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4人と一緒に仕事

 翌日樹が目を覚ますと、下着姿のアイラとエイダの肩を抱いていた。

 呑みながら寝てしまったのだ。2人は酌をしていたので、ちょっと夜のお店みたいな状態だった。


「二日酔いは治らないんだな」


『治るのは怪我だけです。死ぬような病気にはなりませんから、寿命以外で死なないでしょう。病気も他人より治りが早いですが。寝れば治りますからね』


「便利だな。ギャグキャラって」


 樹は痛む頭を押さえながら、2人をベッドに運んだ。

 樹は部屋に戻る前に、自分とティナたちの宿泊費を払って延長した。

 恐らく仕事にはならないので、宿泊費がつらいだろうと配慮したのだ。女性のことになると気の利く男である。


 樹も部屋に戻り、頭痛が収まるまで寝直す。回復が早いので、起きた時には何ともない。

 ベッドしかない部屋ではすることもなく、退屈を持て余した樹は、ティナたちの部屋に行く。


「あ、イツキさん」


 ノックをすると、エイダが出迎える。

 その頭を撫でてから、部屋に入っていいかを確認した樹は、4人に歓迎された。


「二日酔いはどうだ?」


「まだ少し頭が……すみません」


 具合を確認すると、姿勢を正してティナが答えた。


「さっきまでティナさん、ぐで~ってなってたんだよ?」


「エイダ! あいたた……」


 頭を押さえて苦しむ。

 アビーもティナの怒鳴り声に、顔をしかめた。


「とりあえず今日は休むといい。宿代は払っておいたから」


「またご恩が増えて……」


 ショックを受けるティナに、樹は気にするなと答えた。


「それに、昨夜はいいものを見せて貰ったからな。安いもんだ」


 不思議そうにする2人と、照れる2人に別れているが、頭が痛いのか追及ははしなかった。


「私とエイダは臨時雇いの仕事をしてくる」


「ウェイトレスの仕事があればいいな。チップが貰えるかもしれないし」


 アイラとエイダは商業ギルドに向かう。商業ギルドで日雇いの仕事を斡旋しているのだ。

 冒険者がするような仕事でない場合は、こちらのほうが仕事が多い。

 冒険者ギルドでも安全な仕事はあるが、それほど多いわけではない。


「あたいも荷運びの仕事を探すよ。年下だけに働かせるのは情けない」


 小さなベッドから体を起こし、つらそうに支度を始める。下着姿なので樹はガン見している。


「アビーは寝てる」


「そうですよ。私たちはパーティーなんだから助け合いです」


 ティナたちパーティーは、個人資産という物がない。

 基本的に全員で仕事し、個別の仕事の時もパーティー予算になるのだ。

 今までも、ティナやアビーが力仕事をしたりして稼いでいるので、年少組もそう考えている。


「わ、悪いね。夕方までには回復するから」


「気をつけて行ってね。明日は薬草採取でもしましょう」


 やはり二日酔いがつらく、おとなしくしていることにした。

 そんな2人に水差しを用意してから、樹も修行に向かった。


 樹は暇があると、修行する癖がついていた。やはり痛い思いはしたくないのだ。

 それでも戦いでは怯むことなく、怪我を怖れないので、かなり勇敢と言えるだろう。

 怪我がすぐに治らないなら、さすがに怪我をしないように慎重に戦っていたのだが、すぐに治るので大胆な戦い方をしている。

 どうせ痛い思いをするのなら、その時間が短いほうがいいと考えてだ。


「弾切れがないのは最高だな。体力もあって1日中でも撃っていられる」


『樹はサイレンサーを付けることを覚えた』


「うるさいぞ。音で冒険者が寄ってくるから、仕方ないだろ」


 樹は修行の邪魔をされるのを嫌って、サイレンサーのことを思い出したのだ。

 それというのも、見知らぬ冒険者にあれこれ聞かれて、鬱陶しかったからだ。


『確かに邪魔でしたね。勧誘とか』


「まったくだ。オレは自由に動けなくなるのは困るぞ」


