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「……まさかとは思いますが、キーボードの電池を交換していただいてもよろしいでしょうか?」
「え?キーボードに電池が入っているのかい?」
「はい。有線ではないので、どうしてもワイヤレスキーボードは電池が必要になります。キーボードを裏返しにしていただいて、どこかに電池が入りそうな場所はありませんか?」
「ああ。あった、これかな。えっと、単三電池のようだ。ちょっと待っててくれ。電池を交換してみる。」
「はい。ゆっくりで構いませんのでお願い致します。」
電話口からカチャカチャという音が聞こえてくる。どうやら電池を交換してくれているらしい。
「待たせたね。電池を交換したよ。」
「ありがとうございます。それではパスワードを入力していただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ。おおっ!!入力できたよ!!」
「よかったです。では次に、プレゼンテーションソフトが正常に動作するかご確認いただいてもよろしいですか?」
「ああ。わかった。おおおっ!!やった動いたよ。ありがとう麻生さん!!」
「いいえ。どういたしまして。」
「またよろしく頼むよ。麻生さん。」
そう言って宮本さんからの電話は切れた。
意外とワイヤレスキーボードの電池交換は利用者では気づきにくいのかもしれない。まあ、でも最初の一回だけだろうと頭の隅に追いやる。
そう、この時の私は気づいていなかった。
ワイヤレスキーボードを導入し始めたのは1年ほど前でそろそろ導入当初のワイヤレスキーボードの電池が切れるということに。
この日からしばらく私はワイヤレスキーボードの電池切れに関する電話対応にいそしむことになるのだった。




