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妙な仏間

「信じてもらえないかもしれないですけれど、この部屋にはね、座敷わらしが住んどるんですよ」

 俺の想像を裏付けるように、婆さんが優しくそういった。

「例えばね、そう、ほら。この部屋に入ったとたん腰の痛みがさっぱり消えるんですよ」

 そういって腰を叩く婆さんの後ろで、紅葉が婆さんの腰を必死に揉んでいる姿が目に入る。

 ――そっすね、確かにいますね。

「それにの、ここにいると肩がよう調子よくなるんよ」

 そういって爺さんが年のわりによく動く肩をぐるんぐるん回す傍ら、紅葉がその肩をとんとんと叩く。

 ――うん、やっぱりいますね。可愛いのが。

「ほかにも探し物が見つからないときこの部屋にくると落ちていたり」

「物忘れしたときにここにくるとよう思い出せるんじゃなぁ」

「宝くじを供えて置いたら三千円当たったこともあったわねぇ」

「息子の受験祈願もばっちりじゃったな」

 途中からは大分怪しかったが、まぁそれも恐らく紅葉がこの二人のためにと与え続けてきた座敷わらしとしての加護なんだろうか。

「じゃから昔婆さんと二人でそう決めたんじゃよ。きっとこの部屋には座敷わらしが宿っていて、わしらの事を守ってくれとるんじゃろうなぁと」

 そう何か懐かしむかのように遠い目をする爺さんは、とても優しい瞳をしていた。

「だからこの部屋だけでも守っていきたいんですよ。私たちのためじゃなく。ここにいる座敷わらしのためにもね」

 そういってほほ笑む婆さんの目もまたとても優しい瞳をしていて、否応なくわからされてしまう。


 紅葉が守りたいのはきっと。こんな二人の穏やかな日常なんだということが――

「――あんなこと言った手前なんですけど。座敷わらしは居ますよ、今もこの部屋に」

 そう俺が言うと、きょとんとした顔になる爺さん婆さん。まぁそりゃそうだろう、突然やってきた謎の客人がインチキ霊媒師みたいなこと言い始めたらそんな顔にもなる。


「まぁ、ちょっと素直じゃないのがいる気配がします、はい」

 少し恥ずかしくなったのでそう茶化す。すると紅葉が俺のことをじっ、と見つめているのがわかった。

「なんじゃあ、まるで見えてるみたいにいうのう、はっはっは」

「私も姿が見れたらいいんですけどねぇ」

 そういって優しく俺の言葉を受け止めてくれる。

 ほんと、いい人達だな……

 そうしてまたしばらく、俺たちは座敷わらしについての話や、家に纏わる思い出話に華を咲かせているのだった。

 爺さん婆さんに見送られて家からでると、玄関先から少し離れたところでぽつんと紅葉が立っていた。

「……もしかして、見送り、ですか?」

 意図がわからずおっかなびっくりしている俺に対し

「当たり前でしょ? 茂と節子のお客さんのお見送りをしないわけないじゃない」

 紅葉はそう、あっけらかんと答えた。

「てっきり。怒ってると思った」

「いや、怒ってるけど」

 あ、そこはやっぱそうなんすね、すいません。

「最近は樹と喧嘩してるのもあって元気なかったから……二人のあんな楽しそうな姿久しぶりにみれてよかった。その点は感謝してるわ。で! も! あの三バカ娘は許すつもりないからね! 次あいつら連れてきたら今度は叩き返すわよ!」

 そういってびしっと指を突き付けてくる紅葉。

 よかった、正直昨日ので調子崩してるんじゃないかと心配だったけど、大丈夫みたいだな……

 内心胸をなでおろし、安堵する。

「でもいい爺さんと婆さんだな、親切だし。仲良さそうだし。うちはもう爺ちゃんも婆ちゃんもいないから懐かしく感じたよ」

「当然でしょ! このあたしが守っている家族なんだからね!」

 そういうとまるで自分が褒められたかのように嬉しそうに顔を綻ばせる紅葉。

 紅葉のこんな笑顔は見るのが初めてで、余計な事情さえなければ本来は素直ないい子なんだろうな。

「なぁ、やっぱり――」

「それ以上は言わないほうがいいわよ、あたしに吹き飛ばされたくなかったらね」

 そういってぴしゃりとこちらの言葉を遮ると

「う……すまん」

「はぁ……変な奴ね。あんた、さてはお人よしでしょ、馬鹿がつくぐらい」

 そういって飛び上がると頭をかるく、撫でるようにぽんと叩く紅葉。

「一応うちのお客だからね、ちょっとした厄払いのおまじないかけてあげたわよ。これで少しはあの三人から離れられるんじゃない?」

 そういうと、べーっと舌を出してそそくさと家に戻っていく紅葉。

 助けたいと思ってる相手に気を使われて、どうすんだよ。情けねぇ――

 俺の内心のつぶやきは、冬の寒空へと消えていった。


もう少しで日付またぐギリギリですが、第17話のお届けです。

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