3
☆☆☆☆☆
プルルルル。
「はい!情報システム部ですっ!」
「ああ。横溝だけど。先日改修してもらったシステムなんだけど……。」
「はい。どうかしましたか?」
午前10時過ぎ。営業部の横溝さんから電話がかかってきた。
なんだろうと思いながら電話にでる。
あれだけしっかりとテストをおこなったのだから、問題はないはずだ。
「修正してもらったシステムは問題ないんだけどね。修正してもらったシステムから出力されたBシステムに中間ファイルが取り込めないんだ。」
「えっ……!?すぐに確認します!」
「お願いね。Bシステムが動かないとお客様に見積書が発行できないからさ。できるだけ急ぎで確認してもらえると助かる。」
「わかりましたっ!」
私は血の気が引くのを感じた。
そういえば、昨日リリースしたAシステムのテストは完璧と思えるくらいしっかりとおこなったが、Aシステムから出力された中間ファイルをBシステムに取り込む確認はしていなかったのだ。
それもそのはずで、Aシステムから出力している中間ファイルには品番が書かれていないからだ。品番の代わりに品番に一意に振られたIDを記載している。
だから、特にテストは実施しなかったのだ。
そこで私はひとつ目のミスに気が付いた。
Aシステムから出力している中間ファイルが固定長だったので可変長に変更していたのだ。
でも、可変長に変更した中間ファイルをBシステムに取り込むテストを実施していなかった。
むしろ、固定長から可変長に変更したファイルをBシステムに取り込むためにはBシステムも同時に改修しなければならなかったのだ。
文字列の固定は古いと考え、この際、固定文字列になっているところをできるだけ改修してしまおうと安易に考えたのが運の尽きだった。
「あれ?なんでBシステム?」
安藤さんが不思議そうに首を傾げている。
「……Aシステムから出力されるBシステムに取り込む中間ファイルを固定長から可変長に変更しました……。その影響です。」
私は唇を噛みしめながら安藤さんに事実を伝えた。
「あー……。そこも変更しちゃったんだね。」
「……はい。Bシステムとの連携部分をテストしていませんでした。」
「そっかぁ……。そっかぁ……。」
安藤さんはそう言って考え出す。
「なら、いったんシステムを差し戻そうか。まだ新品番の受注が開始されるまでは日にちがあるから一回、前のバージョンにシステムを戻そう。」
「……データベースも変更しているんです。」
「え?なんで?データーベースの方の品番の文字数は直さなくてもよかったはずだよ?データーベースの方が品番の文字数多めにとってたからね。」
「えっと、データーベースの品番も固定長から可変に……。」
「えっ……。」
安藤さんは私の発言に顔をひきつらせた。
「データベースも変えたの……?」
「はい。Aシステムの文字数制限とデーターベースの文字数制限が異なってたから、不具合だと思って一緒に可変にしました。」
「あの、データーベースは、BシステムとCシステムでも使用しているんだ。だから、データーベースを変更する場合はBシステムとCシステムも確認しないと……。」
「す、すみません。」
安藤さんの言葉に私は顔を真っ青にする。
まさか、BシステムだけでなくCシステムにも影響を及ぼしているだなんて……。
どうやって復旧したら……。
「ごめんね。説明していなかった僕もわるかった。まさか、データーベースまで変更しているとは思わなかったから。すまない。君がどのように修正したのか細かく確認すべきだったよ。」
「も、申し訳ありません……。」
安藤さんに謝らせてしまった私はぎゅっと涙を堪えた。
安藤さんのアドバイス通りにシステム改修をしなかったのは私なのだ。
しかも、初めてのシステム改修で舞い上がって安藤さんに確認を取らずにシステムをリリースしてしまった。
明らかに自分のミスである。
「いや、確認を怠った僕も悪かったよ。」
幸いにもシステムリリース直前にデータベースのバックアップをとっていたということもあり、データベースをバックアップから復元し、リリースしたシステムをリリースする前の状態に戻すという対応でなんとか2時間程度で復旧作業が完了した。
幸いにもBシステムとCシステムを今日はまだ使用していなかったからこれだけの対応で済んだ。
もし、BシステムとCシステムを使用していたとしたら、と思うとさらに肝が冷えるのだった。
それからは安藤さんにちゃんとに確認しながらシステム改修をおこなうようになったのだった。
古いシステムには独特な癖がある。変に改修すると不具合を引き起こすということを勉強したのだった。




