業が必要になるのだ。

 スマートフォンやネットワークに接続できる携帯ゲーム機がなかった時代だったら確認するのも楽だったのだろうけれど、今は非常に辛い作業だ。

 

「毎月、セキュリティチェックシートで社内のアクセスポイントに私用デバイスを接続しないようにって記載しているのにねぇ。セキュリティチェックシートだけじゃあ弱いのかなぁ。」


 独り言ちリながら、誰が私用デバイスをアクセスポイントに接続したのか割り出していく。

 まずは、エラーとなって弾かれているMACアドレスを調べる。

 実はMACアドレスから機器メーカーを特定することができるのだ。専用のサイトにMACアドレスを入力するだけで機器メーカーを割り出してくれる。

 「インチェル」なんて記載されていれば大体がパソコンを指しているし、「エピュソン」と記載されていればプリンターのことを指している。「ビャッハロー」だったらルーターを指していることが多い。

 今回は……、

 

「アッピュルですね……。」


「そうだねぇ。間違いなくスマートフォンか、タブレットだよねぇ。誰かが私物を持ち込んだみたいだね。」


 アッピュル製品は社用デバイスとして社員に割り当てられていない。

 アッピュル製品は性能が良いが、業務で使用するには性能が高すぎてしまうのだ。性能が良い分、お値段も良いというのもある。

 悲しくても会社員である。

 経費は常に最低限でと言われているのだ。

 私だって、アッピュル製品で仕事をしてみたい。

 

「一人一人持ち物検査、ですかねぇ。」


「そうだね。でも、アクセスポイントをよくみてごらん。ある程度誰が持ってきたかは絞れると思うよ。」


 安藤さんにそう言われて私はアクセスポイントのログを確認する。

 社内にはいくつかのアクセスポイントが用意されている。

 まずは会議室、それから事務所、出荷現場に情報システム部だ。

 事務所はそれなりの広さがあるので、アクセスポイントは2台ほどついている。

 

「そっか。アクセスポイントへの接続時間と、どのアクセスポイントに対してアクセスしようとしたかを見れば、何時どこにいた人なのか大体の当たりはつきますね!」


「そうだね。」


「なるほど、出社したのは7時30分みたいですね。出荷現場のアクセスポイントに履歴が残っています。随分早い時間に出社してますね。」


 社員は裏口から入館するため、一番最初に通るのは出荷現場だ。

 

「しばらく出荷現場のアクセスポイントに接続を試みてますね。10分くらいいたみたいです。」


 アクセスポイントの設定でMACアドレスが弾かれているため、アクセスポイントには接続することができずエラーとなってしまう。

 そのため、何度も何度も接続できないか試したのだろう。

 アクセスポイントのセキュリティーキーは社内の人であれば誰でも知っている。MACアドレスで接続できないようにフィルタリングしているので、社用デバイスをアクセスポイントに接続するために公開しているのだ。




つづく

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