 樹はいつでも逃げられるように、毎日商人などに話を聞いていた。

 王都方面から来た商人に、兵士の動きなどを聞いたところによると、他国を警戒しているため、兵士は動いてないと知った。

 それでも、怪我した兵士が治れば、いずれ派遣されてくる可能性がある。

 樹は大胆な戦い方をするが、それなりに慎重派だった。


「とにかく、いつ逃げることになってもいいように修行だ」


 夜まで落とした木の葉を撃ち続け、10発中6発は当たるようになっていた。

 休みもなく10時間近く撃ち続ければ、レベルの恩恵もあり、これくらいはできるようになるだろう。


「もっとレベルが上がれば、器用さも上がって百発百中になるだろうに」


『弱い魔物を倒しても、レベルは上がりにくいようですからね。ゴブリンは経験値2とかじゃないですか?』


「かもしれんな。必要経験値がどれくらいか知らないが、レベルが上がれば必要経験値も多くなるだろうし」


 それでも数を倒しているので、樹のレベルは14まで上がっていた。

 樹は確認を忘れていたので、宿に帰るまで気付かないだろうが。




「イツキさん、お帰りなさい。二日酔いでご迷惑をお掛けしました」


 帰るなりティナが謝る。


「気にするなって。オレにとって美人は宝だ。大事にするのは当然だろ?」


 美人が好きな男は多いと思うが、樹ほどではないだろう。あまり当然ではない。

 男がみんな、少しすれ違っただけの女性に、金と時間を掛けるなら、女性はもっと生きやすい世の中になっている。


「そういうわけで、明日の薬草採取はオレも同行するから、安心して採取してくれ。オレの修行にもなるし」


「いいんですか?! それなら森の奥まで行けるようになります。稼ぎが違うので助かります」


 普通なら遠慮していたが、樹がオークの巣を潰した日から、数日間稼ぎがなかったので、背に腹は代えられなかった。


「どうしようかと思ってたんです! イツキさんに図々しいことは言えないですし、本当にありがとうございます!」


「そうかそうか。美人の助けになるならオレとしても本望だ」


 必死な様子に少し驚いた顔を見せたが、樹はすぐに笑顔になり、提案してよかったと喜んだ。


 ぐっすりと寝た樹たちは、森に来ていた。


「いつもはこの辺りで薬草採取をしてます」


 森の浅い部分なためか新人冒険者が多く、あまり薬草がない。

 マナーとしては、すべて採り尽くしてはいけないので、少しある薬草は誰も採取していない。

 薬草がなくなれば、けっきょくは自分たち貧乏暮らしをしている冒険者が困るのだから、そのマナーは守る。


「やっぱりない」


 斥候のアイラが悲しそうに呟く。


「今日はイツキさんがいるから、奥まで行けるよ。アイラ、元気出して」


「そうよ。イツキさんがいるうちに、魔物との戦いにも慣れましょう」


 樹はしばらく付き合うことを決めていた。せっかく知り合った4人が、生計を立てられないのは心配だからだ。


 森の奥に進んでいくと、魔物の出現頻度が上がっていった。

 特にコボルトやオークなど、鼻が利く魔物が寄ってくる。

 樹は適正な数まで減らすと、ティナたちに訓練させていた。


「4対2なら負けないわよ!」


「あたいが防ぐから、攻撃は頼んだ!」


 大きな盾を構えて、体ごとぶつかっていくように攻撃を防いだ。

 そこへリーダーのティナがコボルトの足を斬り付け、エイダの魔法の時間を稼ぐ。

 アイラはもう1匹のコボルトを引き付け、3人が倒すまでの時間稼ぎだ。


「ファイアアロー!」


 1本の炎の矢が、コボルトの頭に刺さる。


「やった~!」


「エイダ、喜んでないで次の1匹を」


 アビーが盾を構えて、もう1匹のコボルトに突進する。

 コボルトを引き付け、攻撃を回避していたアイラは、ホッとしたように下がった。

 エイダの魔法が決まり、2匹目のコボルトを倒したティナたちは、荒くなった息を整えることで手一杯だった。

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