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タムケノハル  作者: 雪水湧多
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天才のSOS

「は?なんだよ、誘拐事件はこの前解決したばかりだろう⁉」

『・・・・・ツー』

 質問には答えてくれず、切られてしまった。

 いきなりのことに気が動転し、つい声を荒げていたようで、こちらを見る二人の顔が変わっている

「どうした?誘拐事件がどうのって」

「玲奈さんが誘拐された。校門に来いって言われた」

「どうするの?」

「行くしかない」

判断材料が少なすぎる、今は誘拐された情報しかないでも、卓球はどうしよう。いや、そんなのどうでもいいだろ。行くことは確定だ、なら今大事なのはこの場をどうするかだ。

「あまり大事にはしたくない。最近の玲奈さんのこともあるし。冬彦はなるべく派手にカッコつけて人目を引いてくれ。琉亞は俺が棄権をすることを伝えてきてくれないか?」

「なんだ、いつものことじゃないか」

「わかった。何かあったら、直ぐ連絡してね」

「ごめん、あとは任せた」

 言い切る同時に駆けだしていた。普段は歩くべき廊下を百メートル走のように駆けていく。数人に振り替えられても、教師に怒られようとも知ったことではない。今はただ、走る。

 走っているのに鼓動がうるさい。普段なら走っても気にしない、そもそも鼓動が邪魔だと思うことはなかった。

 階段を落ちるように数段飛ばして降りる。さっきまで負担を掛けていた脚に更に負担を掛ける。痛いのは当然だが、うめき声がでても、足を止める気はなかった。

 思えばシグマに青春をやり直し“過去”を払拭するために、FDVRをやらされた。玲奈のことを調べるときに手を差し伸べたのはシグマ。神前武矢を捕まえる為にシグマは何かしていた、そうでなきゃ、わざわざ隣町の釣り堀に来るはずがない。つまり、何かが始まるとき必ずシグマが一枚噛んでいる。そのシグマが問題が起きたとSOSを出したのだ。あの天才が。

「クソがぁ!」

 とうに痛みなどない。感情で動くなんて自分らしくないと思いつつ、足を動かし校門までやってきた。

校門前でひっ迫した表情のシグマは止められた車の前に立って、こっちを見るなり大声を上げた。

「遅い、説明は中でする。今は乗ってくれ」

「悪いな!足が遅くて」

 一気に駆け寄り、言われたまま車に乗り込む。運転手はまさかの人だった。

「ゲンブさん?なんで?」

「色々ピンチだもんで、アタシが駆り出されたのさ。法定速度ぶっちぎって飛ばすよ、話すのは良いけど、舌噛まないように気を付けな!」

 一気にアクセルを踏んで四人乗りのスポーツカーは、玲奈が良くやっているレースゲームのような速度を出していながら、事故らないように気を遣って走っていく。

「い、いいかい?治人、よく聞け。犯人は我々のように校門前に呼び出し誘拐。首謀者は、神前裕也の妻、神前京子。行方はわからない」

「これからどこに?」

「とりあえず、携帯の電波が最後に拾えた場所に向かってる」

 とにかく今はやるせない気持ちで胸が痛い。何かしていないと気が狂いそうで、頭を抱える手に力が入る。それをシグマは申し訳なさそうに見ていた。

 シグマは昔のことを思い出していた。同じようにやるせない気持ちで、手に爪が食い込む。どこまで行っても詰めが甘い自分に腹が立つ。あの時も、もう少し早くできていればこんな気持ちにならずに済んだのだと。

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