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62 勝利の報酬


 多少のダメージは食らったものの、ルチアたちダンジョン調査パーティはボスに勝利した。全員の無事を喜びながら集合する。


「どうでした? 範囲攻撃でしたか?」


「結論から言うとそうだ。

 実は全体攻撃の予備動作…あの、頭をかきむしるような動作をしただろう?

 あれが見えた瞬間に部屋の端まで一度移動したんだ。そこでは全くダメージを食らわなかった」


「おお、大発見じゃないですか!」


「そうなんですよ!

 このダンジョンはどちらかと言うとガンナー向きみたいですね」


 ボスの倒し方や特性などをワイワイ話しながら、それぞれのポーチに飛び込んできたドロップアイテムを見せあう。

 ここからはリリィの独壇場だ。

 リリィは目を輝かせながら、手に入れたボスドロップアイテムをどんどん分類していく。ほとんどのアイテムが既知のアイテムだったようだが、一つだけわからないものがあったようだ。


「あっ、見慣れないアイテムが…! これは…?」


「ちょっと見せてもらってもいい?」


 まだ二人にも言っていないが、ルチアは鑑定のようなスキルを持っている。というより、ゲームではカーソルを合わせればアイテムの説明が出てきたので、その感覚でアイテムを見ているだけなのだが、これがなんとも説明しづらい。今のところは、前線に行く前に見たことがある、という説明をしているがいつかボロが出る気がする。

 とはいえ、この二人であれば多少言動があやふやでもスルーしてくれるだろうという安心感があるのであまり気にしてはいないのだが。


「んーと、なんだろう?」


 そう言いながら未知のアイテムを手に取る。見た感じは歯車に見えるのだが…。



・銃剣の歯車


銃剣用の歯車(合成用)

完成した銃剣はナイトもしくはガンナーが装備できる。



「あー…合成アイテムですね。

 パーツがいくつあるかはわかんないんですけど、全部集めて完成させたら銃剣ができます」


「銃剣?」


 確かに聞きなれないアイテムだろう。

 ルチアとしても、このアイテムを使いこなしているのを見たことはあまりない。


「えーと、剣と銃が合体したような武器です。遠距離時には銃として、近距離では剣として使える武器です。だけど、スキルの扱いが少し難しいらしいですね。ガンナーも剣士もこのアイテムを装備している間はレベルに見あったスキルが使えるらしい…んですけど。

 使いこなせれば強いのかもしれませんが…その辺りは専門外なのでわからないです」


「ほうほう…私もそのような武器は初めて聞きましたね。使いこなせたらちょっとかっこいいかも…?」


 感心したように歯車を見ていたリリィがちらりとアルナスルに目線をやる。


「期待した目でこっちを見るな。

 そもそも武器として完成していなければ使うこともできん」


 そうは言うものの、アルナスルもかなり興味ありそうだ。


「記憶通りなら、これはどんどんパーツを集めてレベルに応じて強化していくタイプの武器なんですよね。

 だから、パーツがなければ自分の腕より劣る武器になっちゃうし、自分のレベルより高いパーツを間違って付けたら扱うことも出来なくなるし…めちゃくちゃクセは強いですね」


「買い換えがいらないのは楽だが、確かにクセは強そうだな」


「でも、面白そうですし持っておいたらどうですか?」


「あー、まぁそうだな。倉庫にでも置いておく」


 なんだかんだ言いつつも興味はあるようなので、このアイテムはアルナスルの手に渡ることとなった。

 なんだかんだ言いつつ一回目で未知のレアアイテムにあたったことで、リリィの機嫌が急上昇しているのがわかる。


「パーツ全部集まるといいですねぇ」


「正直、これが今まで出ていなかった最後のレアドロップだと思いますので、威力もちょっと期待しちゃいます。

 だって、完成品じゃないのにレアドロップって…」


「確かに。正直これが何かわからなければただのドロップ率の低いゴミだからな」


「あはは、そうですねぇ」


 実際ゲームでは大ハズレもいいところのレアドロップだ。NPC売りでも二束三文のためどうしようもない。泣く泣く安価な値段で露店に出すもずっと売り残るような品だったはず。

 しかしモノの価値というのは市場が決めるものだ。

 この世界で今のところ唯一の品、となれば希少性から値段がつり上がることも考えられる。

 リリィの話ではこの世界にもコレクターという人種はいることがうかがえたので、なおさらだ。


「他のドロップ品の分配ですが、まずはそれぞれのメイン生産素材を渡す、でいいですよね?」


「異論なし。というか、いまから急ピッチで報酬用の防毒アクセサリー作らなきゃだからほんともう全部ください」


「そこは異論なし。図もそれぞれメインのものをもらえばいいだろう」


「ダブっているやつがあればギルドで買い取りしますー。今、工房の職人さんたちも図が量産されるの首を長くして待っていますから」


「今回図もそこそこ出ましたもんねぇ。

 あ、そうだ。ボスの宝箱もあけていいです?」


 二人から了承を得てボスが守っていた宝箱も開けてみる。

 それなりの図やレアアイテムが出た。


「うーん、やっぱりこのダンジョンの目玉は先程の合成アイテムの歯車なんですかね」


「たぶんそうなんだろうな」


「うーん、アレ癖が強いからなぁ。希少性という意味ではレアなことは間違いないんでしょうけど」


 まず間違いなく、このダンジョンに潜らなければ出回らないものだ。

 しかし、このめんどくさい仕様のダンジョンを何度も周回してまで欲しいものか、と言われるとルチアとしては首をかしげる。

 が、そうは思わない人もいるようだ。

 言わずと知れたリリィである。


「何言ってるんですか、ルチアさん。

 このままいけば、アルナスルさんが世界でもしかしたら初めて? そうでなくてもかなり希少な銃剣使いになるんですよ!?

 男の子の憧れの的じゃないですか」


 銃剣の価値を力説するリリィ。


「…素材が集まればの話ではあるが、未知の武器というのは俺も興味あるからな。是非とも完成させてみたいものだ。

 リリィ、もし用途不明のダンジョン産アイテムが持ち込まれたらとっておいてもらえるか?」


「もちろんですよ! 私の権限をフル活用です」


「…職権濫用では?」


「ギリギリセウトなので問題ありません」


「ホントに!?」


「そういうアイテムが見つかったら、すまんがルチアも協力してくれ。

 実際にそのアイテムを見てわかるのは今のところお前しかいなさそうだ」


「あ、はい。まぁ見るだけなら全然構わないんですけど…」


(ゲームの時は手間のわりに面倒って切り捨てられていた装備が「かっこいいから」って実用化されるのかぁ…。

 うん、なかなか面白いかもね)


 その後、異常な周回力を誇るダンジョン調査パーティ一行は執念で全てのパーツを集め、希少な銃剣使いの誕生を祝うことになる。

 

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