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タムケノハル  作者: 雪水湧多
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生徒会長の意外な弱点

 真夜中の学校は薄暗く、非常灯が怪しく光るためか、ホラーゲームの舞台にされる理由が伝わってきていた。一応先生は二十一時まではいるため人がいないわけでない。それでも不気味なことには変わりなかった。

「結構雰囲気ありますね」

「そ、そうだな」

「先輩暗闇って苦手だったりしますか?」

「に、に、苦手ではないぞ。うん、そんなことはない。あるわけがない」

 思わず、変な顔になる。さっきまでの弱気な神前がマシに見えるほど、頼りない。足は暗がりでもわかるほど震え、声は上ずり、自分に言い聞かせるように同じ意味の事をリフレインしている。比較的暗闇が苦手な純玲でもこんな反応はしなかった。というか、この反応は少し異常なのでは?と冗談交じりに考えた。

 あまりの情けなさに、神前へのイメージに“現代”の要素はなくなっていた。

「あの、神前さん?怖いんですか?さっきから様子がおかしいですよ?」

「な、なにをい、い、言ってるんだ?私はいつも通りだ」

 強がって腰に手を当てた瞬間に遠くの方から走るような足音が聞こえ、「ひゃあ⁉」と情けない声を出してその場にしゃがみ込む神前。俺も足音は聞こえてもちろん驚いたが、目の前に自分よりも怖がっている人がいるせいで、落ち着いていた。

「た、多分、先生か誰かでしょう。はぁ、先輩。さっさと外に出ますよ」

「で、でも」

「ここで座っていても、帰れませんし、もしかしたらさっきの足音が近づいてくるかもしれませんし」

「そ、そうだが・・・頼む、肩をかしてくれないか」

 俺は「あー、はい」と察した顔になり、神前に肩を貸しながら下駄箱へ向かう。生徒会室は三階で、多少距離があるが仕方なかった。動けないよりはマシであった。それに一つ懸念点があった。妹の純玲の事だ。生徒会室を出る前に、メッセージを飛ばしたが、いつもなら直ぐに既読が付くのに、つかなかったからだ。

三階から二階へと降りる階段で、再度走るような足音が聞こえ、「うひゃ⁉」と叫ぶ神前を見た。顔は真っ青で、目は月明りでうるうると輝いており、生徒会室前よりも足が震えていた。

見かねては先輩を無理やり、持ち上げ俵運びで下駄箱まで一気に向かった。「いややああああああ‼おろしてえぇぇ‼」と、情けなく叫ぶ神前。むしろ神前の声の方が聞いたら怖いと思った。他の人が聞いたら誘拐されているように見えるのだろか。

下駄箱から外へ出るときなにか見えた気がして一旦止まったが、神前が“外”を連呼するせいで確かめることができなかった。

結局、神前を家の近くまで送り、家に帰ると純玲は見たこともない笑顔で背筋が凍った。でも、安心もしていた。これならマシだと。


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