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プロローグ(ブーン系)

桜が咲いた


 無骨な幹から、儚げに咲いている


 宙に舞う花びらが、おれの頬を優しく撫でる


 空を見上げると晴天が広がっている


 周りを見渡すと知らない顔ばかり


 ぎゅっと胸が締め付けられる


 これは先行きの見えない不安


 それよりも期待?


 拳を無意識に固く握り締めながら

 学校の掲示板で確認した自分の教室を探す


 席を確認し、ゆっくりと腰をかけ

 慣れないイスに何度も、座り心地を確かめるように座り直す


 周りの顔は明るい


 隣のやつにに声をかけ、ぎこちなく笑う

 お互い不快に思わせないように

 手が汗ばみながらも


 隣のやつもぎこちなく、引きつった笑いを作って返してくれる


 何かそれがおかしくて


「ふっ、変な笑い方だな」


「あはは、いつも通りなんだけどな」


 こうしてお互いに親交を深めていき


 それを桜は温かく見つめる



 いつしか桜は散って


 曇りの日が多くなり


 雨が降りだす


 晴れない顔をしてるのが見られたくなくて


 なんて自分に嘘をついて


「友達って、学校って、なかなか難しいものだな」

「おまえも大変だったよな」


 そう呟いて休み時間に寝たふりをする


 聞かせるためとしか思えない陰口や

 クスクスという嘲笑を耳が拾ってきて

 同時に目が湿り気を帯びる


 雨、早く止んでくれないかな


 放課後暗くなりかけの道を、開かない傘を片手に


 腫れた頬と体のあざを冷やすために

 雨に打たれながら


 バックの中の、裂けて、乾いた泥がついた教科書を守るため

 覆い被さり、走って帰る


 なんて言い訳しようかな

 転んだって言った方が自然か



 晴れない日が続く


 ここ連日の暑さの中、1人だけ水をかぶって

 授業を受ける


 ノートと教科書と筆記用具はいくら買っても足りない

 制服はボロボロで汚れているし

 足が床について、肌寒く感じる


 おれがこんなにびしょ濡れなのに

 先生は気づかない


 先生と目が少しあったが、寝ている生徒を怒りに行く

 生徒が軽口を叩き

 先生がどこか冷ややかな顔をして笑う


 その一連の流れで

 教室は晴れやかな空気になる


 学校の帰り、地面を見るとミミズが干からびていた


 虚ろな顔をして空を眺めると


 地平線のあたりで

 月が太陽に飲み込まれそうになって

 三日月よりも細いのに、必死に飲み込まれまいと光っていた




 雨はやまない


 土砂降りの中

 気付いたらあの桜の木の前にいた


 とっくに花は散り、葉はあるのに

 枯れかけているようにみえた


 重さに耐えきれるかな

 そう思いながらロープをくくりつけていると

 大きい枝から伸びる小さい枝が

 ポキッと音を立てて折れた




 ……ダメだった

 どうしても一歩が踏み出せなかった


 心臓が生を主張し

 震える足で帰路につく

 こんなに蒸し暑い日なのに

 雨で冷えたせいだけではなく、歯はガチガチと音を立てている

 狭い道路の上では溢れた雨がゴボゴボと下水に飲み込まれていく


「ねぇ」


 不意に後ろから話しかけられた


 振り向くと見かけない女性がおれと同じく傘をささずに立っていた


 黒髪が綺麗な人だった


川 ゜ ―゜)「君の事が好きなんだ」


 唐突にもそういって彼女は顔をはにかませた


 何かを思い出しかけて

 その事とは別に、彼女が学校の先輩だった事を思い出す


 確か、学校のマドンナとまではいかないが

 学年の違う俺たちでも知ってるくらいで、その見た目はもちろん

 クールな性格と、自分の呼び方が変な事で有名だった


川 ゜ ―゜)「返事をしてくれると嬉しいんだけどな?」


「先輩、なにかの罰ゲームなんですか?」

「先輩みたいな人がするとは思っていませんでした」


 この手の嫌がらせはたくさん受けてきた


川 ゜ -゜)「ぼくは本気だよ」


 先輩の目は今までのどれよりも真剣なのに


 どうしても受け入れられなかった


「そんな気持ちになれないので、すみません」


 おれが言葉を言い終わる前に慌てて


川;゜ -゜)「待ってくれよ、罰ゲームなんかじゃないんだ!」


 そして、絞り出すように


川  -)「君が今までどうしてたか、全部知ってる」

「何を……されたのかも」

「さっき、なにをしようとしてたのかも」


「……悪趣味ですね、人が痛めつけられているのがそんなに見たいんですか?」

「それとも同情ですか?おれはそういうのいらないので、これで」



 踵きびすを返し、帰りを急ごうとする

 おれは、なぜか、なぜか今までのどの嫌がらせより頭にきていた


Σ川;゜ -゜)「あ、ちょっと待ってくれ!」


 先輩が追いかけてきておれの腕を掴む

 何かにすがるように弱々しく俯うつむいて

 だけど、おれの服をシワが残るほど強く握りしめて


川 ゜ ⊟゜)「ぼくが同情で言うわけがないだろ!」


 その言葉に

 おれは……何を感じたのだろうか?


「 やめろ!!」ブンッ


 大きく腕を動かし先輩の手を無理に振り払おうとし


「あっ」


 振り解けた成功

 そのための犠牲である失敗に気づいた時には

 先輩の小さな体はよろけて、派手に転んでしまっていた


 一拍、雨音のみが地面を弾くように鳴り


川  -)「……うっ」


「あ、あの……」


川  ー)「……ううう」


「え、えと……」


・゜・川つД`)・゜・「……うわぁーーん」ヒグッ、グスッグス


 その音をかき消すほどの、泣きじゃくる声が路地に響く


 してしまったことの重大さと、先輩の足に滲にじむ血に気がついて

 今までの先輩に対するよくわからないモヤと怒りは

 一瞬にして吹き飛んで、狼狽うろたえる


「だ、大丈夫ですか、先輩!」


川ΩДΩ)「うっうっうっ……大丈夫なわけないだろ……どうにかしてくれ」


「と、とりあえず風邪ひくとまずいですし、手当もしないといけないし、おれの家近いので!!」


川 TДT)「うん、連れてって」グスッグス……


 泣きじゃくる先輩から差し出された腕の手首を掴み



 2人はゆっくりと歩き始めた



 雨は振り続けていたが、小雨になっていく

表情あるのがブーン系の強み…

だと思う

もっと表情出したいな~



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