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『経費削減のため節電へのご協力をお願いします』
ある日、出社すると情報システム部の部屋のドアにそのような張り紙が貼ってあった。
「うーん。経費削減ねぇ……。節電っていっても、エアコンの温度設定とか、部屋の中に誰もいなければこまめに電気を消すくらいかなぁ。」
節電するようにと言われても具体的にどう節電していいものか悩みどころである。
とりあえず室内のエアコンの温度設定を見直そう。
そう思って自席に着く。
パソコンの電源を入れ、メールソフトを起動する。
夜間の間に溜まっていたメールが雪崩のようにドドドッと受信された。
まあ、大半はサーバー関連の定期通知なんだけど。
その中に総務部からの「節電のお願い」というメールが目に留まった。
どうやら張り紙だけではなくメールでも連絡が来ているようだ。
送信時間を見ると夜の10時となっている。
どうやら総務部は今忙しいらしく残業をしているようだ。
「えっ……?」
総務部からのメールを読んだ私は驚いて声を上げてしまった。
「どうしたんだい?麻生さん。」
急に声を上げたものだから、安藤さんが不審に思って問いかけてきた。
「あ、ええ。あの……総務部からのメール見ましたか?」
「いや、まだだよ。昨日休んじゃったからね。メールが溜まっていて、まだ総務部からのメールには目を通していないよ。部屋のドアに貼ってあった節電のメールじゃないのかい?」
「え、ええ。そうなんですけど……内容が……。」
「うん?」
総務部から来た俄かに信じがたいメールの内容。
「総務部で今後エアコンの温度管理を一括しておこないます。と書かれているんです。総務部以外はエアコンの温度変更をしてはいけない、と。」
「なるほど。暑ければ必要以上に設定温度を下げてしまったり、逆に寒ければ必要以上にエアコンの設定温度を上げてしまうから、かな?仕方がないんじゃないかな?経費削減だって言っているし。まあ、夏場なんかは営業部から苦情が出そうだけれどもね。もっと温度を下げろって。」
安藤さんは「まあ、仕方ないよね」と笑った。
確かにそれは理解できる。理解は出来るのだが、次に記載されていた対象のエアコンと温度設定に問題があった。
「対象のエアコンは社内の全エアコンだそうです。」
「うん?全エアコン?まさか、サーバールームのエアコンもだなんて言わないよね……?ちなみに何度設定なんだい?」
「そのまさかです。社内のエアコンは漏れなく総務部で室温管理すると記載されております。例外はないそうです。それで、設定温度なんですけど……。冬は20℃で、夏は28℃設定だと……。」
嘘みたいな内容だ。
なぜサーバールームの室温設定を総務部が管理するのだろうか。
夏場に28℃じゃサーバーには酷な環境だ。




