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37 ダンジョン担当


「そんなわけで、お二人ともよろしくお願いします」


 リリィがペコリと頭を下げる。


「いやぁ…私たちはいいんだけど…いいの?」


 対するルチアとアルナスルは少々困惑気味である。

 リリィ本人はといえば、ワクワクを抑えきれなさそうな、それでいてちょっと不安もあるような複雑な表情をしている。


「いい悪いでなく、もう辞令が出てしまっていますので…。

 本日よりギルドのダンジョン調査担当として精いっぱい努めますのでよろしくお願いします。

 あ、一応人員が増えたのでギルドの通常業務は滞りなく行えてると思いますよ!

 その引継ぎのために私、久々に徹夜しましたから!」


 ぐっと親指を立てて見せるリリィの前でため息を吐くことは憚られた。


 ことの発端は、提出した報告書から。

 詳細なダンジョンの調査をするのであれば、記録係をパーティに入れたほうが円滑に進むこと。また、一回のダンジョン探索ではわかることは少ないこと。そんなことを盛り込んで市長に提出したところ、ギルドへ要請が入ったらしい。

 以前から再三「中央都市のギルド職員を増やせ」とせっついていたらしい。腰の重いギルドも事情を聞いてやっと動いたようだ。

 もともと中央都市周辺はモンスターも弱く、ギルドとしては人員を割きたくないというのが本音だったようだ。

 しかし、ダンジョンという未知の存在が出てきたことによって、中央都市への協力にうまみがあると思ったらしい。そこで、リリィに白羽の矢が立ったのだとか。


「そんなわけでバリバリ頑張りたいと思いますのでよろしくおねがいします」


 リリィはレアドロップ品を見るのが好きらしい。なのでこの配置自体には文句はないのだろう。ただ、今までよりもグンと危険が上がっただけで。

 ただ、そういった人間をパーティメンバーにするとなると少々困ったことになる。


「……徹夜明けなのね?」


「はい! ですが、これくらいは慣れっこですのですぐダンジョンに…」


「だめだ」

「ダメ」


 早速ダンジョンへ向かおうと意気込むリリィを押しとどめる。


「まずはパーティメンバーの現状を把握しないとだめです。リリィさんの戦闘における職業は?」


「…ノービスです」


 予想はしていたが案の定というところだ。

 都市から出る予定のない人はノービスで十分だ。ノービスの子供であっても、パーティを組めばそのあたりのモンスターを倒せることはルチアが実証済みである。故に街から出る予定がないのであれば、そもそも転職をする必要がなくなるのだ。


「パーティを組むとなると、あなたにも経験値がいくと思うからノービスのままっていうのは損よね」


「そもそも基礎体力が異なる。万が一のことを考えれば二次まで転職しておくべきだ」


「えええ」


「あのね?

 ダンジョンの中に入ったら、私たちも自分のことで手一杯なの。不意打ちがないように十分注意はするけれど、何かあったら自分の身は自分で守ってもらわなきゃ」


「そもそも寝不足の人間に判断ミスされたらかなわん。

 今日は比較的安全な都市周辺で転職まで終わらせるぞ」


「本格的なダンジョンの周回は明日からですね。

 ということでリリィさん早速神殿にいきましょう。職は決めましたか?」


「今さっきで決まると思います!?」


「基本的に後衛職のほうがいいだろうな。

 …いや、基礎体力を上げるという点で前衛でもいいのか?」


「そうですね。盾持っててもらえばちょっとやそっとの攻撃じゃ死なないでしょうし」


「待ってください。盾持ってたらマッピングその他できなくないです!?」


「それもそうか。ではやはり保険として回復できるようにしてもらうか?」


「なんならバリア覚えるまでレベリングしちゃいましょうか。

 で、今日は明日に向けて早めに解散して休んでもらうって感じで」


「えっえっ…」


「…その、なんだ…がんばれ」


 アルナスルがリリィに向けて気の毒そうな目線を向ける。


 レベル1の人間が二次職にまで転職し、バリアを覚えるレベルまで一日で上げる。ゲームでいうところのパワーレベリングという手法だ。


「頑張るのはアルナスルさんもですよ?」


「は!? なんでだ!?」


「なんでって…パワーレベリング…あ、そういう単語ないのか。

 えーと一日でリリィさんのレベルをバリアが使える程度まであげるのだとしたら、とどめをリリィさんがさすのが一番手っ取り早いですよね」


「そうだな」


 レベルアップに必要な経験値は、パーティへの貢献度に比例する。

 どのくらい攻撃を受け止めたか、回復を行ったか、攻撃を行ったか、などだ。もちろん、パーティの一員であるというだけで基礎経験値はもらえる。しかし、この三人のパーティの場合はレベル差がありすぎるため、リリィにあまり経験値が入らないのだ。


「であれば、アルナスルさんが敵を殺さない程度に痛めつけて、リリィさんがとどめをさすのが一番です。もちろんそういうのが必要になってくるのはレベル10近くになってからでしょうけど。

 私は万が一がないようにバリアと回復をしますので」


 ルチアのように狙ってカウンタークリティカルが出せるのであれば別だが、リリィにそこまでを求めるのは酷というものだ。というわけで、これが一番合理的なのだが。


「瀕死でとどめるよう手加減をしろ、と?」


「難しいですかね?」


 近接武器と違って銃は加減が難しいかもしれない。

 特に、クリティカルを出すために急所を狙うように特訓してきているアルナスルのようなタイプには、手加減という概念があまりなさそうだ。

 ルチアが弱めの魔法をかけてもいいのだが、それだとリリィに万が一のことがあった場合のリカバリが遅れてしまう。

 それと、パーティを組むのであれば最初から協力していたほうがチームワークにもいいと思ったのだが。

 無理であれば仕方ないか、と思い直したところでアルナスルがため息を吐いた。


「…善処しよう。銃を使わずとも瀕死にしてからとどめをささせればいいのだろう?」


「あのー…私の意思はー…」


「あ、ごめんなさい。もしかしてリリィさんやりたい職業ありました?

 それならそっちに合わせて調整しますよ」


 職業はあとから変えられないのだから、本人の意思が最優先だ。

 しかし、リリィはもうヤケクソ、といった感じで頷いた。


「もーそれでいいですよ。回復職であれば、怪我を負った人助けられるかもしれませんし!」


「いいんですか? じゃあ最短ルートで頑張りましょう~!」


 何千何万とやってきた育成ルートである。

 パワーレベリングの場合もそのルートはきちんと覚えている。今日の夕方にはリリィも一番レベルの低いバリアなら扱えるようになっているだろう。

 リリィの乾いた笑いと、アルナスルの呆れの混じった表情に気づきもせず、ルチアは「まずは一次転職ですね!」と神殿までの道を歩き出した。

 

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