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タムケノハル  作者: 雪水湧多
4/50

Ser(サー)

「ありがとうございます。贈り物ですか?」

「え?い、いえ、違います」

「ポイントカードはお持ちでしょうか?」

 田舎の商店街つぶしで有名なショッピングモール内の服屋を数店舗回り、買ったのはたった一着。お金に余裕がないのは純玲もわかっているため、多くは望まず、自分が本当に欲しいものを、比較的安価なお店で強請っていた。買ったのは春から初夏にかけて着れそうな、薄い白のカーディガン。カーディガン自体はいくつか持っているものの、色のバリエーションが徐々に増えてきている。問題は俺には違いがあまり伝わっていないことで、それが最近の純玲の悩みらしかった。俺は同じ色がほとんど被らないのは女性の管理能力がすごいのか、それとも純玲の管理が凄いのか。どちらにせよ、また着用した時に見せに来てくれそうだ。としか思っていなかった。

「ありがとうございました~またのお越しをお待ちしています」

「どうも」

 レジ対応してくれた店員に軽く会釈し、店を出ると反対側の雑貨店に二人組の女性が楽しそうに話しているのが見えた。どちらも見覚えのある女性。顔を合わせても何があるわけではないにしろ、なんとなく居心地が悪くなって、純玲の手を引き逃げるようにフードコート向いながら、桜が地面に舞い落ちるほどのわずかな時間だけ横目で二人を見た。

一人は自然と目が行ってしまう。あるいは視線が“奪われる”。彼女の長い髪の美しさ?いや、視線?いや、彼女の持つ雰囲気と言えるだろう。彼女の生まれ持った才能で、その才能を十二分に発揮できる性格であること俺は知っている。

もう一人は、前日の彼女とは真反対で背が低く、アンダーリムの赤眼鏡にボブカットが非常によく似合っているが、見方によっては地味に見える服装だった。風景に溶けるような雰囲気は、ある意味才能と言える。前髪が少し長く、視線を隠すようにしているのは彼女の性格を表していると言え、俺自身もそんな内気な性格に振り回された犠牲者だった。

 どちらも癖はあるものの、対面しても何かが起こるわけでもないのに、脚は留まる素振りすらなかった。

「えっ?ちょっと、どこ行くの?お兄ちゃん」

「えっと、そろそろ。お昼だろう?だから、フードコートにでも行こうかなって」

「でも、1階の食品売り場でお弁当買った方が安いよ?」

「あー、いいんだ。今日は、ちょっと前に給料日だったし」

「いいの?やったー!何にしようかな、ハンバーガーかな。でも、パスタも捨てがたいし、ビビンバも・・・」


 フードコートに着いた。広くないのにお店だけはひしめき合っている。そんなお店の集合体を囲むように机と椅子が何百と置かれていた。

見渡すと飲食店のお店の前に、店舗によって装飾に差異があるもののどれも同じような形の広告が目を惹いていた。数年前ではスクリーンに表示していたものが、投影している下以外フレームレスになっていた。電気粘性流体のように、電気を流し固くなるだけでなく、各色のLEDを付けたかのように色のついた光を放つ数ミクロンの繊維のSerサーを用いて作られた、最新の超軽量スクリーン。様々な形に変形したうえで発光するため、ゲームのように速さを求める用途には向いていないらしい。その特性からお店の広告を、店先や壁など気にせず設置できるため多くの企業が導入している。最近では軽いことを利用してか、宙に浮かぶテレビの開発を国が進めているらしい。

 最新技術に感心している間に純玲はビビンバに決めたらしく、いつの間にか俺の手を引いてお店の前に立っていた。困惑しながらもカウンターに向かっていた。

「ビビンバでいいんだな。す、すみません、ビビンバ、一つ」

「あいよ」

会計を終えた俺にレジのおばちゃんが渡してきたのは、平成感が漂う呼び出しベル。それをもって近場のテーブルに座った。

そう、まだ技術は発展途上。AR、VRなどと発表されてからもその普及は60%を超えていない。理由はいくつかあったが一番はこの日本という国が技術的にも経済的にも他の先進国に遅れていることだった。日本国内だけでなく海外の有名人が指摘して批判しても改善するのに数年かかると言えば、そこも指摘されてしまった。今日本は、国のシステムをイチから見直している最中だった。そのため、日本は国にとっても国民にとっても大きな危機を乗り越えている真っ最中であり、税金に搾り取られ国民の財布事情が危うく最新技術を使った機器を買うことすら難しいのが現状である。

実際このフードコートにいる人間ほぼ全てが型落ちのスマホと、にらめっこしながら食事をしていた。またどれも二つとして同じ形のスマホはなく、中身が古くなったら中身をいじったりして、ダメになったCPUやバッテリーなどを交換して何とか使っている。治人たちが居る田舎のショッピングモールにすら専門店があるのが動かぬ証拠だ。

「あれ?」

 俺はふと顔を上げると見慣れない端末を持っている女性がいたことに気づく。かけている人に気が付いた。AR機能を搭載した眼鏡型のデバイスでスマートグラスと呼ばれ、ウェアラブルデバイスの一種。考え自体は前数年前からあり商品化もされていたが、スマホの普及の波に呑まれ、眠れる獅子は眠ったまま開発は頓挫していた。しかし、最近になって新型が登場したとネットニュースで見たのは記憶に新しく、一目で女性のかけているものが新型だと、一目で看破していた。

 その新型をかけている女性はこっち見ている気がした。何かこちらの方向に気になるものがあるのかもしれないと思うことにした。

スマホのニュースに目を落として数秒後、ビビンバの呼び出しベルが鳴り響いた。

「お兄ちゃん!」

 純玲の素っ頓狂な声で我に返る。

「あ、ああ。取り行ってくる」

 その場を離れ、ビビンバを取りに向かった。行き返りの往復で女性が居た場所を見るも女性は消えていた。 上手く言語化できないものの、俺は違和感を持った。

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